猫の傀儡2021/09/22


猫の傀儡

「猫の傀儡(くぐつ)」 西條 奈加・著 光文社文庫
人を遣い、人を操り、猫のために働かせる。それが傀儡師だ。傀儡師となった野良猫・ミスジは、売れない狂言作者の阿次郎を操って、寄せられる悶着に対処していく。やがて一匹とひとりの前に、先代傀儡師失踪の真相が……。
始まりから、変わっていて、面白かったです。まず、二歳のオス猫のミスジが、傀儡師として、選ばれます。町に1匹の傀儡師がいて、先代の傀儡師猫が、姿を消して1ヶ月たったから、猫の頭領がミスジを選び、傀儡となる人間も指定します。その人には気が付かれないように、猫の為に、働かせるのです。時間に余裕があって、気の良い人じゃないと、動かすのも難しいです。猫に疑いがかかった事件の、疑いを晴らします。ミスジの腕前もすごいです。ミステリーを人間の阿次郎と猫で解決していく、連作短編小説です。一見、難しい漢字が入っていてとっつきにくいように見えるかもしれませんが、マンガみたいで楽しかったです。気に入りました。

満月珈琲店の星詠み2021/09/16


満月珈琲店の星詠み

「満月珈琲店の星詠み」 望月 麻衣・著(桜田 千尋・絵) 文春文庫
満月の夜にだけ現れる満月珈琲店では、猫のマスターと店員が、極上のスイーツやフードとドリンクで客をもてなす。スランプ中のシナリオ・ライター、不倫未遂のディレクター、恋するIT起業家…マスターは訪問客の星の動きを詠んで、悩める人々を導く……。
表紙の絵や本の中にも絵がきれいで、珈琲が好きだから、期待しました。
話はつまらないわけでもないけど、占星術の説明が長いので、ちょっと飽きました。占いにあまり興味がないです。登場人物の星の導きといっても、自分にあてはまるものでもないし、その説明が長い気がしました。出てくるスイーツは美味しそうでした。そのイラストもカラーで楽しめます。

うき世櫛2021/09/12


うき世櫛

「うき世櫛」 中島 要・著 双葉文庫
十五にして両親を失った結は、長屋で首を括ろうとしたところを元芸者の女髪結い・お夕に救われた。ほかに生きる道のない結は、自らの不器用さを恨みながら、お夕のもとで修業に励む。だが、贅沢を戒めるお上は、女髪結いの取り締まりを厳しくするばかり。
お夕を師匠として、髪結修行に励むが、一向に上達しない主人公のお結。見ず知らずだった結を引き受け、弟子にして一緒に暮らすお夕は、太っ腹だと思います。貧乏長屋で暮らし、生活も大変です。お結は感謝しているけど、割とずけずけと師匠に意見したり、言い返したりしているように感じました。お結なりに、師匠のお夕の事を思って言うのですが、まだ子どもっぽいところがあります。
時は天保の改革の時代、贅沢を禁じられ、質素に暮らさないとならず、娯楽も制限され、国民はお上を恨めしく思っています。あれ、そういえば、コロナウィルスの蔓延で、今私たちも、いろいろな事を我慢していますね。逮捕されたりはしないけど、国の政策が悪いんじゃないかとか、経済が回っていかないから、景気も良くならないとか考えながら、多くのストレスを抱えています。時代は違うけど、現在に通じるところがあるなぁと思いながら、読みました。その後のお結は、どんな女性に成長したのかなと知りたかったです。

ひょうたん2021/09/07


ひょうたん

「ひょうたん」 宇江佐 真理・著 光文社文庫
本書五間堀にある古道具屋・鳳来堂。借金をこさえ店を潰しそうになった音松と、将来を誓った手代に捨てられたお鈴の二人が、縁あって所帯をもち、立て直した古道具屋だった。ある日、橋から身を投げようとした男を音松が拾ってきた。親方に盾突いて、男は店を飛び出してきたようなのだが…(表題作)。
江戸人情もの。鳳来堂に何かと持ち込まれる物が、話のモチーフになっています。主人公は、ごく普通のご夫婦、むしろ頼りない旦那さん。しっかり者の奥さんと言う感じかな。儲け度外しで、気前が良すぎるところもあります。音松は、幼なじみの仲間とずっと仲が良くて、しょっちゅう音松の家に集まっては、お鈴の心づくしの料理を肴にお酒を楽しみます。古道具屋の店の前で、七輪を出して、煮たり焼いたり、道ゆく人の胃袋をくすぐっています。仲間の1人は料理茶屋を営んでいて、旬の食べ物を持って来てくれたりします。その友人さえも、お鈴の料理を楽しみにやって来ます。何と言う事もない家庭料理ですが、とっても美味しそうです。稲荷寿司、味噌田楽、昆布だしで煮た大根、味噌おにぎりなどなど、さりげなく出てくるけど、料理を振る舞う事で、お鈴の人柄が現れています。話も良かったけど、料理が印象に残る本でした。

大奥づとめ よろずおつとめ申し候2021/09/04


大奥づとめ よろずおつとめ申し候

「大奥づとめ よろずおつとめ申し候」 永井 紗耶子・著 新潮文庫
上様の寵愛こそすべて、とは考えなかった女性たちがいた。大奥の多種多様な職場に勤めた「お清」の女中たち。努力と才覚で仕事に励む彼女たちにも、人知れず悩みはあって…。里に帰れぬ事情がある文書係の女、お洒落が苦手なのに衣装係になった女、大柄というだけで生き辛い女、負けるわけにはいかぬが口癖の女。今に通じる女性たちの姿をいきいきと描く斬新な江戸のお仕事小説。
読みやすくて、とても面白かったです。大奥にはこのような仕事があるのかと興味深いですし、そこで悩みながらも成長していく女性たちが、生き方のお手本のように思いました。時代は違えでも、そういう風に考えていけば良いのかと、参考になると思います。女性の身分が低かった時代だと思いますが、大奥ならば、自分の裁量によって、出世することもできるのだと思いました。上様の目にとまることがすべてではないし、大奥で学んで、世間に戻っていく人もいて、箔がつくというか、ランクアップができているように思いました。女性たちの世界、友情もあるし、主従関係ができて、学ぶことが多いと思いました。

