午後8時の訪問者2017/04/18

午後8時の訪問者
「午後8時の訪問者」 ヒューマントラストシネマ有楽町
若き女医ジェニー(アデル・エネル)。まもなく、大きな病院に迎えられる予定だ。今は知人医者の代わりに小さな診療所を診ている。病院から歓迎パーティーの連絡電話を受けているときに鳴ったドアベル。しかし、時間は午後8時過ぎ、診療時間はとっくに過ぎていた。応じようとする研修医をジェニーは止める。
翌日、警察がやってきて、診療所の近くで身元不明の少女の遺体が見つかったと聞く。午後8時過ぎにドアホンを押している姿が監視カメラに映っていた少女が、遺体となって発見されたのだった。ジェニーは罪悪感から少女の顔写真を携帯のカメラに残し、時間を見つけては少女の名前を聞いてまわる。
少女は誰か、事件か事故か、なぜジェニーはドアを開けなかったのか。
貧困者が多い地区で、社会問題をおりまぜつつ、人間心理を鋭くえぐる話でした。
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟監督作品は、今まで見たことはありませんでした。明るい題材ではないけど、夢中になって見ていました。ジェニーはとても一所懸命に患者と対応していて、時間外や往診など、忙しく働いていました。事件のことで、心境も変わっていったようです。
少女のことを聞きこみしていることで、危険な目に合うのではないか、味方になるような人もいないし、あまりに無防備なので心配してしまいます。診療所で2人きりになってしまうこともあるし、往診で呼び出されることもあるから。マンションの玄関でドアベルを押してオートロックをはじしてもらうシーンが多い映画だと思いました。
ジェニーはいつも同じチェック柄のフード付きコートを着ているのだけど、それがステキだなと思いました。でも、美しい人が着ているから良く見えてしまうだけかも。
ジェニーの後悔や葛藤、事件の真相など、静かな映画ではあるけど、引き込まれました。

★★★★☆ 4+

コメント

トラックバック

_ ここなつ映画レビュー - 2017/06/23 16:40

人が、人として高潔である、自身の人生と他人の人生に対して等しく誠実である、それは一体どういうことなのか?ということが真っ直ぐに心に届く作品。ダルデンヌ兄弟の監督作品である。いつも心に抜き難い棘を刺す作品を送り出す。ただ、その棘は近年柔らかい素材でできたものになっているような気がしている。救いの光が一筋差してくる、というか。もちろん、厳しい中にも優しい感触があるのは昔からなのであるが、それ以上に昨今では、登場人物と観客に救いの手を差し伸べてくれている。ジェニー(アデル・エネル)は町の診療所に勤める女医。この診療所は懇意にしていた老医師からその不在の最中に引き継いでいるものであった。じきに大...

_ 象のロケット - 2017/07/05 22:13

もうすぐ大病院へ移ることが決まっている若き女医ジェニー。 入院中の老医師の代理で小さな診療所を診ていた彼女は、午後8時過ぎのドアベルに答えようとした研修医ジュリアンを制止する。 もうとっくに診療時間は過ぎていたのだ。 ところが翌日、近くで身元不明の少女の遺体が発見される。 午後8時に診療所のドアホンを押す彼女の姿が、監視カメラに写っていたという。 ショックを受けたジェニーは、少女の身元を調べることに…。 ミステリー。 ≪あの時、ドアを開けていれば―。≫