金曜日の本屋さん2026/08/16



「金曜日の本屋さん」 名取 佐和子 ハルキ文庫
ある日、「北関東の小さな駅の中にある本屋は“読みたい本がみつかる本屋”らしい」というネット上の噂を目にした大学生の倉井史弥。病床の父に以前借りた本を返すように言われたが、じつは失くしてしまっていた。藁にもすがる思いで、噂の駅ナカ書店〈金曜堂〉を訪ねる彼を出迎えたのは、底抜けに明るい笑顔の女店長。本に関する相談で、倉井はすっかり金曜堂のトリコになる。
金曜堂の個性豊かな人々、地方の小さな本屋なのに、半端ない蔵書数で、カフェも併設している、こんなお店があったら良いなぁと思える本屋でした。1話づつ本を紹介しています。軽いタッチの本でした。なんかいろいろと秘密があるようで1巻を読んだだけでは、スッキリしません。続きがあるので、これから読んでいきます。タイプ的には「ビブリア古書堂の事件手帖」や「珈琲店タレーランの事件簿」を彷彿させました。

本所おけら長屋 十二〜十四2026/08/08





「本所おけら長屋 十二〜十四」 畠山 健二 PHP文芸文庫
江戸本所亀沢町にある貧乏長屋には、万造、松吉の「万松」コンビを筆頭に、左官の八五郎、浪人の島田鉄斎ら、個性豊かな面々が住んでいる。
江戸へ出稼ぎ中に行方不明になった夫を探しにくる妻と娘。おけら長屋ゆかりの女性に助けられ、おけら長屋の人たちが、手分けして夫を探してくれる。金はないが、おせっかいと結束力で、見事にいろいろな事を解決していく。今回は、今まで知らなかった松吉の過去がわかったり、八五郎の娘で、みんなに大切にされているお糸ちゃんの出産の話など、わちゃわちゃと揉める事があっても、うまく話が治っていきます。いつのまにやら、万松の2人もそれぞれに恋仲の相手をみつけています。

老いるショック大賞2026/08/05



「老いるショック大賞」 みうら じゅん 筑摩書房
ラジオDJみうらじゅん氏が、投稿された、皆様が老いてショックだった事を発表、それに対しコメントも書いています。
他人事だと思っていたことが、年齢があがるにしたがって、そうそうとわかってきました。共感できる事が多いし、明るく笑い飛ばしているところが、素敵です。爆笑というほどではないけど、クスッとしてしまう、老いるショッカーの皆様の話を聞いて、気をつけようとか、自分もそうだったとか。楽しくサラリと読めました。

エステルの手紙教室2026/08/02



「エステルの手紙教室」 セシル・ピヴォ 講談社
北フランスのリールで書店を営むエステルは、亡くなった父を偲んで手紙教室を開くことにした。受講者を募る新聞広告を出すと、5人から応募があった。孤独な老婦人、産後うつに苦しむ女性とその夫、ビジネスマン、進路に悩む青年。性別も年齢も異なる参加者とエステルは、手紙のやりとりを通して新しい出会いに飛び込んでいく。
フランスの本で、名前にも慣れず、はじめは誰が誰か、よくわからなかったですが、慣れてくれば、それほど多くないので、わかりやすくなりました。ジャンとジャンヌとか、名前が似ていたし。
手紙教室は、どのようにやるのかと、気になっていましたが、初めに1回会って、来れなかった人もいますが、その中から誰かに手紙を出し、コピーや写真をエステルに送るというものです。文章の書き方などについて、電話やメールでアドバイスします。手紙に入れるテーマなども指示しますが、意見や感情については口出ししません。それぞれに問題を抱えていて、手紙と言う今ではクラシックな伝達方法で、親交を深めたり、自分の悩みと向き合っていきます。書くと言うことは良いとだろうと思うけど、セラピーのような本でした。特に大変なのは産後うつのジュリエットです。生まれたばかりの娘と、最愛の夫とも別れて暮らしていて、夫に手紙を送っています。マタニティブルーという言葉もあるけど、そんな軽いものではない苦しみがあるのです。そういえば、時々お母さんが、自分の子どもに手をかけてしまう事件もあるし、周囲の理解が得られない苦しみがあると思います。
フランスらしいシャレた会話やグルメもあり、面白かったです。映画にしても、良さそうです。日本にも関わるところがあって、嬉しかったです。

一橋桐子(76)の犯罪日記2026/07/16



「一橋桐子(76)の犯罪日記」 原田 ひ香 徳間文庫
老親の面倒を見てきた桐子は、気がつけば結婚もせずに、76歳になっていた。少ない年金と清掃のパートで細々と暮らしているが、貯金はない。孤独死して迷惑をかけるかもしれない。ある日、テレビを見ていたら、高齢受刑者が刑務所で介護されているのを知る。いっそ刑務所にはいれないか。人に迷惑をかけないような犯罪で、長く刑務所に入っていられる犯罪を模索し始める。
あらすじも知らずに、読み始めたけど、タイトルと表紙の絵から、シニア女性2人が、犯罪事件を解決する推理ものかと思ってました。全然違って、主人公の桐子が将来を心配して、刑務所に入れないかと画策する話でした。でも人の良さが出てしまって、殺人なんてできないし、軽い罪ではなかなか刑務所に長く入れないし、なんて悩む日々。でも真面目に働いているからこそ、いろいろな出会いや、助けがあります。
良い話でした。もっと絡んでくるかと思ったら、そうでもなかったのは、万引きGメンの女性。他にも人が多いから、ちょっとこんがらがってしまったけど、それぞれキャラが濃かったです。