秋の蟬 隅田川御用帳182021/09/02



「秋の蟬 隅田川御用帳18」 藤原 緋沙子・著 光文社文庫
縁切寺慶光寺の御用宿「橘屋」に、醤油問屋「紀州屋」の番頭がやってきた。橘屋に駆け込み離縁となった内儀のおきよを捜してほしいという。行方不明になっているおきよを捜し始めた橘屋の用心棒・塙十四郎だったが、ようやく捜し当てると、おきよは窮地に陥っていた。隅田川御用帳シリーズ、最終巻。
やっと江戸に戻ってきた十四郎。今回は離縁したいという話ではなく、過去に橘屋を介して離縁した人の消息を探るというもの。その時は、お登勢も関わっていなかった頃の話。
最終巻だから、大きな盛り上がりがあるのかと思ったけど、そうでもなく、でも一応の良い結末があって、温かい感じで終わりました。その後ももっと知りたい気もしました。でも、終わってホッとしました。違う本も読みたいです。

寒梅 隅田川御用帳172021/08/31



「寒梅 隅田川御用帳17」 藤原 緋紗子・著 光文社文庫
元老中の楽翁こと松平定信の命で、越後の秋山藩を探っていた密偵が、消息を絶ったので、調べに行ってほしいと密命を受けて、十四郎は旅立った。藩では、貧困にあえぐ農民と、藩政を二分する問題が起こっているのを知る……。
前作に続き、2話の話が入っていて、同行した楽翁の密偵の平蔵と秋山藩の人達に協力してもらい、見事な手腕で問題を解決しました。面白かったです。
しかし、帰る前に新たな密偵が新しい依頼を持ってきます。柏崎で多発する金品強奪事件の調査に、そのまま出かける事になります。それが2話目でした。祝言を挙げたばかりなのに、お登勢のもとには。まだ帰れませんでした。かわいそうに。

花野 隅田川御用帳162021/08/27



「花野 隅田川御用帳16」 藤原 緋沙子・著 光文社文庫
「切られた縁を元に戻してほしい」と縁切り寺の御用宿「橘屋」に駆け込んだ上総の女おふきは、そう訴えた。珍しい駆け込みに戸惑う用心棒の十四郎と主のお登勢。十四郎が、離縁した元亭主に会って話を聞いてみると、背後に上総の幕領を巡る事件の影がちらつく。上総へ渡った十四郎が掴んだ恐るべき「真実」とは……。
文庫版の書き下ろしとなっています。いままでは1冊に4話くらいだったのに、この巻は2話で、ちょっと長い物語になっていました。登場人物が多くて、名前が誰がどれだったか、わからなくなりました。一気に読んでいないので、読むたびに、どうだったかなぁと思いました。上総の藩をめぐる話でした。
だいぶ終わりが近づいてきて、いよいよ十四郎とお登勢が、ささやかな祝言を挙げてました。しかし、十四郎には、この後に家を離れて、探索するミッションがあります。まだ続きを読まないと。

鳴き砂 隅田川御用帳152021/08/25



「鳴き砂 隅田川御用帳15」 藤原 緋沙子・著 光文社文庫
橘屋に美佐という武家の妻女が駆け込んできた。驚いたことに妊娠していたが、亭主が酒と女に溺れ、暴力をふるうという。亭主に離縁を申し出ても取り合わないと必死に訴えるが……。
実際には、離縁したいわけではなく、事情があることもあります。本当の事を言わない場合は、協力をお断りしますが、危険が迫っているとか、深い事情に、思わず同情して、協力することも多いです。人情派な橘屋です。
今回の巻では、幼い頃に、寺に置き去りにされ、お登勢か面倒をみている万吉の事が出てきました。いつまでも子どもっぽいところはあるのですが、手代として働きながら、勉強もさせてもらっています。その万吉の本当の親の事がわかりました。ちょっと複雑になっていました。まだ小さかったので、よく覚えていないことがありました。しかし、だんだん大人になりつつあり、その後、自分で道を選択します。

日の名残り 隅田川御用帳142021/08/20



「日の名残り 隅田川御用帳14」 藤原 緋沙子・著 光文社文庫
駆け込み寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」に、大店の薬種問屋・小国屋の内儀おきくが駆けこんできた。橘屋用心棒の塙十四郎が事情を調べると、お金と引き換えに嫁いだおきくは、亭主の卯之助に商売の手段に使われていたことがわかる。そして、おきくの身に危険が迫る……。
なかなか十四郎とお登勢に進展がなかったけど、この本では、お登勢に気持ちを打ち明けるシーンがありました。現代でいればかなり控え目ですが、少しは先に進みそうです。
橘屋の番頭の藤七は、次世代の若手を育て初めていました。人手も必要なのだろうけど、先の世代交代を見据えているのかもしれません。
この文庫には「あとがき」があって、他の巻にはなかったように思います。作者の藤原緋沙子はこのシリーズの1巻目がデビュー作です。それは知っていましたが、この14巻の頃は、作家デビューして15年目に書いているのようです。確かに長いからそうなるのでしょうが、文体などは変化を感じないままに読んできました。1冊目から作風が出来上がっていると思います。