モリのいる場所2018/05/23


モリのいる場所

「モリのいる場所」 シネスイッチ銀座
昭和49年頃、東京。すでに有名な画家である熊谷守一(山崎努)は妻・秀子(樹木希林)と暮す家で、ほとんど外へ出ることなく庭の草木や昆虫、猫などを題材に絵を描き続けた。その家には毎日のように人が訪れる。守一を撮影することに情熱を傾ける写真家、守一に看板を描いてもらいたい温泉旅館の主人、近所のご夫婦や画商など。
30年以上も家から出ていないというから驚きます。タイトルの通りモリのいる場所を丹念に映し出しています。昆虫やトカゲや、魚、家で飼っている鳥など、よく絵の題材にもなっている猫も。でも、絵を描いているシーンはなかったです。書を描いてはいました。作品も少しだけ出てきた程度です。それでもどんな人物だったかが伝わってきますし、奥さんとや他の人との掛け合いがユーモラスで楽しい映画でした。昭和っぽい暮らしぶりが良いです。黒電話や昔のテレビなど、生活感がにじみ出ています。熊谷守一の人生がもっと語られるのかと思っていたのですが、詳しいことはなかったです。晩年の生活を切り取って見せてくれたような映画でした。時々、不思議な現象や笑いが入っています。
実際の熊谷守一の人生は波乱に満ちていると思います。映画になりそうなことがいろいろありそうだけど、そういうことは一切語らず、子どもが亡くなっていることが、セリフの中にでてきます。5人の子どものうち若くして3人を亡くしています。その前に、奥さんと知り合った経過など、ちょっと知りたかったです。奥さんはずっと年下で、もとは人妻、不倫の末の結婚なんだと思います。そして、シンプルで単純化された線で描かれる画風がどのように作られたのか。興味がありましたけど、なかったです。文化勲章を辞退したり、富や名誉などに興味を持たず、仙人のような人でした。変わった人なのに、熊谷のもとには人が集まってくるようです。独特の魅力が人を惹きつけつのかもしれません。

★★★★☆ 4