闇の狩人 下2021/02/20



「闇の狩人 下」 池波 正太郎・著 角川文庫
記憶喪失の浪人・谷川弥太郎は、盗賊の小頭・弥平次に助けられるが、数年後に再会後も、執拗に命を狙われている。弥太郎の秘められた過去に近づいていく弥平次。一方、弥太郎は、恩人である弥平次に向けられた魔の手に対し、自らの撃剣をふるう。互いに信頼を寄せ合いながら危地をくぐり抜けていく……。
盗賊の跡目争い、御家騒動、香具師の縄張り争い、絡み合っています。江戸ノワール(暗黒街)ものという感じがしました。時代や設定を変えて、現代の映画にもできそうです。イタリアンマフィアや、韓国ノワールにしても良いと思います。
記憶喪失の侍は、前に読んでいた「立場茶屋おりきシリーズ」にも出てきたので、ちょっとイメージが重なってしまいました。思い出さない方が良い過去がだいたいあります。結末は違っていましたが、最後まで読むと弥太郎の記憶を失う前のことがわかりました。
弥平次と弥太郎は、年齢も離れているので、友情というより、師弟のような間柄でしょうか。お互いを思いやっています。弥平次が盗賊ながら、お金の余っているところからしか盗らず、押し入っても殺傷しないという考え方なので、良い人に思えてきます。先代亡き後に、自分は後を継ぐつもりもないのに、後目を争う者同士が対立し、弥平次も命を狙われるようになります。
弥太郎の剣術のみごとさや、絆、恋愛、ミステリーなど、いろいろ盛りだくさんで楽しめました。

闇の狩人 上2021/02/11



「闇の狩人 下」 池波 正太郎・著 角川文庫
盗賊の小頭、雲津の弥平次は、山奥の湯治場で、記憶を失い、命を狙われている若い浪人を助ける。名前を思い出せない若者に、弥平次が谷川弥太郎と名付ける。弥太郎は、凄まじい剣の腕を持っていた。時を経て江戸で再会した二人だが、弥太郎は人を殺める仕掛人になっていた。身を案じる弥平次だが、彼も盗賊の跡目争いに巻き込まれている……。
池波正太郎の本は、これまでエッセイ1冊しか読んでなかったのですが、面白いです。こちらは庶民の話ではなく、切った張ったの世界です。命を狙われて、ずっと緊張感があります。その中でも、良い人、信頼できる人との、繋がりの大切です。闘いや駆け引き、支える女たち、謎を追うミステリー、盛りだくさんです。人間関係も絡み合っています。楽しみに下巻を読みます。

虚ろな十字架2021/02/05


虚ろな十字架

「虚ろな十字架」 東野 圭吾・著 光文社文庫
中原道正・小夜子夫妻は一人娘を殺害した犯人に死刑判決が出た後、離婚した。数年後、今度は小夜子が刺殺されるが、すぐに犯人・町村が出頭する。中原は、死刑を望む小夜子の両親の相談に乗るうち、彼女が犯罪被害者遺族の立場から死刑廃止反対を訴えていたと知る。一方、町村の娘婿である仁科史也は、離婚して町村たちと縁を切るよう母親から迫られていた……。
主に2つの夫婦の話ですが、それだけではないので、初めはちょっと私はゴチャゴチャとしました。でも、だんだん、関りがわかってくると、興味が湧いてきました。ミステリーです。小夜子が殺され、犯人はすぐ自主するけど、その裏に何があったのか、小夜子の元夫が突き止めていきます。全体的に、ちょっと暗い内容でした。何が正解なのかわからないけど、犯罪にはいろいろ理由があると思いました。
ドラマにしてみても、良いと思いました。

