ランナー2017/07/16

ランナー
「ランナー」 あさの あつこ・著 幻冬舎文庫
高校一年生の加納碧李(あおい)は、陸上部に所属。複雑な家庭環境の中で、幼い妹と、弱い母を守る為に、陸上部を退部する決意をする。しかし、それは競技中の挫折経験から、走ることへの恐怖が芽生えたことの言い訳だったのかもしれないと思い始める…。
同じ作者の「バッテリー」に似た味わいでした。才能があるのだけど、いろいろなことを背負ってしまい、人に助けを求めることができず、感情をむき出しにすることができない主人公。青春スポーツものとは違って、ちょっと重い話に感じてしまいました。

散り椿2017/07/13

散り椿
「散り椿」 葉室 麟・著 角川文庫
上役の不正を訴え出たため、時の権力に負け、藩を追放された瓜生新兵衛。追放後も連れ添い続けた妻の最期の願いを叶える為に、18年ぶりに藩に戻ってきた。そこで新兵衛は、藩主代替わりに伴う側用人と家老の対立を目の当たりにする。かつての仲間も絡んだ、過去の不正事件の真相と妻の秘めた想いに近づいていく…。
岡田准一主演で映画化、2018年公開することが決定しています。
葉室麟のエッセンスが詰まった、代表的な作品だと思いました。
剣術に長けた主人公、藩の政治に巻き込まれる、陰謀、友情、親愛、師弟関係。
映画化の豪華キャストも知って、今からとても楽しみです。登場人物が多くて、藩の人達がどれがどうだか、ちょっとわからなくなってしまったけど、映画で見たら、わかりやすいかもしれません。戦いのシーンなども、本を読んでいるだけで、映像が思い浮かんできそうですけど、実際にどんな映像になるのかと期待しています。夫婦の深い愛にも注目です。今年読んだ本の中では一番良かったような気がします。

桜ほうさら 上・下2017/07/05



「桜ほうさら 上」 宮部 みゆき・著 PHP文芸文庫


「桜ほうさら 下」 宮部 みゆき・著 PHP文芸文庫
22歳の古橋笙之介。上総国搗根(とうがね)藩で小納戸役の古橋家次男坊。
大好きだった父が濡れ衣着せられて自刃。兄が蟄居の身となり、笙之助は、江戸・深川へやって来た。富勘長屋に住み、写本の仕事で生計をたてながら、父の汚名をそそぎたい、という思いを胸に秘めている。
仕事を依頼していくれる貸本屋・治兵衛、長屋の人々、淡い恋、ミステリアスな出来事に遭遇したりしながらも、父の事件の真相に近づいていく。

腕っぷしは弱いけど、字や絵がうまく、心の優しい主人公でした。謎解きもあり、心温まる、長屋の人を始め、周囲の人々とのふれあいもありました。この時代の人々の暮らしぶりがわかります。
甲州の言葉で“ささらほうさら”というのがあって、あれこれいろいろあって大変だっていう時に使うのだそうです。それをもじって、桜に縁があるから、このタイトルがついているようです。この本の中で桜は、たびたび登場します。
最初はすすまなかったけど、後半に向けて、どんどん面白くなりました。

ビブリア古書堂の事件手帖 72017/06/20

「ビブリア古書堂の事件手帖 7~栞子さんと果てない舞台~」
三上 延・著 メディアワークス文庫
太宰治自家用の『晩年』をめぐり、取り引きに訪れた道具商の男。彼はある一冊の古書を残していく。その後、ウィリアム・シェイクスピアの古書の謎多きに対峙することになる。
6巻目を読んでから2年以上過ぎてしまい、ちょっと忘れてしまっていることもありました。今回の7巻で一応の完結を迎え、主人公の2人はうまくいったようです。栞子さんの家族関係はすべてスッキリという気もしなかったです。祖母のことがわかり、母とは一応の和解なんでしょうか。栞子さんは、目的のためなら、好きな人を欺くことがあったから、シェイクスピアの本をめぐる話も疑いのまなざしを向けてしまいました。シェイクスピアの話がいくつか出てきました。私は「リア王」が悲劇だとは思っていなかったけど、訳によって違っているようで、今回あらためてシェイクスピアの四大悲劇のうちの1つだったことを知りました。このシリーズは難しいことも多いけど、本好きな人には楽しいと思います。

あきない世傳金と銀 3 奔流篇2017/06/15

あきない世傳金と銀 3
「あきない世傳金と銀 3 奔流篇」 髙田 郁・著 ハルキ文庫
シリーズ第三弾。大坂天満の呉服商「五鈴屋」の女衆だった幸は、その聡明さを買われ、店主・四代目徳兵衛の後添いに迎えられるものの、夫を失い、十七歳で寡婦となる。四代目の弟である惣次が五代目として店を継ぐことになるが、幸は惣次と一緒になる。物が売れない時代、五鈴屋の商いに幸はどうかかわっていくのか…。
女ったらしだった元の夫は嫌だったけど、真面目な惣次と一緒に商いをできるのは良かったと思っていたら、やはり問題は起こるものです。女性が優秀なのは、面子をつぶすようです。今の時代でもそういうところがあるのですから、昔はもっと大変だったと想像がつきます。幸は美しく成長し、いろいろなアイディアを出して、商売を盛り立てていきます。その過程は呼んでいても楽しいですが、さてこの後はどうなるのだろうと思うところで終わり、続きを待ちます。

