いとしのヒナゴン 上・下2017/11/16



「いとしのヒナゴン 上」 重松 清・著 文春文庫


「いとしのヒナゴン 下」 重松 清・著 文春文庫

田舎町・比奈町で、目撃された謎の生物“ヒナゴン”が、30年ぶりにまた目撃されたという。
元ヤンキーのイッちゃんが町長を勤める役所に新しく類人猿課が設置された。
昔、ヒナゴンを発見したが、証明されず、うそつき呼ばわりされたひいおじいちゃんを持つ信子ことノブは、東京から実家に戻り、類人猿課で働き始める。
ヒナゴンは本当にいるのか、その頃、市町村合併をめぐり、全町民を巻き込んで、町長選挙は、ヒートアップしていく…。
一度は東京へ行って、夢を追いかけ、でも思うようにはいかず、期間限定の類人猿課で、働いてみる主人公です。離れていたからこそ、ふるさとの良さもわかることもあります。しかし、町は過疎と財政難に苦しんでいます。
町長の世代と、ノブたちの世代、それぞれの幼なじみたちが、町の未来を考えます。会話が方言が多くて、ほんわかした雰囲気でした。
ヒナゴンのことも、友情も、信じる気持ちを持ち続けること、その方が信じないよりも良いと思えてきます。子どものまま大人になってしまったような登場人物が多かったです。

五郎治殿御始末2017/11/09

五郎治殿御始末
「五郎治殿御始末」 浅田 次郎・著 中公文庫
幕末維新の激動を生き抜いた武士像を描く時代短篇集。
映画化された「柘榴坂の仇討」も収録。
桜田門外の変から13年。御駕籠回り近習として主君・井伊直弼を守ることができなかった志村金吾は、 明治維新を経た後も、ひたすら仇を探し続けてきた。ついに見つけた刺客の生き残りは、直吉と名を変え、俥引きに身をやつしていた。仇討禁止令が布告されたその日、雪の降り積もる高輪の柘榴坂で、 二人の男の運命が交錯する。
短編集なのに、一つの話を一気に読めない場合もあって、登場人物がどんな人だったかを、すぐに思い出せず、また前の方から読み直したりしました。幕末維新で、武士の時代が終わってしまうことにとまどい、考え方を変えなければ生きていけない男達の物語でした。映画になった「柘榴坂の仇討」は見ていません。映画にするには短い話だけど、「鉄道員(ぽっぽや)」や「ラブ・レター」なども、短編から映画にしているから、それなりの長さになっているのでしょうね。

阿蘭陀西鶴2017/11/01

阿蘭陀西鶴
「阿蘭陀西鶴」 朝井 まかて・著 講談社文庫
江戸前期を代表する作家・井原西鶴。彼の娘おあいは、盲目の身ながら、亡き母に代わり料理も裁縫もこなす。一方、西鶴は、身勝手で騒動を巻き起こす困った男。傍迷惑な父親と思っていたおあいだったが、何にでも興味津々で、妥協はせず、父の性格や本心を知っていくと、父への想いが変わり始める。
「好色一代男」「世間胸算用」などの浮世草子で知られる井原西鶴は、もともとは俳諧師だったのですね。松尾芭蕉や近松門左衛門と同時代を生きていて、芭蕉をライバル視していたみたいです。
盲目の娘・おあいを語り手に、西鶴の人物像、親娘関係、現代に残る物語が書かれた裏側を知ることができます。
料理上手で、なんでもできるおあいは、読み物は読めないけど、父が書きながら朗読するので、たくさんのこと知る事ができます。暗い中でも裁縫ができ、灯りがないと何もできない普通の人の方がかえって不便ではと思っているところがあって、確かにそうだと思いました。でも、そんなおあいが、買い物に出て、道がわからなくなった時は、ハラハラしました。個性的な父親だけど、亡き妻やおあいを想う気持ちがわかってくると、良い人だったと思います。おあいもけなげな娘でした。

花祭2017/10/26

花祭
「花祭」 平岩 弓枝・著 講談社文庫
裕福だが愛のない夫と暮す彩子は、完成された大人の魅力を発散する。同僚で、同じ調香師として働く彰吾は、彩子に惹かれながらも、上司の娘との結婚が整う。日本と南仏の香水の町・グラスを結んで繰り広げられる恋愛サスペンス。
読みながら想像するだけですが、フランスの街がステキそうです。花祭もどんなものだろうなぁと。内容はかなり前の小説なので、あたりまえだけど携帯電話もなく、不便だと思いました。昔のメロドラマのような話だと思っていたら、十朱幸代主演でドラマにもなっていたようです。横暴な夫に苦しめられ、思い通りにならない女性というのは、昔の話という気がします。

