時のかさなり2010/05/24

時のかさなり
「時のかさなり」(ナンシー・ヒューストン・著)を読みました。

「時のかさなり」は6歳の子どもを語り手とした小説です。
第1章 現代に生きるソルはカリフォルニアで、両親(ランダルとテッサ)と
暮らしている。過保護気味に育てられていて、自意識過剰である。
祖母のセイディは車椅子の生活ながら、講演活動で世界中を飛び回っている。
曾祖母のエラは世界的に有名な歌手で、娘であるセイディと、なぜか確執が
あるようだ。
第2章 ソルの父であるランダル6歳。母の研究のためにイスラエルに
引っ越すことになる。レバノン戦争の時代、アラブ人の少女に恋をする。
第3章 セイディ6歳、カナダで厳格な祖父母と生活している。
母は奔放な生活をしていて、時々しか会えない。セイディは母と暮らすことを
願っている。
第4章 エラ(クリスティーナ)ドイツ。時代はナチス統制下。
父は戦争に行っているものの、優しい祖父母と母、兄姉と共に幸せに暮らして
いる。歌が上手な女の子である。
そのクリスティーナは、ナチスの「生命の泉」計画に関係していることが、
だんだんわかってくる。

1つの家族の4世代にわたる話なんだけど、過去へ遡るということが、非常に
ユニーク。読み手は、まず大人である姿を知り、どういう子どもだったかを、
後から知ることになる。
だから、前のページを何度も見返してしまう。
どうしてこの時、このような言動をしたのかと、わかってくる。
いろいろと謎も出てきますが、さかのぼっていくたびに理解も深まっていく。

前作「天使の記憶」という本もそうでしたが、これは昔の話だからと通り過ぎ
ていってよいものではありません。
今の世界でも、安全でない国がたくさんあり、現在の日本にだって被害者が
いるのです。

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