結び布2018/05/14


結び布

「結び布(きれ)着物始末暦 10」 中島 要・著 ハルキ文庫
呉服太物問屋の若旦那・綾太郎は悩んでいた。商売敵とはいえ、三百年続いた京の呉服問屋・井筒屋の暖簾をこのまま消してよいものかと。悩んだ末に相談に行った本両替商・後藤屋の大旦那からまさかの条件を突き付けられた綾太郎は、決着をつけるため、着物始末屋の余一とともに井筒屋へと向かった。一方、晴れて余市と一緒になったお糸は、これから生まれてくる我が子の幸せを願い、ひと針ひと針、愛情を込めておしめを縫っていた……。
シリーズ第10弾で完結編。中心人物は着物の始末を通して皆の問題を解決してきた余一ですが、余一以外の人が常に語り手になっていて、余一の本当の気持ちというのがわかりにくいのです。でも、読み進むにしたがって、いつもむっつりしている男なのに、特に女性や子どもが困っているのを見過ごせなくて、忙しいのについ手を貸してしまう優しい人なのだということがわかります。自分が結婚して子どもを持つこと、人並みの幸せを得られるなんて思っていなかったので、幸福を感じているのも伝わってきました。良かったなと思いました。10冊読んできてのラストは思ったよりもあっさりしていると思いました。何かと迷惑をかけられた井筒屋の愁介も、改心してくれたようにも思えず、その後はどうなったのかと気になるところもありました。