トットひとり2017/10/20

トットひとり
「トットひとり」 黒柳 徹子・著 新潮社
「ザ・ベストテン」の始まりと裏側、テレビ草創期を共に戦った森繁久彌、著者が好きだった人たちや、理解してくれた人たち、向田邦子、渥美清、沢村貞子、杉浦直樹など、思い出や心境を綴ったもの。
黒柳さんといえば「徹子の部屋」「世界ふしぎ発見!」が、近年のイメージだけど、意外な人たちと交友があって、ただ仲が良いというだけじゃなく、家族のような深いつながりがあったことを知りました。とても面白かったし、知らなかったことが多かったです。
シンプルでわかりやすい文章でした。すでに亡くなっている方々との交遊録のような感じなんだけど、黒柳さんの若かりし頃からの人生がわかります。「窓際のトットちゃん」は子ども時代だったけど、この本は仕事への取り組みや考え方が伝わってきます。

フリーター、家を買う。2017/10/13

フリーター、家を買う。
「フリーター、家を買う。」 有川 浩・著 幻冬舎文庫
就職先を3カ月で辞めて以来、自堕落に親の臑を齧って暮らす“甘ったれ”25歳主人公が、母親の病を機に一念発起。バイトに精を出し、職探しに、大切な人を救うために、奔走。家族の再生と成長の物語。
ドラマになっているので、知っている方も多いと思います。私もドラマを見ていたので、つい比較してしまいます。大きな流れは似ていますが、ドラマは、かなり膨らましてありました。恋愛相手はちょっと違っていましたし、原作にはない役柄もいっぱいありました。ドラマもよくできていたと思いますし、本は本で面白かったです。もっと話が続いて、その後どうなったのかを知りたくなりました。
ドラマで主人公の両親を演じた、竹中直人と浅野温子は、ピッタリというよりは、原作に近いイメージで演じていたと思いました。

本日は、お日柄もよく2017/10/11

本日は、お日柄もよく
「本日は、お日柄もよく」 原田 マハ・著 徳間文庫
二ノ宮こと葉は、想いをよせていた幼なじみ厚志の結婚式に最悪の気分で出席していた。ところがその結婚式で感動する衝撃的なスピーチに出会う。それは伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。空気を一変させる言葉に魅せられてしまったこと葉は弟子入りを志願。久美の教えを受け、「政権交代」を叫ぶ野党側に協力することに…。
お気楽OLだったこと葉が、スピーチライターという職業を知って、言葉の魅力に目覚め、成長してく物語。ちょうど衆院選が公示されて、タイムリーな題材でした。結婚式のスピーチについても、参考になる本だと思います。スピーチをする機会の多い方は読んでおくと良いですね。
出てくる会社や政党が実在のものを文字っているし、特に政治については聞いたことある話題が盛り込まれていて、わかりやすかったです。文章のテンポがよくて、主人公のこと葉と一緒になって感動したり、こと葉を応援したくなりました。こと葉の祖母がまた良い味を出しています。

石を積むひと2017/10/05

石を積むひと
「石を積むひと」 エドワードムーニーJr..・著 小学館文庫
ツタに覆われた石塀が、少女の頃からずっとほしかった。半世紀以上にわたって連れ添ってきたアンは、夫・ジョーゼフに、こんな宿題を残して世を去った。孤独な日々を過ごす毎日。ある日、若者二人に暴行を受けてしまう。しかし、あえて罪に問うことはせず、代わりに彼らに自宅の石塀を積み上げる作業を手伝わせることにした…。
日本映画の「愛を積むひと」の原作でもあります。映画と違ってジョーゼフも妻のアンも、かなりお年を召していました。結末も違っていました。日本では積み上げていく石塀って、想像しにくいけど、映画では、こういうのかとわかりました。だから、想像して読むことができました。
映画では柄本明が良い味を出していたけど、そういう人物は出てきませんでした。

舟を編む2017/09/28

舟を編む
「舟を編む」 三浦 しをん・著 光文社文庫
出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締は運命の女性と出会う…。
本屋大賞受賞作で、映画にもなりましたが、私は映画も見逃していて、初めて全貌がわかりました。一言で言うと、素晴らしかったです。辞書作りにかける果てしない情熱や、作業の大変さが、ヒシヒシと、伝わってきました。
登場人物たちが個性的で、会話もオシャレでした。辞書を手に取りたくなりました。
タイトルの舟を編むと言うのも、読んでみるとピッタリあっていると思いました。

弔い花 長い腕 III2017/09/22

弔い花
「弔い花 長い腕Ⅲ」 川崎 草志・著 角川文庫
早瀬の旧家、東屋敷の一人娘が殺害された。この地で起こった過去の呪いと関係があるのか。調査を開始する主人公・汐路。そんな中、町の歴史の暗部と呪いの因果を暴露した本が出版され、ネットを中心に早瀬バッシングが起こる…。
シリーズ3冊目なので、これだけ読むとわかりにくいですが、過去のいきさつが絡まって、完結する内容でした。あまり喜びはなかったけど、最後がわかって落ち着きました。現在と過去の話が順番に語られて、謎だった部分がわかりました。