デトロイト美術館の奇跡 ― 2022/12/21
「デトロイト美術館の奇跡」 原田 マハ・著 新潮文庫
ピカソやゴッホ、マティスにモネ、そしてセザンヌ。市美術館の珠玉のコレクションに、売却の危機が訪れた。市の財政破綻のためだった。守るべきは市民の生活か、それとも市民の誇りか。一人の老人の情熱と一歩が大きなうねりを生み、世界の色を変えてゆく……。アートを愛するすべての人へ贈る、実話を基に描かれた物語。
主な作品はセザンヌが妻を描いた絵です。アートとは無縁だった1人のアフリカン・アメリカンの男性。妻が好きだったデトロイト美術館へ一緒に通ううちに、この絵を好きになります。妻亡き後も、よく通っている一般の市民です。市の財政の為に、市の財産である価値ある絵を売るかもしれないと知り、心を痛めています。美術館のチーフ・キュレーターも、同じです。一度散在してしまった絵画をまた買い戻すことは難しいです。
この本は、写真も入っていて、短い話でした。登場人物も少ないです。主な人は2~3人です。その短い話の中に、アートとはどういうものかが、わかりやすく語られて、そうそうそうと共感しました。アートを難しく考える人もいますが、ただ自分が好きなものを見ているのです。有名だから良いものではなく、これが自分にはしっくりくるとか、これは嫌いと言うのがあります。好きな物をしょっちゅう見ていたら、親密な感じもするし、友達や家族のように思う人も出てくるかもしれません。人物の絵とは限りません。私の場合は好きな画家の絵が展覧会で1枚だけ日本にやってくるという場合でも、その絵が見たかったら鑑賞に行きます。その絵はどこにあるのかなぁと、探しながら、好きな人に会いに行くかのごとく、楽しめます。昔見た事がある絵は、久しぶりにその絵を見ることができたら、それはまるで旧友に会うがような気分です。この短い小説の中で、美術館へ行く事の楽しみ方を思い起こさせてくれました。デトロイト美術館展も、日本でもあったようですが、私は行っていませんが、この本を読んだら行けば良かったなと思いました。なかなかデトロイトまで行けないですしね。
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