君ハ僕ノモノ2017/02/18

君ハ僕ノモノ
「君ハ僕ノモノ」 メアリ・H・クラーク 新潮文庫
心理学者のスーザンは、ラジオのパーソナリティも務めている。両親は離婚、姉に恋人を奪われた苦い過去がある。ラジオの番組で、3年前に行方を断った女性の事件のことを取り上げたところ、リスナーからの電話でその事件の鍵になることを聞く。電話をかけてきた女性との面会を約束するが、女性はやって来ないで、事件をめぐって、次々と殺人事件が起こる…。
メアリ・H・クラークの本を久しぶりに読みました。日本の小説と違って、登場人物が多いのだけど、それらの人々が複雑に絡みあって、事件の全容が読み解かれていくので、面白かったです。初めはどれがどの人かとわからなくなってしまうところがあります。フルネームやニックネームで呼ばれると違う人かと思ってしまったりしますしね。それでも、だんだんわかってくると、よく考えられてストーリーだなぁと思います。怪しい人間が数人出てきて、スーザン同様に、読者にも犯人がハッキリとわからないのです。どの人も怪しいのです。映画にもなった吉田修一の「怒り」もそういう感じですね。
最後はあっけなく進んでしまった気もしましたけどね。映画を見ているように楽しめました。

贋作師2017/02/10

贋作師
「贋作師」 篠田 節子・著 講談社文庫
日本洋画界の大御所が自殺。主人公は遺作の修復を依頼された成美。大御所画家の弟子となった男は、成美のかつての恋人だった。その彼も自殺している。作品に接するうちに、元恋人の死に疑問を持つようになった成美は、真相を解明しようと、調べ始める。大御所画家の秘密も明らかになっていく。
いろいろな絵が登場するのですが、文章から絵を想像するのは、難しかったです。内容的にはサスペンス・ホラーという感じで、ちょっと気持ち悪かったかなぁ。絵の修復とことが、少しわかった気になりました。
女性だけど、強気な主人公と、サポートをしてくれる仲間が、外見は男らしいけど実はオネエというコンビが良かったです。

鍵屋甘味処改2017/01/26

鍵屋甘味処改
「鍵屋甘味処改 天才鍵師と野良猫少女の甘くない日常」 梨沙・著 
集英社オレンジ文庫
自分の出生の秘密を知った女子高生のこずえは、母を責めて、家を飛び出してしまう。鍵屋を営む鍵師・淀川と知り合い、年齢をいつわって、助手として居候させてもらうことになる。淀川のもとには、ワケありの鍵を開けて欲しいという依頼が、毎日のように持ち込まれる。
シリーズものの1冊目のようですが、話は一応終わっているので、1冊だけ読んでも楽しめます。少女マンガを読んでいるような感じで、サラサラと読めました。表紙も漫画っぽいですね。最近そういう本が多いです。タイトルの甘味処というのは、鍵屋の隣りが和菓子屋さんで、関わってくるからです。和菓子の表現がおいしそうで、読んでいると和菓子が食べたくなります。

あきない世傳 金と銀 源流篇2017/01/25

「あきない世傳(せいでん) 金と銀 源流篇」 髙田 郁・著 ハルキ文庫
学者の子として生を受けた幸。父から「商は詐なり」と教えられて育ったが、享保の大飢饉や家族との別離を経て、九才で大坂天満にある呉服商・五鈴屋に奉公へ出されることになる。慣れない商家での生活が始まり、女衆でありながら、番頭・治兵衛に才を認められ、徐々に商いに心を惹かれていく。
新シリーズの第一弾、まだまだどのように展開していくのはわかりませんが、勉強熱心で、知恵をつけたいと思う幸。女に学は必要ないと思われていた時代。周囲に幸のことを理解してくれる人がいて、勉強する機会を持てたのは、恵まれていると思います。
苦労はしても、良い人達と出会い、成長し活躍できる日がくるのだろうと思います。

春告鳥 女占い十二か月2017/01/23

春告鳥 女占い十二か月
「春告鳥 女占い十二か月」 杉本 章子・著 文春文庫
女の吉凶を生まれ月で占う江戸時代の本「女用知恵鑑宝織(おんなようちえかがみたからおり)」を題材に、1月から12月生まれのそれぞれの女の物語。短編集になっています。この占いの本は前世がどうだったかによって、運命が決まっているという書き方になっています。
面白かったけど、ハッピーエンドとそうでないのがあって、できたら全部幸せな話にして欲しかったです。月ごとの風物が入っているし、庶民の生活がうかがえます。せつなかったり、過酷だったりすることもありましが、全体として面白かったです。