本所おけら長屋 十一2026/07/15



「本所おけら長屋 十一」 畠山 健二 PHP文芸文庫
岡っ引きに憧れた弥太郎が勝手に親分を名乗り、事件を解決しようとして起こした大騒動。おけら長屋の住人のお染の知られざる波瀾万丈の過去。隠居した親方から人探しを頼まれた八五郎は、ひょんなことから問題児の子どもを預かることに。
それぞれに良い話でしたが、私が気に入ったのは1つ目の話で、名人と言われた石工が、やる気をなくし、酒ばかり飲んでいるのを知り、その石工に狛犬を掘ってもらうよう、あれこれ画策するのだが、家族の問題も解決していく、心温まる話しになっていて良かったです。

喫茶おじさん2026/07/09



「喫茶おじさん」 原田ひ香 小学館文庫
松尾純一郎57歳。無職、再就職のあてもない日々。喫茶店好きが高じて、純喫茶巡りを始める。東銀座、新橋、学芸大学、アメ横などなど。コーヒーとその店の看板メニューを楽しみながら、巡っていく。純一郎には、苦い過去があった。大手ゼネコンを早期退職し、退職金を注ぎ込み、妻の反対を押し切って喫茶店を始めたのだが、半年であえなく潰してしまったのだ。たくさんの問題を抱えながら、今日も喫茶店へ向かう。
各地の代表的な喫茶店がたくさん登場します。純一郎の行く喫茶店の名前は書いてないのだが、詳しい人が見れば、あそこの店の事だなぁとわかります。時にハシゴして出かけるし、よく食べていました。求職中みたいなのに、なかなか豪華な食べっぷりです。読んでいる方は、入った事ない店は興味深いし、知らない店はどこかなぁと調べたくなります。最近は行ってないなぁなんて、懐かしくなったりします。どのように生きるかも考えさせられます。大変でも好きな事をするという生き方もあります。妻や娘、元妻、友人との関わりも良かったです。

金神七殺 はぐれ又兵衛例繰控十三2026/07/07



「金神七殺 はぐれ又兵衛例繰控十三」 坂岡 真 双葉文庫
方位の神とされる“金神”。その凶方位を犯すと、当人のみならず周囲の者にも災いが降りかかるという。手相見から凶方位を告げられた又兵衛は一笑に付すが、忠告を無視した仏師が殺された過去を聞き、興味を抱く。この殺しを皮切りに数々の凶事が起きている事を知る。
誰に頼まれたわけではなくても、気になるとつい深入りしてしまうところがある又兵衛。結果として、命をかけてでも、真実を暴き出そうとする、ちょっとおせっかいなところもあります。曲がったことが嫌いなのです。
3つの話のうち、印象的だったのは敵討ちをしようとする姉弟の助っ人をする話「神足」。又兵衛の師匠が縁で知り合ったが、その師匠も酒ばかり飲んでいて、本当に強いのかどうかは、謎のまま。又兵衛にとってもよくわからない人物なのです。でも、なんだか憎めない人のようで、又兵衛の奥方もその師匠が紹介してきたので、無下にもできないのです。どれも面白い話でした。

お葉の医心帖 ゆらめきの紫陽花2026/07/04



「お葉の医心帖 ゆらめきの紫陽花」 有馬 美季子 角川文庫
お葉が初めて思いを寄せた林ニ郎は、師匠・道庵の因縁の相手・総伯の息子だった。衝撃の事実を知った彼女は、林ニ郎と距離をおこうとする。老いからくる身体の不調を訴える縫物の先生や、謎の神経痛に悩まされている御膳奉行など、患者に向き合う事で恋心を忘れようとするが、心は揺れ動く。
林ニ郎に手を出すなと、お金持ちで完璧に美しい女性から、もう二度と会うなと迫られたり、なんだか少女漫画のような展開があります。主人公のお葉は、いつまでもウジウジしているように思えます。初恋と言うのは実らないのが定番だから、別の人とくっつくのか、まだ先は不明です。漢方の事が、綿密に書かれていますが、よくわかりません。でも、どうなるのかと、楽しく読んでいます。

もう別れてもいいですか2026/06/27



「もう別れてもいいですか」 垣谷 美雨 中公文庫
離婚したい。でも、お金がない……。夫は暴力を振るうわけでもなく、浮気や借金が発覚したわけでもない。偉そうな態度やにおい、近づくのも耐えられない。50代主婦が、経済的な不安を抱えながら、友人たちに支えられ新しい一歩を踏み出すまでを描く。
喪中はがきを受け取って、高校時代の同級生のダンナさんが亡くなったと知り、不謹慎だけど、羨ましいと思ってしまいます。主人公の澄子は地方で、パートで働きながら、2人の娘を育てあげ、今は子どもは独立、夫に仕える生活です。夫はモラハラです。フルタイムでパートの仕事をしているのに、家庭の事は奥さんまかせ、なんといっても妻の事をバカにしています。感謝もなく当たり前と思っていて、本を読んでいても、奥さんの気持ちに同調してしまい、ずっと辛いのです。友人たちも、みんな夫に不満を持っている人たちばかりで、全ての夫婦がそうではないと思いますが、大変だなぁと思います。熟年離婚と言う言葉が語られるようになって、かなり経ちますが、夫が定年になって、毎日顔を合わせるなんて、耐えられないとも思う人も多いのでしょう。田舎なので離婚したりしたら、噂になってしまうし、仕事だって、そんなに選べない環境ではなかなか離婚に踏み切れないですが、友人が離婚した事をきっかけに、澄子も真剣に考え始めます。同じ作者の「姑の遺品整理は、迷惑です」は面白かったですが、同じような世代の主婦が主人公な割には、こちらは辛い状態が長かったです。世の主婦たちは苦しんでいる人が多いのかもしれません。男性にこそ読んでもらいたい話でした。