本所おけら長屋一 ― 2026/01/14

「本所おけら長屋一」 畠山 健二 PHP文芸文庫
本所亀沢町にある「おけら長屋」は騒動の宝庫だ。大家の徳兵衛、米屋奉公人の万造、佐官の八五郎、後家のお染、ひと癖ある住人が入り乱れて、毎日がお祭り騒ぎ。そんなおけら長屋に、わけあり浪人の島田鉄斎がやってくる。貧しいくせにお節介、そそっかしいけど情に厚い。そんな庶民が織りなす江戸の暮らし。
おけら長屋は貧乏長屋で、店賃をためている店子がいっぱいです。大家の家とは別に部屋は12ほど。ひとり者もいれば家族で住んでいる者もいます。困った時は大家さんか、ご隠居の与兵衛に相談したり、本当に落語のような世界でした。浪人の島田鉄斎は、剣の腕も見事だし、長屋の皆にアドバイスもしてくれます。毎日のように何かしら事件が起きているようです。貧乏長屋の割にはお酒を飲んだり、吉原に繰り出そうなんて言ったりしているので、借金はあってもいろいろできています。大きな家族のような繋がりがあって、協力したり、助け合ったりしていて、近頃は失いつつある近所づきあいを感じました。
お葉の医心帖 であいの柚子の木 ― 2026/01/12

「お葉の医心帖 であいの柚子の木」 有馬 美季子 角川文庫
町医者・道庵の診療所を手伝う少女・お葉。お灸や鍼を学びながら、真摯に患者に対応していたお葉は、無理が祟って倒れてしまう。休養に気を遣う中で、怪我をした猫の手当てをきっかけに、若い医師・林二郎と知り合う。いつしか惹かれ合うかに思えたが、林二郎には秘密が……。
シリーズ第5弾。お葉も19才になり、お年頃。この時代ではとっくに嫁に行っている年齢かも。5巻目で急に出てきた若者に心惹かれるものの、なんだか釈然としない態度の林二郎。同じ医学を学んでいるし、更に心に傷を持つ者同士、話も合うようだけど、すんなりはいかない様子でした。
他に脚気の男性の話や、火事で火傷を負った少女など、いろいろな患者との出会いと治療がありました。脚気は昔は大変な病いだったのですよね。
面白かったですが、次回が気になる終わり方でした。
成瀬は都を駆け抜ける ― 2026/01/09

「成瀬は都を駆け抜ける」 宮島 未奈 新潮社
京大生になった成瀬。一世一代の恋に破れた同級生、達磨研究会なるサークル、簿記YouTuber。新たな仲間たちと出会い、次なる目標に向かって成瀬は京都の街をひた走る。一方、東京の大学に進学した、幼なじみで親友の島崎のもとには成瀬から突然ある知らせが……。
大学生になったが、地元の滋賀県のパトロールも欠かさない。びわ湖大津観光大使の仕事もあるし、簿記の勉強、文通、取材に応じたり、京都を極めると言ってあちこち足を運んでいます。常に忙しい状態ながら、人間関係が広がって行きます。成瀬に対して、変わった人だと初めは思っても、いつの間にか仲良くなっていってました。変わっているけど、こういう人だとわかってくると、みんなが味方になってくれます。成瀬は真っ直ぐで真面目な人だと思います。小さい頃からの様子もわかって良かったです。幼なじみの島崎だけは、ちょっと特別な繋がりがあるように感じます。
面白いのでで、ずっと読んでいたくなります。
イクサガミ 神 ― 2026/01/04

「イクサガミ 神」 今村 翔吾 講談社文庫
最終決戦。東京は瞬く間に地獄絵図に染まった。「蟲毒」参加者は別々の場所からスタートし、都心の一角で双葉は、愁二郎たち京八流の仇敵、幻刀斎に出くわしてしまった。一方の愁二郎は当代最強の剣士と相まみえることに。残り9人、生き残るのは誰か。
4巻目にして最終章、デスゲームのゴールが描かれています。予想とは違うのか、誰と誰が戦うのかと、ハラハラした展開が続きました。小説の中の文章でハッキリした形で描かれていない部分は、えーどうなったの?と、想像するのが難しいところもありました。映像化されているので、そちらを見たらわかりやすいのかもしれません。とにかく、面白く最後まで読めたのは良かったです。ブログに書くのは遅れましたが、2025年最後に読み終わった本でした。
2025年本ベスト10 ― 2026/01/02
イクサガミ 人 ― 2025/12/25