どこかで誰かが見ていてくれる日本一の斬られ役福本清三2021/01/31


どこかで誰かが見ていてくれる

「どこかで誰かが見ていてくれる 日本一の斬られ役福本清三」 
小田 豊二・聞き書き 集英社文庫 
恥ずかしがり屋の少年が、15歳で京都撮影所へ。運動神経に恵まれた彼は、時代劇の華やかな立ち回りを盛り上げる斬られ役として、有名監督や銀幕のスターたちの目に留まるようになる。以来43年、セリフはもちろん、台本がないのが当たり前の、斬られ斬られて2万回の大部屋生活。東映時代劇映画の盛衰とともに歩んだ男が語る、笑いあり涙ありの役者人生。
こちらの本は、昨年もらいました。今年の初めに福本清三さんが、亡くなったそうで、読むのが遅くなってしまいました。福本清三さんを知ったのは、時代劇好きの職場の先輩が、ドラマでいつも斬られ役で出ている人がいるという話を聞いた事です。ずいぶん前だったので、福本清三さんの名前はまだ有名ではなかったですが、その後の活躍もあって、「ラストサムライ」にも出演して、だんだん有名になっていきました。
飾らない人なんだと思います。本を読んでも、スターになるという気持ちもないようです。時代劇だけではなく、いろいろと出ているようです。野心がなくて、職人のようです。東映時代劇全盛の頃から、任侠もの路線へ移っていくなど、時代の流れがわかります。映画が娯楽の中心だった時代は、今は違いますし、時代劇はなかなかヒットしなかったり、お金がかかり過ぎたりすることが、よくわかりました。
でも、大河ドラマは人気ですし、時代物映画は作られています。私も、小さい頃は、よくドラマで見ていましたし、面白かったのを覚えています。
この本によく出てくる名前の人は、そこまで詳しくないかもしれないけど、昔は時代劇ドラマが多かったことを思い出しました。
今でも活躍している人もたくさんいます。北大路欣也さんや、高橋英樹さんなど。東映黄金時代を彩るスターたちの事が面白かったし、福本清三さんの家族の話も面白かったです。

永遠に 立場茶屋おりき252021/01/29



「永遠に 立場茶屋おりき」  今井 絵美子・著 ハルキ文庫
先代のおりきの孫娘・里実が、縁あって「立場茶屋おりき」の女中見習となった。育ての親の恵心尼は、里美に躾や読み書きばかりではなく女ごの嗜みの大概のことを教え込んでおり、しかも山野草が大好きだという。
一方、板頭・巳之吉も後継者を育てることに余念がない……。
やっと完結しました。長かったけど、終わるのが惜しいような気もします。
女将のおりきが中心とはいて、群像劇のように、いろいろな人間関係が絡み合っています。だから、他の人達がどうなったのか、女将のこれからはどうなるのか、まだ知りたいですが、余韻ある終わりでした。
全体を通してみると、人の縁というのは、意味があることもあり、亡くなった人の導きもあるのかもしれないと思えてきます。縁を大切にしたいと思いました。

幸せのかたち 立場茶屋おりき242021/01/28



「幸せのかたち 立場茶屋おりき」 今井 絵美子・著 ハルキ文庫
参勤交代で席の暖まる暇もなかった品川宿の「立場茶屋おりき」に、ようやく日常が戻ってきた。亀蔵親分の家では、浅蜊売りがやってきて、店の前で倒れてしまう。まだ若い男の人だが、いきがかりじょう医者にみせると、重病だとわかる……。シリーズ第24弾。
知らない人だけど、面倒をみてあげます。亀蔵親分の家は義妹が夫婦で、八文屋という庶民的な料理屋をやっているのですが、そこで働く家族のような存在のおさわは、料理が上手い上に、情が深いのです。倒れた十三のかわいそうな生い立ちを知り、余計に同情してしまいます。十三には良かったけど、悲しい別れが待っています。

