橘花抄2016/02/25

橘花抄
「橘花抄(きっかしょう)」 葉室 麟・著 新潮文庫
両親を亡くした卯乃は、筑前黒田藩で権勢を振るう立花重根に引き取られた。
重根のことを尊敬できる優しい人と感じていたが、父の自害に重根が関与したと聞き、心の病からか失明してしまう。
重根の母の勧めもあって、海辺の家での生活を始め、農作業をしたり、香道を習ったり、家族のような結びつきができ、穏やかに過ごす。しかし、立花家に苦難が次々とふりかかる…。
「この君なくば」のように、女性が想いを秘めている恋愛模様もあるけれど、女性だけじゃなく、男の戦いもダイナミックです。藩政の渦に巻き込まれていく男たちと、家を守る戦いをする女性たち、卯乃も強い意志を持ち、たおやかだけど凛とした女性に変わっていきます。
和歌でさりげなく気持ちを伝えたり、香道にも、意味があって、昔から続く文化の謙虚でつつましいことが、素晴らしいです。直接的ではなく、気持ちを表すこと、それを理解するためにも知識が必要なんですね。日本人の良さとはこういうものではないかと思いました。
読み応えがあり、満足できる1冊です。

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