グッドラック2018/07/12


グッドラック

「グッドラック」 アレックス・ロビラ, フェルナンド・トリアス・デ・ペス著 ポプラ社
公園のベンチで54年ぶりに再会した幼なじみのジムとマックス。仕事も、財産も、すべてを失い変わり果てた旧友に、 祖父から聞かされた「魅惑の森」の物語を語り始める。それは魔法のクローバーを求める騎士の話。
メルヘンのような内容ながら、哲学やビジネスの本に感じます。
一番初めに思い浮かぶのは「チーズはどこへ消えた?」(スペンサー・ジョンソン)系の本でした。
面白いというよりは、勉強している気分になりました。
幸福になるヒントなのか、ビジネスで成功するための教えといったら良いのでしょうか。わかりやくすて、すぐに読めます。
格言がいろいろ出てきますが、私が印象に残ったのは次の言葉でした。
「誰もが幸運を手にしたがるが、自ら追い求めるのはほんのひとにぎり。」

調律師2018/07/08


調律師

「調律師」 熊谷 達也・著 文春文庫
交通事故で妻を亡くし、自身も大けがを負った後、ピアノの音を聴くと香りを感じるという共感覚「嗅聴」を得た鳴瀬玲司は、ピアノの調律師をしている。さまざまな問題を抱えたピアノ、あるいはその持ち主と日々接しつつ、いまだに妻を忘れられずにいた鳴瀬だったが、ある日、仕事で仙台に向かうことに……。
短編連作形式で、匂いで、ピアノのコンディションを理解するという不思議な感覚を持つ主人公。ピアノの鍵盤を叩くと良い香りが漂ってくると、調律もうまくいきます。不思議な話でした。調律が狂っているだけでなく、ピアノを弾く人に問題がある場合もあり、香りからその問題を推理していくようでした。調律師の仕事にどんなことがあるのか、興味深かったし、文章も読みやすくて、面白かったです。このまま、こんな感じで話がすすむのかと思うと、後半は違った展開になっていきました。

野心のすすめ2018/07/04


野心のすすめ

「野心のすすめ」 林 真理子・著 講談社現代新書
「やってしまったことの後悔は日々小さくなるが、やらなかったことの後悔は日々大きくなる」をモットーとする作家・林真理子。
中学時代はいじめられっ子、その後もずっと怠け者だった自分が、なぜ強い野心を持つ人間になったのか。
就職試験に落ち続け、どん底のアルバイト生活時代。「ルンルンを買っておうちに帰ろう」でデビューし、テレビに出る有名人となるも、バッシングを受けながらも、向上していった経緯を語る。
林真理子さんがよくテレビに出ていたのを記憶している人も多いと思うけど、若い人はあまり知らないかもしれないですね。
直木賞を始め数々の文学賞を受賞、NHK大河小説の原作者でもあり、マルチに活躍しています。野心を持っていたからこそ、人生が変わっていったということもあるけど、そこには努力と才能ももちろん必要ですよね。何より、小説もエッセイも面白いです。あっという間に読めて楽しめます。
この本を読んで思ったのは、最近は野心を持っている人が少ないです。低めで安定していればそれで良いと思ってしまう人が多いです。負けず嫌いも必要ですよね。いつか見返してやるという精神が、人を向上させていくこともあります。このままでいいやでは、景気もよくならないかも。
林真理子さんは、思い込みも強くて、いつか必ずこうなっていくのだと信じているのがすごいし、実際に思ったものを手に入れています。すぐに変わることはなかなか難しいけど、この本から刺激をもらえます。

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ四2018/06/29


沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ四

「沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ四」 夢枕 獏・著 角川文庫
宦官・高力士が、死の直前に安倍仲麻呂へ遺した手紙には、楊貴妃の出自にまつわる、さらなる驚愕の事実が記されていた。黄鶴、白龍、丹翁…さまざまな人の想いと呪いが交錯した果てに、いま、順宗皇帝は呪法によって瀕死の状態に陥っていた。呪法の正体を暴くよう依頼された空海は、逸勢や白楽天、大勢の楽士や料理人を率い、玄宗皇帝と楊貴妃ゆかりの地・華清宮へと向かった。
皇帝に呪いがかけられていて、そのカギを握るのは楊貴妃をめぐる過去の出来事に関係があった。それは楊貴妃の生まれる前に遡り、栄華を極めた伝説の宴、反乱、その後のことも、最終巻であるこの本によって、謎は解き明かされました。
空海がどれだけすごい人物だったのかということも、興味が湧いてきました。
映画とつい比較して読んでしまいましたが、映画の華やかな映像を見ているので、想像しやすかったです。登場人物は実在した人たちだと思うと、この時代に唐に渡り、行くだけでも大変なのに、勉強して日本に伝えた功績のみならず、唐の国でも活躍したことがうかがえました。

闇に咲く おいち不思議がたり2018/06/21


闇に咲く

「闇に咲く おいち不思議がたり」 あさの あつこ・著 PHP文芸文庫
江戸深川、菖蒲長屋で分け隔てなく患者に接する父のような医者になることを夢見て、仕事を手伝っているおいち。そんなおいちのもとに、商家の若旦那が相談に来る、亡き姉の影に怯え、救いを求めてきたのだ。おいちにはこの世に思いを残して死んだ人の姿が見えるという不思議な能力がある。若旦那が、来る前から強力な予感があった。一方、深川界隈では連続して夜鷹が殺される事件が発生していた……。
『おいち不思議がたり』シリーズの第3弾です。前の本を読んでから少し時間があいてしまったので、ちょっと記憶があやふやなところがありました。岡っ引きや飾り職人との関わりなど、前に出てきた登場人物がおいちとどう関わったのだっけと思いました。でも読み出すと面白くて止まらなくなってしまいます。ちょっと暗い内容だったけど、楽しめました。

