弔い花 長い腕 III2017/09/22

弔い花
「弔い花 長い腕Ⅲ」 川崎 草志・著 角川文庫
早瀬の旧家、東屋敷の一人娘が殺害された。この地で起こった過去の呪いと関係があるのか。調査を開始する主人公・汐路。そんな中、町の歴史の暗部と呪いの因果を暴露した本が出版され、ネットを中心に早瀬バッシングが起こる…。
シリーズ3冊目なので、これだけ読むとわかりにくいですが、過去のいきさつが絡まって、完結する内容でした。あまり喜びはなかったけど、最後がわかって落ち着きました。現在と過去の話が順番に語られて、謎だった部分がわかりました。

ペテロの葬列2017/09/15

ペテロの葬列
「ペテロの葬列」 宮部 みゆき・著 集英社
杉村三郎シリーズ、第3弾。
今多コンツェルンのグループ広報室に勤める主人公・杉村三郎がバスジャックに遭遇。犯人は死亡し、人質は全員無事に救出された。その後、亡くなった犯人から慰謝料が届く。それは、人質になった時に犯人が約束していたものだった。犯人は天涯孤独の貧しい老人だったとされたが、元人質たちは、お金を受け取って良いものか、警察に届けるべきかと揺れ動く…。
バスジャック事件から、先がどうなるのか、ハラハラする展開でした。複雑に絡み合っていたし、職場の人間模様や、編集長の過去、主人公の家族の問題など、どんどん話が広がっていきました。長い話だけど、想像を超える内容で、面白かったです。笑えないですけどね。主人公の職場のビルに入っている喫茶店のマスターがいつも良い感じです。

真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者2017/09/06

「真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者」 大沼 紀子・著 ポプラ文庫
シリーズ第5弾。真夜中に開店する不思議なパン屋「ブランジェリークレバヤシ」。そのパン屋の居候・希実の前に、手から白いハトを出す怪しげな中年男が現れる。それが店を揺るがす大騒動の幕開けとなる。一方、小さい頃から置き去りにされてばかりで、疎遠だった母親と久しぶりに再会した希実だったが、意外な人物が入院中の母を世話してくれることに…。
これまでのお馴染みのメンバーの登場は少なく、謎だった部分が明らかになりつつありました。4巻を読んでから間があいてしまったので、ちょっと初めはとっつきにくかったけど、最後まで読んだら良かったです。6巻目が最終巻らしいので、そちらも読みたいと思います。いつも通り、パンがおいしそうでした。

しゃべれどもしゃべれども2017/08/23

しゃべれどもしゃべれども
「しゃべれどもしゃべれども」 佐藤 多佳子・著 新潮文庫
今昔亭三つ葉36歳、二つ目になったかけだしの落語家。そんな三つ葉のもとに、問題を抱えた者たちが、落語を習いたいと言ってきた。吃音に悩むテニスコーチ、クラスになじめない関西弁の小学生、解説ヘタな元野球選手、無愛想な美女。年齢はバラバラだが、みんなコミュニケーションに問題があり、落語をきっかけに自分の問題と向きあおうとしている。三つ葉自身も、落語家としての迷いもある。落語を覚えたところで、何の解決にもならないかもしれないが、続けていくうちに、連帯感が…。
周囲とうまくなじめない人達なので、一緒に落語を習っても、なかなか打ち解けないのだけど、次第に距離が近づいていくのが面白かったです。続きが気になってどんどん読めてしまいました。みんながサッパリと良い結果を出せるわけじゃないけど、落語教室によって、成長していることを感じさせてくれました。

御用絵師一丸2017/08/21

「御用絵師一丸」 あかほり 悟・著 招き猫文庫
世は老中・水野忠邦の天保の改革の真っ最中。大奥を取り仕切る広大院に仕える、御用絵師の一丸には絵師として生きる顔の他に、命令を受け、裁けぬ悪を討つ、殺し屋としての顔があった。
読みやすくて、読んでいるとマンガのようなイラストが思い浮かぶような本でした。でも宿命とか、武士としての厳しい生き方など、この時代の思い通りにならない人々の話が多かったです。

海賊とよばれた男 上・下2017/08/16



「海賊とよばれた男 上」 百田 尚樹・著 講談社文庫


「海賊とよばれた男 上」 百田 尚樹・著 講談社文庫

主要燃料が石炭だった時代から、石油の将来性を見抜いていた国岡鐡造は、北九州の門司で石油業に乗り出すが、国内の販売業者や欧米の石油メジャーなど、様々な壁が立ちふさがる。それでもあきらめない鐡造は、型破りな発想と行動で自らの進む道を切り開いていく。やがて石油メジャーに敵視された鐡造は、石油輸入ルートを封じられてしまうが、唯一保有する巨大タンカー「日承丸」を秘密裏にイランに派遣するという大胆な行動に出る。それは当時のイランを牛耳るイギリスを敵に回す行為だったが…。
敗戦で、海外資産を失い、石油も手に入らない状況で、社員をクビにせずに、再起を図る。出光興産創業者の出光佐三氏をモデルにしている。
会社の利益のためではなく、将来の日本のためにと考えて、困難に立ち向かっている気骨ある人物です。先見の明があると感じました。石油が将来重要な物なるとか、石油メジャーに蹂躙された日本が、どうなるか、正しいことが何かを、常に実行していきます。そのためには、心労が絶えない日々を過ごしていることがわかりました。イランにタンカーを派遣し、取引したことが、そんなに大きな事件(日章丸事件)となったとか、歴史的なことも全く知らなかったです。
石油業界のことは、難しかったけど、面白かったです。全体的には終戦後の話が多かったけど、25歳で創業し、苦労して取引を獲得していく、若い頃の話も良かったです。