あきない世傳金と銀 2 早瀬篇2017/06/12

あきない世傳金と銀 2
「あきない世傳金と銀 2 早瀬篇」 髙田 郁・著 ハルキ文庫
シリーズ第二弾。学者の娘として生まれ、今は大坂天満の呉服商「五鈴屋」に女衆として奉公する主人公・幸。店主の四代目徳兵衛は放蕩三昧で、五十鈴屋は危機に瀕している。聡明な幸を見こんで、番頭の治兵衛は、十四になった幸を徳兵衛の後添いにしようと画策する。女衆として、鍋の底を磨いて一生を終えるか、あきないの道で、実力を発揮するか、幸は選択をせまられる…。
1巻目は、家族に不幸があり、幼いながら奉公へ出る幸の子供時代を中心に描かれている。才知に長けていても、やらせてもらえることは、限られ、まして勉強させてもらうことも難しい状況だったが、いきなり商家の嫁にという話がある。まだ幼く、好きでもない男の後添いになることに抵抗はあったが、強い意志を持って、新しい人生に飛び込むところが、次を期待させて、どんどん読めました。

カラスの親指2017/06/07

カラスの親指
「カラスの親指」 道尾 秀介・著 講談社文庫
人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年2人組。もともとはひょんなことから知り合いタケさんとテツさんと呼び合っている。ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。「他人同士」の奇妙な生活が始まった。しかし、残酷な過去によって安心して暮らしていくことはできない。各々の人生を懸け、彼らは大きな計画を立てる…。
映画にもなっていましたが、見ていません。キャストは知っていたので、つい想像して読んでしまいました。どの人も重荷を背負って生きているので、ちょっと辛いのですが、それぞれのキャラが個性的でした。
ラストのどんでん返し、想像していない内容でした。面白かったです。

傷だらけのカミーユ2017/05/30

傷だらけのケミーユ
「傷だらけのカミーユ」 ピエール・ルメートル・著 文春文庫
カミーユ・ヴェルーヴェン警部、身長は145cm。
最愛の妻を失くしてから、数年。新しい女性と恋に落ちたが、その恋人アンヌが、事件に巻き込まれ重傷を負う。カミーユはアンヌとの関係を伏せて、事件を担当。自ら犯人を追うが…。
「悲しみのイレーヌ」「その女アレックス」に続くシリーズ3冊目。
カミーユの部下のアルマンがすでに亡くなっていて、びっくりしました。アルマンはすごい倹約家なんだけど、なんだか憎めない刑事。もうひとりの部下のルイも、良いのです。知的で、無駄口を叩かず、仕事もできます。資産家の御曹司で、働く必要もないのに、真面目にやっています。いつも高級スーツを着ています。
タイトルから想像できるように、カミーユには平穏な日々がありません。3部作の完結編と書いてあるのですが、余韻を残る終わり方で、その後のカミーユがどうなったのかと知りたくなります。フランスのクライム映画を見たような気持になりました。アンヌが巻き込まれる襲撃事件からわずか3日間の話になっていて、1日ずつの3部構成でした。
残酷な表現も多いのだけど、カミーユやルイ、上司のル・グエン、すっかりおなじみになったメンバーと、これでお別れだと思うとなごり惜しいです。

楽園 上・下2017/05/24

楽園
「楽園」 上・下 宮部 みゆき・著 文春文庫
未曾有の連続誘拐殺人事件(「模倣犯」事件)から9年。取材者として肉薄した前畑滋子は、未だ事件のダメージから立ち直れずにいた。
そんな滋子にある女性から奇妙な依頼が舞い込んだ。その女性の息子は12歳で亡くなっているが、ある事件の絵を、事件が発覚する前に描いている。どうしてそういうことができたのか、超能力か。かくして16年前の少女殺人事件について、調査を開始する。
「模倣犯」の続編というよりは、スピンオフ小説という感じです。少女はなぜ殺されたのか、そのことを12歳の少年が、知っているのは何故か。前畑滋子はフリーライター。「模倣犯」の事件で、有名になったものの、特別な著書は出していない。事件を調べていくうちにいろいろな疑問が浮かび上がって、読者も滋子と同じように、疑問だらけの状態から、少しずつ真実が見えてくるというものでした。取材能力はさすがはプロでした。でも、ほとんどの部分は調査で、最後の方まですっきりとはわからなかったです。その途中で、いろいろな人間関係が広がっていくのは、面白かったです。

神去なあなあ夜話2017/05/16

神去なあなあ夜話
「神去なあなあ夜話」 三浦 しをん・著 徳間文庫
神去村の林業の現場に放りこまれて一年が経った主人公・平野勇気20歳。最初はいやでたまらなかった田舎暮らしにも慣れ、いつのまにか林業も好きになっていた。村の起源にまつわる言い伝えや、村人たちの生活、かつて起こった事件、好きな人とのドライブ。
「WOOD JOB!(ウッジョブ)」というタイトルで映画にもなった「神去なあなあ日常」の続編。慣れない林業の仕事で、四苦八苦していた勇気も成長し、今では一人前に近い働きができるようになってきたようです。好きだった直紀さんとはどうなったのかと、気になっていました。携帯電話の電波も届かないような田舎だけど、すばらしい自然があり、村独特の慣習や暮らしがあります。なによりも勇気が、村や仕事やお世話になっている人々を好きなのが伝わってきて、良かったです。