美女いくさ2017/01/13

美女いくさ
「美女いくさ」 諸田 玲子・著 中公文庫
織田信長の姪で、浅井長政の3女・小督(のちの江)を中心に女たちの戦国時代を描いています。秀吉の養女となり、命じられるままに結婚をし、三度目の結婚で徳川家へ嫁ぐ。この時代の女性たちが、政治の駒のように、結婚によって同盟を結んでいることがよくわかりました。
3姉妹で助け合ったり、他の女性たちと協力したり、対立もあるけれど、夫の家を盛り立てていくのは妻や側室たちのつとめなのですね。
戦国時代の裏に女たちも戦かっていたのです。「冬姫」(信長の娘)もそうでしたが、こういう姫には、自分の為に働いてくれる忍びいて、情報を集めたり、時には命をかけて守ってくれるのがすごいと思いました。そこまで尽くしてくれる影のような存在がいるのは羨ましいです。主人として尊敬されているからこその関係なんだと思います。
それほど歴史に詳しくない私ですが、楽しめました。

うつくしい人2016/12/21

うつくしい人
「うつくしい人」 西 加奈子・著 幻冬舎文庫
他人の目を気にして、びくびくと生きている百合は、単純なミスがきっかけで会社をやめてしまう。発作的に旅立った離島のホテルで出会ったのは一風変わったバーテン坂崎とドイツ人旅行者マティアス。ある夜、三人はホテルの図書室で写真を探すことに。百合は自分の縮んだ心がゆっくりとほどけていくのを感じていた―。
主人公の百合は、メンタルに問題がある感じでした。いじめに合わないように、気をつかい、いつでも、周囲の顔色をうかがっています。主人公は、時々、どうしようもなく逃げ出したくなります。実家は裕福で、働かなくても生活には困らないのですが、このままではいけないと悩みつつ、落ち込んでしまうこともあります。息苦しく生きている人の話で、旅で出会った2人をきっかけに、新しい一歩をふみだしていきます。

地下鉄(メトロ)に乗って2016/12/15

地下鉄に乗って
「地下鉄(メトロ)に乗って」 浅田 次郎・著 講談社文庫
主人公の小沼真次は、女性用下着を売り歩くセールスマンだが、真次の父親である小沼佐吉は、世界的に有名な「小沼グループ」の創立者。母や兄に対して傲慢な態度をしめす父に反発し、真次は高校卒業後に、家を飛び出し、父とは絶縁状態。
ある夜、永田町駅の地下鉄の階段を上ると、30年前(1964年)前の風景が広がっていた。そこで真次は、在りし日の兄を目撃する。更に、若かりし頃の父のことを知っていく。愛人であるみち子と共に、過去と現代を行き来しながら、家族の歴史を目撃する…。
映画化されたし、浅田次郎さんの初期の代表作でもあるので、知っている方も多いと思いますが、私は初めて読みました。
地下鉄がきっかけになったり、夢に見たりして、自分の知らなかった父のことを知っていく、そこには知りたくなかった悲しい過去の話もあります。過去はひとつの時代ではなく、戦後の闇市や、戦争中、更にその前まで、順番通りではなく、意志とは別に急にトリップしてしまいます。東京の地下鉄を歩きながら、想像が膨らんでできたような不思議な話でした。

夢幻花2016/12/10

夢幻花
「夢幻花」 東野 圭吾・著 PHP文芸文庫
花を愛でながら余生を送っていた老人・秋山周治が殺された。第一発見者の孫娘・梨乃は、祖父の庭から黄色い花の鉢植えが消えていたことに気がつく。この花のことがきっかけで知り合った大学院生・蒼太とと共に、真相解明に乗り出す…。
梨乃の家族や親戚、蒼太の家族や初恋の相手が意外な形で関わりがありました。殺された秋山に世話になったことがある刑事が、事件の謎を追い、別の事件を追う警視庁勤務の蒼太の兄もいて、濃い人間関係です。それがどう結び付くのか、過去の出来事とどんなつながりがあるのか、最後にわかって、さっぱりしました。
ドラマ化したら良さそうな作品でした。