涙堂 琴女癸酉日記 ‐ 琴女癸酉日記2017/07/23

涙堂 琴女癸酉日記 ‐ 琴女癸酉日記
「涙堂 琴女癸酉日記 ‐ 琴女癸酉日記」 宇江佐 真理 講談社文庫
(なみだどう ことじょきゆうにっき)
主人公は45才の琴。同心だった夫が先立って、末息子・賀太郎と日本橋通油町で同居を始める。賀太郎は侍を捨てて浮世絵師となっているが、なかなか売れっ子のようである。琴には5人の子どもがいるが、長男は父親の跡を継ぎ、娘3人はそれぞれ町方役人の家に嫁いでいる。日本橋通油町には、琴の幼なじみ(男性2人)が住んでいて、親しんでいる。日々の暮らしの中で、琴は日記のような覚え書きを書いている。小さな事件や息子の恋、夫の死の真相など、連作短篇形式で、語られていく。
45才で孫もいる女性が主人公の時代小説というのは、珍しいと思いました。江戸の暮らしがわかって、面白かったです。時代は変わっても、現代に通じるような、もめ事はあるし、近所での助け合いや、浮世絵師の生活など、興味深いことが多かったです。そして、ラストの話「涙堂」にはグッときました。

ランナー2017/07/16

ランナー
「ランナー」 あさの あつこ・著 幻冬舎文庫
高校一年生の加納碧李(あおい)は、陸上部に所属。複雑な家庭環境の中で、幼い妹と、弱い母を守る為に、陸上部を退部する決意をする。しかし、それは競技中の挫折経験から、走ることへの恐怖が芽生えたことの言い訳だったのかもしれないと思い始める…。
同じ作者の「バッテリー」に似た味わいでした。才能があるのだけど、いろいろなことを背負ってしまい、人に助けを求めることができず、感情をむき出しにすることができない主人公。青春スポーツものとは違って、ちょっと重い話に感じてしまいました。

散り椿2017/07/13

散り椿
「散り椿」 葉室 麟・著 角川文庫
上役の不正を訴え出たため、時の権力に負け、藩を追放された瓜生新兵衛。追放後も連れ添い続けた妻の最期の願いを叶える為に、18年ぶりに藩に戻ってきた。そこで新兵衛は、藩主代替わりに伴う側用人と家老の対立を目の当たりにする。かつての仲間も絡んだ、過去の不正事件の真相と妻の秘めた想いに近づいていく…。
岡田准一主演で映画化、2018年公開することが決定しています。
葉室麟のエッセンスが詰まった、代表的な作品だと思いました。
剣術に長けた主人公、藩の政治に巻き込まれる、陰謀、友情、親愛、師弟関係。
映画化の豪華キャストも知って、今からとても楽しみです。登場人物が多くて、藩の人達がどれがどうだか、ちょっとわからなくなってしまったけど、映画で見たら、わかりやすいかもしれません。戦いのシーンなども、本を読んでいるだけで、映像が思い浮かんできそうですけど、実際にどんな映像になるのかと期待しています。夫婦の深い愛にも注目です。今年読んだ本の中では一番良かったような気がします。

桜ほうさら 上・下2017/07/05



「桜ほうさら 上」 宮部 みゆき・著 PHP文芸文庫


「桜ほうさら 下」 宮部 みゆき・著 PHP文芸文庫
22歳の古橋笙之介。上総国搗根(とうがね)藩で小納戸役の古橋家次男坊。
大好きだった父が濡れ衣着せられて自刃。兄が蟄居の身となり、笙之助は、江戸・深川へやって来た。富勘長屋に住み、写本の仕事で生計をたてながら、父の汚名をそそぎたい、という思いを胸に秘めている。
仕事を依頼していくれる貸本屋・治兵衛、長屋の人々、淡い恋、ミステリアスな出来事に遭遇したりしながらも、父の事件の真相に近づいていく。

腕っぷしは弱いけど、字や絵がうまく、心の優しい主人公でした。謎解きもあり、心温まる、長屋の人を始め、周囲の人々とのふれあいもありました。この時代の人々の暮らしぶりがわかります。
甲州の言葉で“ささらほうさら”というのがあって、あれこれいろいろあって大変だっていう時に使うのだそうです。それをもじって、桜に縁があるから、このタイトルがついているようです。この本の中で桜は、たびたび登場します。
最初はすすまなかったけど、後半に向けて、どんどん面白くなりました。