すみれ野 立場茶屋おりき232021/01/26



「すみれ野 立場茶屋おりき」 今井 絵美子・著 ハルキ文庫
師走もはや十三日。「立場茶屋おりき」でも、朝から男衆たちが旅籠の煤払いに余念がない。そこへ養護施設「あすなろ園」の勇次が心細げな顔をして通りかかった。猟師町にひとりで出かけてくるという。そこには、おりきたちの深い親心があったのだ……。シリーズ第23弾。
あすなろ園の子どもたちも、将来を考える年頃になる子もいて、1人は板前修業を前から初めているが、1人は亡くなった父と同じように漁師になりたいと言ってきました。
前に下足番見習いをしていた三吉は絵の才能が認められて京へ修行へ行っていたが、結婚すると便りがありました。三吉と双子のおきちは、女将修行をしているのだが、自分は女将になりたくないと言い始めます。おりきとしては、次世代を育て、立場茶屋おりきの将来を考えていかなければなりません。旅籠を離れられない女将に変わって、三吉の祝言の為に、おきちと番頭が京へ行くことになります。この時代は、品川から京都へ行くのは大変なことでしょう。船も使うようでしたが、何日もかかるようです。でも、今の私たちもずっと後の世代になったら、私たちの行き方でも、すごく時間がかかるとなるのだろうなぁ。リニアモーターカーの時代になったら速くなるでしょうし、今でも新幹線より飛行機の方が、速いですね。

一流の客 立場茶屋おりき222021/01/24



「一流の客 立場茶屋おりき」 今井 絵美子・著 ハルキ文庫
芸者の幾富士が、呉服屋「京藤」たっての希望で、身体の不自由な京藤の一人息子・伊織の世話をするようになって早8ヶ月近く。白金の寮で、可憐な花たちに囲まれておだやかな日々を過ごす2人のもとに、ある日、伊織の母・芳野が訪ねて来た……。
シリーズ第22弾。 良かったこともあり、残念な出来事も多々ありました。お互いに慕いあっている相手と、夫婦になるのかどうか、女将のおりきも良い年齢になっているので心配ですが、結論が出たように思います。気持ちはわかるけど、納得できない気もしました。
前の話の説明が、長文になっていて、もう一度読んでいるように思われてなりません。もう少し省略して書いてほしいというのが、目立ってきました。もう残り少ないので、なるべく一気に読んでしまおうと思っています。

佐保姫 立場茶屋おりき212021/01/22



「佐保姫 立場茶屋おりき」  今井 絵美子・著 ハルキ文庫
立場茶屋おりきでは、女将と大番頭が、板前の巳之吉が特別の想いで用意してくれた朝餉を頂こうとしていた。するとそこへ、明日の晩、娘・お佐保の百日の祝いをやりたいと、甲本屋の使いがやって来た。どうやら特別な理由があるらしい…。
シリーズ21弾。タイトルにもなっている佐保姫は、春の女神の事で、季語にもなっているそうですが、知りませんでした。そこからとって、佐保(さお)と名前の付けている娘が今回は2人登場しました。甲本屋の2人目の娘は、前の話からのつながりがあります。もう一人は、同じ品川宿の近江屋の旦那様の、知られざる過去の恋愛が語られます。他にも立場茶屋おりきをひいきにしていた七海堂のご隠居・七海の過去など、長い人生の中には、秘めたることがいろいろとあるものです。

由縁の月 立場茶屋おりき202021/01/20



「由縁の月」 今井 絵美子・著 ハルキ文庫
師走も二十八日。立場茶屋おりきの茶屋と旅篭、彦蕎麦、あすなろ園の餅搗きの日。女将のおりきは、慌ただしさの最中、大番頭の達吉と常連客の吉野屋幸右衛門の身を案じていた。一方、幾千代は、呉服屋・京藤に幾富士を息子の世話係に譲ってくれないかと頼みこまれて、悩んでいた。親なら娘の幸せを一番に望むもの…。
シリーズ第20弾。出会いや別れは、このシリーズの中ではいつでもあります。今回は亡くなった人が多かったです。働いている人やお客様。読んでいるうちに、本の中では年月もかなり過ぎているようです。別れがあるのは仕方ないことです。若い人達の成長の話は、これからあるのかな。