異国の花 着物始末暦 82018/04/24


異国の花 着物始末暦 8

「異国の花 着物始末暦 8」 中島 要・著 ハルキ文庫
シリーズ第八弾。
柳原の土手で古着屋を営む六助は、朝からそわそわしていた。なぜなら今日は、昔からの古馴染みで、着物始末の職人・余一と、一膳飯屋の看板娘・お糸の、待ちに待った祝言の日だからだ。めでたい日ではあるが、己の事に無頓着な余一が支度に手を抜きやしないかと心配な六助は、身支度を整え余一の元へ向かった。そんな折、京の老舗呉服問屋、井筒屋江戸店の店主・愁介が、「余一に関わる大事な話がある」と六助の前に現れた。いったい愁介は何を企んでいるのか……。
やっと祝言をあげたと思ったけど、好きな人と結ばれたのに、心はすれ違っているように思えます。無口な余一に問題があるのかもしれないけど、気持ちがわからずに、お糸はストレスがたまっています。でも、本当の気持ちがわかって良かったと思う回でした。そして、井筒屋がこれからどのように絡んでくるのか、心配です。

荒神2018/04/20


荒神

「荒神(こうじん)」 宮部 みゆき・著 新潮文庫
時は元禄、東北の小藩の山村に怪物が現れ、村は一夜にして壊滅する。隣り合う藩で、藩主の側近の妹・朱音が、怪物に襲われ逃げ延びてきた少年を救出する。迫りくる危険を知った朱音と、浪人の宗栄たちは、怪物襲来にそなえようとするのだが、藩同士のいがみあいがあったり、朱音の兄は怪物を自ら操ろうと企む。
果たして怪物の正体とは……。
見てないけど「シン・ゴジラ」のような、モンスターパニック映画みたいな内容でした。読んでいる時に「パシフィック・リム アップライジング」を見たら、これも似ているかもと思いました。正体不明の見たこともない大きな怪物が大暴れする時代物でした。二つの藩の歴史も絡み、いがみ合いがあるのですが、朱音の周囲には良い人が多くて、平穏な生活が再び訪れると良いなぁと祈ります。しかし、そのためには難しい決断をくださないとならないのかと思いました。

小さいおうち2018/04/05


小さいおうち

「小さいおうち」 中島 京子・著 文春文庫
昭和初期、山形から女中奉公に出てきた少女タキは赤い屋根のモダンな家で働く。若く美しい奥様を心から慕い、平穏で幸せな日々を過ごす。やがて密かな“恋愛事件”が起こり、戦争の影が刻々と迫っていた。晩年のタキが記憶を辿って綴った小さなおうちでの出来事とその後。
映画を見ていたので、大きな流れは同じでしたけど、タキの心情は、ちょっと違うと思いましたし、細かい設定は、映画では省略されているところもありました。美しくステキな奥様のもとで、ずっと働き続けたいと願い、健気に一生懸命に尽くしたと思います。しかし、後悔や迷いも残ったままの人生だったのかなと感じました。
この時代には、すごいお金持ちじゃなくても、住みこみで女中がいて、家族のように生活できたら、それも良いのかなと思いました。

あきない世傳金と銀4 貫流篇2018/03/30


あきない世傳金と銀 4

「あきない世傳金と銀 4 貫流篇」 髙田 郁・著 ハルキ文庫
シリーズ第四弾。江戸時代中期、長く続いた不況を脱し、景気にも明るい兆しが見え始めた。大坂天満の呉服商、五鈴屋でも、五代目店主の惣次は、ある事件をきっかけに、店主の地位を放り出して姿を消す。のこされた妻の幸、お家さんの富久は、五鈴屋を、どう存続し、盛り立てていくのか。
相変わらず、あきないのアイデアを考えつつ、商才を発揮する幸でしたが、運命に翻弄されています。良い具合に納まったようにも思いますが、まだまだ試練はつずくのでしょう。面白くて、あっという間に読めました。

美人薄命2018/03/29


美人薄命

「美人薄命」 深水 黎一郎・著 双葉文庫
弁当配達のボランティアで老婆・カエと出会った、大学生の総司。片目の視力を失い、貧しい生活を送るカエは、愛し合いながらも結ばれなかった男との思い出を語り始める。残酷な運命によって引き裂かれた男との話には、総司の人生をも変える、ある秘密が隠されていた。
学校の単位を取る為の助けに、いやいや始めたボランティア。大学生の総司は、あんまりやる気がありません。昔のクラスメイトがお弁当作りを手伝っていることを知り、デートに誘えないかと考えています。さして、良い人とも思えなかったが、カエおばあちゃんと知り合ったり、ボランティア代表の話や行動を受けて、だんだん変わっていき、話も後半は面白くなっていきました。登場人物にクセがある人が多くて、焦点がボヤけ気味な気もしました。
詳しくは読んでほしいから書かないけど、老女のカエとの会話が、笑えます。
この本の章タイトルも面白いです。「全ての道は老婆に通ず」「老婆は一日にして成らず」など。

