塞王の楯 下2025/03/29



「塞王の楯 下」 今村 翔吾 集英社文庫
太閤秀吉が病没した。押し寄せる大乱の気配。源斎は、最後の仕事だと言い残し、伏見城へ。代わって穴太衆・飛田屋の頭となった匡介は、京極高次から大津城の石垣の改修を任される。立ちはだかるは、彦九郎率いる国友衆と最新の鉄砲。関ヶ原前夜の大津城を舞台に、宿命の対決が幕を開ける。
石の聲を聴き、天才的な石垣を作る匡介は、想像を超える方法で、石垣を作り、鉄砲や他の攻撃に対応していきます。相手の出方を予想していきますが、それはお互い様です。ついには大筒を繰り出し、大きな被害が出ます。最強の楯と矛の行き着く結末はと、ハラハラしました。終わり方も、良かったです。まるで映画の様でした。
大津城の京極高次は、「のぼうの城」の成田長親に、ちょっと似ているなぁと思いました。

塞王の楯 上2025/03/20



「塞王の楯 上」 今村 翔吾 集英社文庫
時は戦国。炎に包まれた一乗谷で、幼き匡介は家族を喪い、運命の師と出会う。石垣職人“穴太衆”の頂点に君臨する塞王・飛田源斎。彼のように鉄壁の石垣を目指し、石工として腕を磨く。一方、鉄砲職人を率いる若き鬼才・国友彦九郎は、匡介をライバル視。秀吉没後に、大乱の気配、対決の時が迫る。
戦国時代の歴史小説は、数多くあるけど、武将ではなく、職人集団にも、戦いがあったのか、そこに焦点を当てるというのが素晴らしいです。中心となるのは石垣を造る人たち、鉄壁の石垣があれば、戦が途絶えるのではと考える匡介、一方、誰もが恐れる鉄砲により戦なき世を目指す彦九郎。正に矛盾の語源となった矛と盾のぶつかり合いが、これから始まるのだなぁと、続きは下巻で見届けようと思いました。
作者の今村翔吾さんは、よくテレビにも出ている方ですが、小説を読むのは初めてです。とても読みやすくわかりやすいです。日本のお城を好きな人も多いと思いますが、石垣がどのように造られていて、いろいろな技法があって、戦に使われていたのかと、興味深いですし、魅力的な人物がたくさん出てきます。

紙屋ふじさき記念館 新しい場所2025/03/06



「紙屋ふじさき記念館 新しい場所」 ほしお さなえ 角川文庫
大学卒業後、晴れて藤崎産業に入社した百花は、記念館準備室に配属され、新記念館開館に向けたプロジェクトに携わることに。和紙の魅力を伝えるべく、同期の新入社員たちと奮闘する。そんな中、百花の亡き父の作品が復刊の動きが現れる。
やっと最終刊に辿り着きました。もう少し、恋愛の話もあるのかと思ったら、そうでもなく、課題を解決していくために、常に真面目な主人公でした。でも好きな事を仕事にできて、大変でも充実しているようです。
絶版になっていた父の本が、復刊するのも、そもそも百花が、紙屋ふじさき記念館でアルバイトをしなければ、ありえなかったと思います。百花のアイデアでグッズを作り、父の小説の文章を使ったことがきっかけになっています。家族も喜んでくれています。記念館再オープンで、みんながハッピーになる話でした。一成さんと何かと対立している従兄弟さんも、やけに簡単に解決したような気もしたけど、面白く最後まで読めました。

紙屋ふじさき記念館2025/02/28



「紙屋ふじさき記念館 結のアルバム」 ほしお さなえ 角川文庫
感染症の世界的大流行の影響で、記念館の閉館イベントは中止。百花もリモート環境下で卒論と就活に取り組むことになった。突如一変してしまった日常に戸惑いながらも、現実に精一杯向き合っていこうとする。藤崎産業の採用試験が始まり、「和紙」の意義とは何かを面接を通して、突きつけられる。館長の一成は、新記念館の再建のために動き出していた。
シリーズ第6弾。コロナ禍の話となって、この本は割と最近の出版だったのかと、知りました。息苦しかったこの時を思い出しました。今でも感染者はいるけど、不要不急の外出ができない、しにくい時、町から人がいなくなった状況とはかなり違います。主人公の百花と同じように、いつまでこの状況が続くのかわからない不安など、気持ちがわかります。大学4年なのに、授業は全てリモートになり、サークルに入って来た新入生は、実際には一度会えない。大学祭もなく、若い人たちは大変だったことでしょう。ちょっと息苦しさを感じた巻でしたが、健気に頑張る姿が見えました。

水底フェスタ2025/02/23



「水底フェスタ」 辻村 深月 文春文庫
湖畔の村に彼女が帰ってきた。東京に出て芸能界で成功した由貴美。ロックフェスの夜に彼女と出会った高校生・広海はその謎めいた魅力に囚われ、恋に落ちた。だが、彼女はこの村に復讐するために帰ってきたのだと言う。
年に一度開かれるロックフェス、音楽好きの広海は楽しみにしている。ごく普通の田舎の村と思っていたが、秘密があったそうです。
おどろおどろしいとは言わないけど、なんだか暗い話でした。信頼する村長である父も、広海の思っていた人とは違っていたり、嘘と真実が交錯する広海の見てきた世界が変わってしまう話でした。東京から転校して来た達哉は怖い人で、何をしても問題を握りつぶしてしまう実力者の息子です。なんだか、不穏な雰囲気が漂っていました。

