千年鬼2021/06/16



「千年鬼」 西条 奈加・著 徳間文庫
友だちになった小鬼から過去世を見せられた少女は、心に“鬼の芽”を生じさせてしまう。小鬼は少女を、宿業から解き放つため、千年にわたる旅を始める。
小鬼は、様々な時代に現れて、心に鬼の芽を生じさせた人間に関わっていきます。鬼の芽が成長すると、人鬼となってしまうのだそうで、その前に芽をはきださせるのです。様々な辛い目にあっている人々が出てきます。我慢ならない状態になると、人は心を失っていくのだと思います。弟を探している少女の話が痛ましいです。小鬼は弱りつつあるのに健気なのです。
読みやすい本ですが、全体的に辛い内容が多かったです。

十六夜荘ノート2021/06/14


十六夜荘ノート

「十六夜荘ノート」 古内 一絵・著 中公文庫
英国でこの世を去った大伯母・玉青から、高級住宅街にある古い洋館を遺された雄哉。思わぬ遺産に飛びつくが、なぜか屋敷は十六夜荘(いざよいそう)という共同住宅になっていた…。社会からドロップアウトした変わり者たち―40代無職のバックパッカー、タイ出身の謎の美女、ひきこもりミュージシャン(自称)、夢を諦めきれずにいるアラサー美大生―が住む十六夜荘を大伯母はなぜ、雄哉に託したのか。そして屋敷に隠された秘密とは。
玉青の若い時代と、現代の雄哉の生活が順番に描かれています。雄哉は、バリバリ働いているが、会社では浮いているところがあります。雄哉と、個性的な十六夜荘の住人たち、そして玉青が住んでいた時代、兄と玉青や、その仲間たちがいて、2つの時代が、関係なさそうで、繋がっているのを感じます。大伯母の想いが、雄哉にも受け継がれていくのだと思えました。軍服を着た兄、おしゃれな服装の細身、美しくもキリッとした眼差しの玉青など、少女マンガを読んでいるように、絵が思い浮かんでくるような小説でした。

けさくしゃ2021/06/07


けさくしゃ

「けさくしゃ」 畠中 恵・著 新潮文庫
腕っぷしは弱いが、見た目は役者と見紛うばかりのいい男。柳亭種彦は二百俵取りのお殿様で、暇を持て余す趣味人だ。その読み手を楽しませる才能を見込んだ版元の山青堂は、彼の戯作で一山当てようと目論む。渋々ながらも書き始めた種彦。すぐに戯作の虜になるが、世に出した作品がその身を危うくする…。
現代の作家とは、違う状況や環境でした。この時代の出版の仕組みがわかります。重版と言うのは、この頃は海賊版やパクリのような事だったのとは、驚きます。畠中恵は、しゃばけシリーズを途中までしか読んでないけど、この主人公もちょっと身体が弱いようです。腕っぷしには自信がないけど、話を面白く語ります。その周囲で起こった事件を、話作りをしながら、真相を探っていく、ミステリーでした。

雁の宿 隅田川御用帳12021/05/29



「雁の宿 隅田川御用帳1」 藤原 緋沙子・著 光文社文庫
自らの藩が取り潰しとなり浪人となった塙十四郎。ある日、襲われていた元幕閣の大物を助けたことをきっかけに、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」に雇われる。さまざまな悩みや問題を抱えて駆けこんでくる女たちを救うため、十四郎と橘屋の女将・お登勢たちが奔走する。
シリーズもの1巻目です。藤原緋沙子のデビュー作だそうです。主人公は男性の十四郎ですが、剣の腕が立ち、人情に熱い人のようです。永代橋近くの宿が舞台です。前に読んでいた今井絵美子の立場茶屋おりきシリーズや、平岩弓枝の御宿かわせみシリーズも好きですが、宿が舞台なのが多いのでしょうか。今回の作品は宿の仕事よりは、駆け込み寺へ相談に来る事に対応するのが中心のようです。命がけの戦いも多くて、時代劇を見ているようです。面白かったので、これから読み進めていきます。

奇跡のバックホーム2021/05/24


奇跡のバックホーム

「奇跡のバックホーム」 横田 慎太郎・著 幻冬舎
元阪神タイガースの横田慎太郎。今後が期待される選手だったが、プロ4年目で脳腫瘍の宣告。18時間に及ぶ大手術、復帰をめざして、立ち向かい、努力を重ねるも、視力が回復せずに、24歳での引退。
ジャンクSPORTS等でもやっていたから、知っている人も多いと思いますが、ボールが二重に見えるのが、どうしても直らなくて、プロ野球選手の道を断念したと言う横田選手。涙なしに読めない本でした。1軍の試合で、東京ドームに出ていた姿を直接見る事ができたので、良かったです。あの時は、病気になる前だったのだなぁ。子どもの頃から、野球ばかり、本当に努力家で野球が大好きな少年だったのが伝わってきます。お父さんもプロ野球選手だったそうです。なんとしても復帰して、背番号24を取り返すと心に誓い、辛い治療やリハビリに耐えたのがよくわかりました。球団からも、チームの仲間も、監督やコーチからも、可愛がって貰って、人柄も良いのかと思います。真面目に努力をしているのを近くで見ているからでしょう。引退試合には、2軍の試合にもかかわらず、たくさんの選手や、矢野監督も駆けつけています。多くの選手や監督たちのエピソードも知る事ができました。
その引退試合で、センターを守った横田選手が、二重に見える目で、ボールをキャッチし、タッチアップを狙う相手チームの本塁生還を阻止するバックホームで勝利に貢献しました。引退試合でのベストプレーが、奇跡のバックホームと言われています。
引退後にまた別の場所に腫瘍がみつかり、治療していたけど、今はまた元気になったと聞いています。まだ若いので、これからは幸せになってほしいです。