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ三2018/06/19


沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ三

「沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ三」 夢枕 獏・著 角川文庫
安倍仲麻呂が遺した手紙により、空海たちが知った事実。それは、かつて玄宗皇帝が楊貴妃を処刑せざるを得ない状況に陥った際、道士・黄鶴の提案に従って尸解の法を用い、楊貴妃を仮死状態にして難を逃れようとしたが、あえなく失敗したというものだった。
いよいよ、楊貴妃の最期の真相がわかってきました。楊貴妃と皇帝の出会いもわかりました。想像以上に人間関係が複雑に絡み合っていました。映画のように白楽天がそれほどたくさん出てこなかったけど、重要な人物だということはわかります。関係が難しいけど、わかってきて良かったです。残りは1冊となりました。

まるまるの毬2018/06/07


まるまるの毬

「まるまるの毬(いが)」 西條 奈加・著 講談社文庫
親子三代で菓子を商う「南星屋(なんぼしや)」は、売り切れご免の繁盛店。
武家の身分から転身し職人となった治兵衛を店主に、出戻り娘のお永、その娘で
治兵衛の孫にあたる看板娘のお君で切り盛りしている。
諸国の菓子に通じていて日替わりで売り出す菓子は、おいしくて庶民の懐にも優しい。しかし、この一家にはある秘密があった……。
各章が菓子の名前になっています。
「カスドース」「若みどり」「まるまるの毬」「大鶉」「梅枝」「松の風」「南天月」
どんなのかと楽しみで、読んでみると、どれもおいしそうです。和菓子が食べたくなります。
真面目にひたむきに菓子を作っている一家の人情時代小説で、面白かったです。まだ話が続いていっても良さそうな感じでした。
吉川英治文学新人賞受賞作。

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ二2018/06/04


沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ二

「沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ二」 夢枕 獏・著 角川文庫
劉家の一連の怪異は、どうやら遡ること60年前、玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋に、端を発しているらしい。その謎を解くため空海は、のちの大詩人・白居易(白楽天)や盟友・逸勢と共に、楊貴妃の墓を暴くことを決意する。そこには妖しい呪いがかけられているうえに、石棺の中には楊貴妃の姿はなかった……。
不思議な現象が次々と怒るのだけど、空海は臆することもなく、穏やかに対応するし、不思議な現象を自らも行う事ができます。
 落ち着き払った様子がなんとも魅力的です。字や文章が大変美しく、語学も堪能で、唐の言葉は現地の人の発音と変わりないくらいに話せているらしいです。
2巻では、楊貴妃の死の秘密を知るものとして、安倍仲麻呂が残した手紙が出てきます。安倍仲麻呂もとても優秀な人物だったことがわかります。難関の「科挙」に合格して、異国人ながら、唐の皇帝の側近になっていたのですね。
そして、私が映画「空海」を見てもよくわからなかったことが、この本でわかってきて面白いです。楊貴妃の身にどんなことがあったのか。その後のことも、知りたいです。

まんがら茂平次2018/05/24


まんがら茂平次

「まんがら茂平次」 北原 亞以子・著 新潮文庫
江戸は神田鍛冶町裏長屋。口からでまかせばかりで世を渡る茂平次。千に三つの真実がせんみつなら、万のことを言っても本当のことはひとつもないという「まんがら」が茂平次のニックネーム。幕末維新の激動期、茂平次の周囲はあわただしい。まんがらで困った男と思いきや、困った時は茂平次の嘘で、なんとかしようと人から頼りにされている……。
北原亞以子の本は、まだ読んだことがなかったので、初めてです。茂平次は、あまり働かないし、魅力的な人物とはいえないけど、愛嬌があって憎めない人物です。知り合いの人は、嘘とわかって安心して聞いていられるのです。子どもの時に親を亡くし、嘘を語りながら、世渡りしてきたせいか、嘘が上手になっています。怠け者だけど、おひとよしで、結果的には人助けをしています。
12編の連作長編で読みやすかったです。

結び布2018/05/14


結び布

「結び布(きれ)着物始末暦 10」 中島 要・著 ハルキ文庫
呉服太物問屋の若旦那・綾太郎は悩んでいた。商売敵とはいえ、三百年続いた京の呉服問屋・井筒屋の暖簾をこのまま消してよいものかと。悩んだ末に相談に行った本両替商・後藤屋の大旦那からまさかの条件を突き付けられた綾太郎は、決着をつけるため、着物始末屋の余一とともに井筒屋へと向かった。一方、晴れて余市と一緒になったお糸は、これから生まれてくる我が子の幸せを願い、ひと針ひと針、愛情を込めておしめを縫っていた……。
シリーズ第10弾で完結編。中心人物は着物の始末を通して皆の問題を解決してきた余一ですが、余一以外の人が常に語り手になっていて、余一の本当の気持ちというのがわかりにくいのです。でも、読み進むにしたがって、いつもむっつりしている男なのに、特に女性や子どもが困っているのを見過ごせなくて、忙しいのについ手を貸してしまう優しい人なのだということがわかります。自分が結婚して子どもを持つこと、人並みの幸せを得られるなんて思っていなかったので、幸福を感じているのも伝わってきました。良かったなと思いました。10冊読んできてのラストは思ったよりもあっさりしていると思いました。何かと迷惑をかけられた井筒屋の愁介も、改心してくれたようにも思えず、その後はどうなったのかと気になるところもありました。