菓子屋横丁月光荘 歌う家2025/02/17



「菓子屋横丁月光荘 歌う家」 ほしお さなえ ハルキ文庫
家の声が聞こえるー幼い頃から不思議な力を持つ大学院生の遠野守人。縁あって、川越は菓子屋横丁の一角に建つ築70年古民家で、住み込みの管理人をすることになった。その家から歌が聞こえてくる。
シリーズ第1作、家の声が聞こえると言っても、ホラーっほさはなく、その場所の過去の記憶を感じているようです。川越の街並みや名所も出てきて、面白かったです。主人公は、両親を早くに亡くし、祖母や祖父の家で育つが、大変だったこともあります。わりと大人しい人です。多くの人との出会いもあり、自分の過去にも向き合っていきます。住み始めた古民家だけではなく、川越には古い家がたくさんあって、他の家からも声が聞こえます。その事を周囲の人には秘密にしています。理解してもらうのが、難しい事だと思います。今後、どんな声を聞くのか、楽しみです。

紙屋ふじさき記念館 春霞の小箱2025/02/10



「紙屋ふじさき記念館 春霞の小箱」 ほしお さなえ 角川文庫
紙屋ふじさき記念館の閉館まであと半年と少し。夏休みのサークル遠足で、紙の産地・東秩父と小川町を訪れたり、正月の楮かしきに参加したりするうちに、百花は作家だった父が民藝運動に関心を持っていたと知る。記念館の閉館イベントやワークショップの準備に忙しい百花だが、予想外の事態が発生したする。
シリーズ5作目。大学のサークルのメンバーが増えて、先輩や新入生など、どんどん登場人物が出てくるので、覚えきれなくなっています。和紙に関係して、新しい出会いもあって、一時的にではなく、継続して関わってくるので、こちらも広がっていきます。紙屋ふじさき記念館の入っているビルが取り壊しが決まっていて、記念館が今後どうなるのかと、続きも気になります。百花は紙の事を勉強し、大学卒業後も、記念館や和紙に関する仕事を続けたいと強く思うようになっていきます。さて、どの様な展開になるのか、次が楽しみです。

推し、燃ゆ2025/02/07



「推し、燃ゆ」 宇佐見 りん 河出文庫
「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい」。高校生のあかりは、アイドル上野真幸を解釈することに心血を注ぎ、学校も家族もバイトもうまくいかない毎日をなんとか生きている。そんなある日、推しが炎上し……。
芥川賞受賞作。“推し”と言う言葉を皆が使うようになって、今では普通の日本語になっています。推しがいる事で毎日にハリができて、頑張る理由にもなっています。生活の中心が推しとなるような経験がないので、この主人公のような気持ちはわからないけど、いかにも現代を表す題材だと思うし、勉強になりました。でも、何もかもうまくいかないけど、推しのコンサートや、グッズを買うためには、アルバイトを頑張らないとならないし、推しは炎上するし、読んでいても、辛かったです。

赤と青とエスキース2025/01/30



「赤と青とエスキース」 青山 美智子 PHP文芸文庫
メルボルンに留学中の女子大生レイは、現地に住む日系人のブーと恋に落ちる。彼らはレイが日本戻る時までの「期間限定の恋人」としてつきあい始める。額縁工房に勤める空知は、仕事を淡々とこなす毎日に迷いを感じていた。そんな時「エスキース」と言うタイトルの絵に出会う。
1枚の絵画をめぐる、5つの物語。
一見、別々の話の様ですが、読み進むうちに、繋がりが見えてきました。更に、同じ作者の違う話とも繋がっている気もします。凝った構成でした。エスキースと言うのは絵のタイトルですが「下絵」と言う意味です。
とある若手画家の描いた絵「エスキース」が、どの話にも登場し、大切な意味がありました。思ったよりも長い月日がたっていたりしました。面白かったです。

紙屋ふじさき記念館 故郷の色 海の色2025/01/26



「紙屋ふじさき記念館 故郷の色 海の色」 ほしお さなえ 角川文庫
新入生オリエンテーションで大忙しだった小冊子研究会へ、ひとりの学生が訪ねてくる。百花が作った「物語ペーパー」を見たという。彼女と活版印刷の話で盛りあがり、研究会の新歓遠足で川越の印刷所の見学に行く事になる。一方、ふじさき記念館が入るビルの取り壊しが正式に決定し、存続が揺らぎ始める。
同じ作者の「活版印刷三日月堂」と話がリンクしていて、三日月堂でアルバイトしている天野さんが、百花と同じ大学に入ってきて、百花の所属する小冊子研究会にやってきたことがきっかけで、川越の三日月堂を訪ねる事になります。仕事も依頼するかもしれないと言っていました。天野さんも、これからも出てくるのかも。ふじさき記念館の仕事に関わる事で、工房見学に行ったり、サイトを作ったり、百花は記念館の為に、大忙しでした。アルバイトの域を超えているけど、本人がやる気に満ちていました。今回は藤崎さんのご両親も出てきました。百花は大学3年生になったので、今後は卒論や就活なども出てくるのでしょう。まだこれから、変化がありそうです。