看取り医 独庵2021/09/30


看取り医 独庵

「看取り医 独庵」 根津 潤太郎・著 小学館文庫
浅草諏訪町で開業する独庵こと壬生玄宗は江戸で評判の名医。診療所を切り盛りする女中のすず、代診の弟子・市蔵ともども忙しい。そんな独庵に妙な往診依頼が舞い込む。材木問屋の主・徳右衛門が、なにかに憑りつかれたように薪割りを始めたという。早速、探索役の絵師・久米吉に調べさせたところ、思いもよらぬ仇討ち話が浮かび上がってくる。
作者が医師なので、医学について説得力があります。
江戸で“はやり風邪”が流行して、死者が多く出ている話がありました。コレラやスペイン風邪、コロナウィルスのように、繰り返されていることがわかります。人と会わないようにして、流行を抑えることや、鼻や口を覆って対応するなど、今に通じる話でした。
医師の独庵は、医学に精通しているだけじゃなくて、武闘派でした。馬庭念流の遣い手となっていました。奥さんとは、うまくいっていないのはわかりましたが、中途半端な気もしました。他の商家の娘からも迫られていました。
独庵の手足となって働く、絵師の久米吉も良いキャラクターですが、どうして協力してくれるのかと思いました。お礼も払っている様子がないけど、勝手知ったる良いコンビになっているのも、これまでの経緯があるのか、あまり説明がなかったです。
独庵は、人を見る目が確かで、弟子や女中への指導や褒めているところもありました。良い上司という感じがしました。
とても面白かったです。