「イクサガミ 人」 今村 翔吾 講談社文庫
東海道を舞台にした「蟲毒」も、残り23人。人外の強さを誇る侍たちが島田宿に集結。「台湾の伝説」が現れ、乱戦は加速する。数多の強敵を薙ぎ倒し、ついに東京へ辿り着いた愁二郎と双葉の運命は……。
シリーズ第3弾。まだどうなるかわからない状態のまま、先に進む愁二郎たち。一言では言い表せない、多くの強敵が順番に現れて、休む暇なく話に引き込まれました。4巻目で一応完結するので、どのようにまとまっていくのか、楽しみです。いろいろな疑問、わかっていなかった事が、すべてスッキリと納得できるのか、完結編を読まないとわかりません。
イクサガミ 地 ― 2025/12/13

「イクサガミ 地」 今村 翔吾 講談社文庫
東京を目指し、共に旅路を行く少女・双葉が攫われた。追う愁二郎は「京八流」の奥義を持つ義兄弟と再会する。蟲毒に参加する兄弟たちの宿命が絡みあう。木札を奪い点数を集め東京を目指す、蟲毒の真実とは?
第2巻、わけもわからないまま、殺し合いをする競技に参加する事になったが、途中にはいろいろな出会いがありました。宿命の敵も現れます。愁二郎の過去や、共に戦う者たちの事情も次第にわかってきました。残っている参加者は、人並み外れた猛者たちばかり、今後が気になります。
レモンと殺人鬼 ― 2025/12/05

「レモンと殺人鬼」 くわがき あゆ 宝島社
10年前、洋食店を営んでいた父親が通り魔に殺されて以来、母親も失踪、それぞれ別の親戚に引き取られ、不遇な日々を送った小林姉妹。しかし、妹の妃奈が遺体で発見される。被害者であるはずの妃奈に、生前保険金殺人を行なっていたのではないかという疑惑がかけられる。妹の潔白を信じる姉の美桜は、その疑いを晴らそうとするが……。
話の展開が予想と違って、あまりにも怪しい人がたくさん出でくるわ、みんな狂っているというか、壊れた人ばかり。良い人かと思っていた人が、そうでなかったり、話の道筋もわかりにくくなっていました。表紙の女性は美しいけど、主人公は顔にコンプレックスがあり、人前でマスクを取らないようにしているし、おどおどしているタイプ。読んでいくと、原因があるのはわかります。共感する人もなく、応援したい人も出てきませんでした。つまらないわけではないですが、楽しく胸がすくところもなかったです。
草笛物語 ― 2025/12/02

「草笛物語」 葉室 麟 祥伝社文庫
羽根藩江戸屋敷に暮らす少年・赤座颯太は、両親が他界して帰国。伯父水上岳堂の親友で薬草園の番人の、檀野庄三郎に託される。国許では、藩の家督を巡り、世子鍋千代を推す中老と、御一門衆を推す一派が対立。やがて藩主となった鍋千代が国入りし、颯太は陰謀渦巻く城に出仕するが。
「蜩ノ記」の16年後を描く羽根藩シリーズ。
「蜩ノ記」は映画にもなっているので、知っている方も多いと思います。「蜩ノ記」を遺した戸田秋谷の死から16年、まるで弟子のようになった庄三郎は、秋谷の娘・薫と結婚して子どももいます。出世からは遠ざかっていますが、若い人たちに、教えることも多いです。颯太も教えを乞うています。秋谷の息子で薫の弟も、難しい立場です。藩の中の権力争いに巻き込まれたり、想いあっているのに、一緒になれない人たちがいました。皆が幸せに、穏やかに暮らせる未来があれば、まだ続きを知りたいです。このシリーズは全5巻ですが、3冊読みました。
いつでも母と ― 2025/11/26

「いつでも母と 自宅でママを看取るまで」山口 恵以子 小学館文庫
「食堂のおばちゃん」の著者の山口恵以子さんの体験を描いたエッセイ。母・絢子さんの認知症から、介護の話、自宅での看取り。のみならず、葬儀やお墓のことまで。知っておくと良いことがいっぱいありました。60年も同じ屋根の下で暮らし、とても気の合う仲良し親子だった事が伝わってきます。それゆえに別れは寂しいのですが、本当によくしてあげていると思いました。お母さんは幸せだっただろうなぁ。仕事をしながらの介護は大変だったことでしょう。訪問医は小説の中にも出てくるので、実在の人をモデルにしているのかなと知りました。とても勉強になる本でした。

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