荒野の古本屋2021/05/21




「荒野の古本屋」 森岡 督行・著 小学館文庫
前代未聞の「一冊の本だけを売る書店」として、国内はもとより海外からの注目も集める銀座・森岡書店。そんな型破りな店の誕生前夜の物語。散歩と読書三昧の青年が神田神保町の老舗古書店に飛び込み、波乱の修業時代を経て、個性的な古書店を開業、成功させるまでを描く。
文章がスラスラと入ってきて、面白く読めました。本を外国に仕入れに行って、時間制限ある中で、奮闘するところや、古書店を開いてから、万引きされた本を取り戻そうとするところなど、どうなるのかとハラハラします。
著者は古い建築物が好きで、家や店の建物と出会い、縁が人生を変えて行きます。人との縁も、この人の魅力とセンスの良さが仕事につながっていきます。好きな事を突き詰めていって、とても勉強していますが、誰もやっていなかった個性的な仕事をしていると思いました。古本の街、神保町へ行きたくなります。

あきない世傳金と銀82021/05/19



「あきない世傳金と銀 8 瀑布篇」髙田 郁・著 ハルキ文庫
シリーズ第8弾。遠目には無地、近づけば小さな紋様が浮かび上がる「小紋染め」。裃に用いられ、武士のものとされてきた小紋染めを、何とかして町人のものにしたいと願い、幸たちは町人向けの小紋染めを手掛けるようになった。思いは通じ、江戸っ子たちの支持を集めて、五鈴屋は順調に商いを育てていく。だが思いがけない禍が江戸の街を、そして幸たちを襲う。足掛け三年の「女名前」の猶予期限が迫る中、五鈴屋の主従は、この難局をどう乗り越えるのか。
前作を読んでから、間があいてしまったので、この世界がどうなっていたか、思い出すのに時間がかかってしまいました。話もまだ途中で、今後の展開が気になる終わり方でした。一つの問題が片付いても、次の苦難が待っているというような気がして、知恵を使って乗り越える面白さはありますが、まだ今のところは爽快さが感じられません。でも着物の柄を考えたり、よく練ってあります。この時代の流行や、作者のアイディアが良いと思います。着物のことも勉強になります。

THEやんごとなき雑談2021/05/08



「THEやんごとなき雑談」 中村 倫也・著 KADOKAWA
俳優・中村倫也の初エッセイ集。自意識過剰でモテたかった学生時代。料理や掃除、買い物、散歩など、日常のあれこれ、実家の話、紅白歌合戦の裏側、動物愛。いろいろ書き綴られています。1つ1つが短い話で、読みやすかったです。中村倫也がどんな人かが、なんとなくわかってきます。友人がファンで、貸してくれました。私は荻上直子監督が好きなので、ドラマ「珈琲いかがでしょう」を見ています。主役の中村倫也さんは、ブラックコーヒーが苦手みたいです。撮影前の話だったから、今はわかりませんが、ドラマでは美味しいコーヒーを淹れる役だから、驚きました。本の挿絵も描いていて、上手いです。味があるイラストです。雑誌「ダ・ヴィンチ」に2018年11月号〜2020年11月号に連載したものが、ベースとなっているので、自粛期間中の事などもあり、ごく最近の話でした。自然体で良かったです。
本の裏表紙、帯をめくると、面白い仕掛けがありました。

小説 渋沢栄一 下2021/05/06


小説渋沢栄一

「小説 渋沢栄一 下」 津本 陽・著 幻冬舎文庫
コンパニー、コルポレーション、バンクを創り、新たな国家システムを構築した“富国共栄”の設計者・渋沢栄一。経済人の生涯。
三面六臂の活躍で、日本経済を引っ張って行った人でした。養育院の運営に関わったり、困っている人達の相談にのり、教育にも力を注いでいます。当時のアメリカとも、良い友好関係を築くよう尽力。日本人全体の大恩人ですね。自分の私利私欲の為ではなく、日本がより良くなるように願ったのだと感じました。ちょっと登場人物が多くて複雑に感じて、読むのに時間がかかりました。

小説 渋沢栄一 上2021/04/23



「小説 渋沢栄一 上」 津本 陽・著 幻冬舎文庫
武蔵国の豪農の長男に生まれ、幼少期から類い稀な商才を発揮する栄一。幕末動乱期に尊王攘夷に目覚めた彼は、倒幕運動に関わるも一橋慶喜に見出され幕臣となり、維新後は大蔵官僚として度量衡や国立銀行条例の制定など、日本経済の礎となる数多の政策に携わった。
新しいお札にもなるし、大河ドラマと、何かと注目されている渋沢栄一です。父親も認める商才や、対応力。小柄ながら、武道にも自信があるみたいです。事務的な事をきちんとこなします。パリ万博の時に、慶喜の異母弟・徳川昭武に随員としてヨーロッパに行きます。当時のヨーロッパは進んでいて、栄一も欧米に負けないような日本を作っていこうと言う志を持ちます。日本は幕末、大きく変わりゆく時代でした。今の日本の形が、作られていくの頃だと思いました。奥さんや子どもとは、ずっと離れて暮らして、後に呼び寄せて一緒に住むけど、現代なら奥さん怒って出て行ってしまいそうですね。
これから下巻を読みますが、登場人物が多いから、こんがらがりますが、比較的わかりやすく書かれています。有名な人もいっぱい出てきます。郵便のしくみを作った前島密も。それまでは飛脚が文を運んでいたけど、汽車を使ってより速い配達ができるようになります。そういえば今年は郵政創業150年だそうです。