離れ折紙2018/03/27


離れ折紙

「離れ折紙」 黒川 博行・著 文春文庫
フリーのキュレーター(博物館や美術館の企画や運営などをする知識を持っている専門職)の澤井は、大物建築家の未亡人に請われて、美術品の鑑定に出向いた。そこで見つけた硝子のレリーフは価値のあるものだったが、割れている。貰い受けて、修理を試みるが……。
短編形式で、同じ登場人物も出てきたりする話でしたが、古美術界を舞台に、欲に絡んで、騙そうとしたり騙されたりする話でした。単価が高いので、失敗した時の損失も膨大です。贋作も多く、見極めも難しいです。古美術には手を出せないなぁと思いました。
タイトルの折紙は、刀剣の鑑定書のことです。江戸時代、刀剣の極所として本阿弥光徳が発行した鑑定書が2つに折ってあったものらしいです。
実力者のことを「折り紙つき」と言ったりしますが、これからきているのですね。
タイトルは離れ折紙となっているのは、鑑定書は本物でも、品物とは離れている場合があるということですね。由緒正しい鑑定書でも、本物に付いているとは限らないということでしょうか。欲にかられた人々がたくさん出てくるので、面白いとも言えなかったですが、古美術業界のことを、ちょっと覗いた気分でした。 

国芳一門浮世絵草紙5 命毛2018/03/20


国芳一門浮世絵草紙5 命毛

「国芳一門浮世絵草紙5 命毛」 河治 和香・著 小学館文庫
世間が開国で揺れる中、登鯉の父、人気浮世絵師の歌川国芳は一門の弟子たちと、相変わらずの江戸っ子の稚気と覇気で後生楽に暮らしている。国芳の描いた浅草寺の“一ツ家”の奉納額は将軍の上覧にも与り、江戸中の大評判に。しかしそこに安政大地震が発生、その混乱の中で国芳が倒れてしまい、絵筆を握れなくなってしまう…。
登鯉も病気を患っているのだけど、大地震があって、人の命の儚さを感じます。儚いながらも、懸命に生きるしかないのだと思います。弟子たちは成長し、若い弟子も入ってきて、絵を描く精神は継承されていきます。主人公の登鯉は、熱く濃い人生をおくっていると思いました。
この本が完結編で、終わるのが惜しい気持ちです。登場人物たちともう会えないと思うとさびしいです。
シリーズを通して、浮世絵の面白さが伝わってきました。浮世絵の見方がガラリと変わって、前よりも興味が出てきました。

国芳一門浮世絵草紙4 浮世袋2018/03/15



「国芳一門浮世絵草紙4 浮世袋」 河治 和香・著 小学館文庫
黒船来航、歌舞伎役者との関わり、好きな人がいるのに、素直になれない主人公・登鯉。そして、出生の秘密があきらかになる……。
時代の流れと、浮世絵の関係が面白いです。過去の登場人物がまた出てきて、その後のことがわかるのも嬉しいです。うまくつながりがあります。この巻では、後の芳年が国芳のもとに弟子入りします。だんだん国芳の弟子たちのことが、わかってきて、身内のように見守ってしまいます。登鯉の出生時のことがわかり、意外な展開になっていきました。
表紙の雀の擬人化した絵、かわいくて良いな。

乾山晩愁2018/03/08


乾山晩愁

「乾山晩愁」 葉室 麟・著 角川文庫
天才絵師尾形光琳が没して以来、弟の尾形乾山は陶工としての限界に悩んでいた。追い討ちをかけるように、二条家から与えられた窯を廃止するとの沙汰が下る。光琳の思いがけない過去が、浮かび上がろうとしていた…。
2017年12月に葉室麟さんが亡くなって、悲しいです。その葉室さんのデビュー作です。「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しています。
尾形光琳の美しい絵は、ファンも多いと思いますが、人柄については私はよく知りませんでした。この話は光琳が亡くなった後の話ですが、光琳のこともよくわかります。遊び人で浪費家だったみたいで、女遊びが激しかったと知って、ショックでした。弟の乾山は絵師でもあり陶工としても有名ですが、真面目な人のようです。
短篇集で、他の話も戦国から江戸の絵師たちの話でした。とても面白かったです。
尾形乾山、狩野永徳、長谷川等伯、清原雪信、英一蝶の話でした。
名前は知っていても、どんな絵を描いている人かはよく知らなかった人もいるし、興味が湧きました。今はネットで画像も検索できるから便利です。英一蝶の話「一蝶幻景」が印象的でした。
絵師同士のつながりがあったり、松尾芭蕉や井原西鶴など、有名人も出てきて、時代背景がわかります。忠臣蔵にも関わりがありました。
絵が好きな人には良いと思います。今後、展覧会などで、絵を見ることがあれば、今までとは違った思いで見ることができそうです。

国芳一門浮世絵草紙3 鬼振袖2018/02/28


鬼振袖

「国芳一門浮世絵草紙3 鬼振袖」 河治 和香・著 小学館文庫
鬼振袖(おにふりそで)とは薹(とう)の立った娘の振袖姿のこと。浮世絵師国芳を父に持つ美少女登鯉も19歳、現代と違って、そろそろお嫁にいき遅れている年頃、初恋の人との哀しい出来事や、最愛の人との再会など、いろいろ起こる3巻。
一方、発禁覚悟で、諷刺画を描きまくっている国芳は、南町奉行所隠密廻りによって要注意人物としてマークされ……。
巻末の解説というか、対談に書いてありましたが、漫画家とアシスタントは、浮世絵師と弟子たちの生活に似たところがありますね。仕事を請け負って、みんなで仕上げたり、弟子指示してやらせたり。諷刺画は、庶民の楽しみだった時代だから、漫画に近いかもしれません。私はたけし軍団を思い浮かべました。師匠に弟子入りして、名前をもらって、仕事以外でも、師匠に言われたことをみんなでやったりする関係。師匠にふりまわされることもあるし、家族のように協力もします。
しんみりする話もあったけど、良いお話でした。