化け猫あんずちゃん2024/07/23



「化け猫あんずちゃん」 TOHOシネマズ日比谷
ある豪雨の日に、寺の住職に拾われた猫のあんずちゃん。奇妙な事に20年が過ぎても死ぬ事もなく、30年経った頃には人間の言葉を話すようになり、人間のように暮らす化け猫になっていた。37歳の現在は、マッサージ師のアルバイトをしている。ある日、疎遠になっていた住職の息子が、11歳の娘かりんを連れて寺に帰ってくる。かりんを預けて、またどこかへ行ってしまう息子。住職からかりんちゃんの世話を頼まれるあんずちゃんだった。 
猫のあんずちゃんの声が、森山未來さん。ゆるっとした雰囲気が素晴らしいです。あんずちゃんがかりんちゃんと初めて出会ったシーンが、すごく好き。かりんちゃんも、見た目も人間の言葉を話す猫に、びっくりはするものの、淡々と進んでいくのが、可笑しいです。お寺の名前が草成寺(そうせいじ)と言うのも良いな。かりんちゃんは、お母さんを亡くし、放蕩な父に振り回されている苦労人。人の同情を誘ったり、ピュアと言うより、あざとく立ち回ります。あんずちゃん以外にも、カエルや謎の生き物、妖怪みたいなのも出てきて、ユルいキャラクターたちが良いです。かりんちゃんの話を聞いて、ほだされちょったりして。話の筋では、疑問に残るところもあるけど、全体に流れる雰囲気が良かったです。あんずちゃんかわいいなぁ。

★★★★☆  4

ルックバック2024/07/05



「ルックバック」 TOHOシネマズ日本橋
学年新聞で4コマ漫画を連載している藤野(声:河合優実)は、周囲から褒められて自信たっぷり。ある日、不登校の京本(声:吉田美月喜)の4コマ漫画が掲載され、画力の高さに驚愕する。ひたすら絵を練習する藤野だったが、いつしかあきらめてしまう。
小学校卒業の日、教師に頼まれて京本に卒業証書を届けに行った藤野は、初めて京本に対面し、ずっと藤野のファンだったと告げられる。それをきっかけにやがて一緒に漫画を描く事になる。ひたむきに漫画を描いていく2人だったが、ある日、事件が起きる。
原作漫画を読んでいて、どういう風にアニメ化するのだろうと興味を持っていました。解釈が難しいところもあったから。映画ではわかりやすくなっていたように思います。もしもの世界もあったし、なんと言っても、キャラクターに息が吹き込まれて生き生きと動いています。藤野の気持ちの表現が秀逸です。自慢げにクラスメイトに対応していた様子や、京本と出会って、クールに対応しているのに、嬉しくて帰りにスキップしてしまうあたり。素晴らしい出会いと、夢が断ち切れてしまったやるせなさが、胸に迫ります。話がわかっているから、初めの方から、切ない気持ちになります。でも素晴らしい映画になっていて、大満足しました。上映時間は58分ですが、充実していました。

★★★★☆ 4+

ホールドオーバーズ置いてけぼりのホリデイ2024/06/29



「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」 TOHOシネマズシャンテ
1970年冬、ボストン近郊の全寮制バートン校。生徒たちは、クリスマスと新年を家族と過ごすため、家に帰るが、学校に留まらざる者もいた。生真面目で融通がきかない古代史教師ハナム(ポール・ジアマッティ)、反抗的な生徒アンガス(ドミニク・セッサ)、ベトナム戦争で息子を失った料理長のメアリー(タヴァイン・ジョイ・ランドルフ)。雪に閉ざされた学校で、反発しながらも、孤独な魂は寄り添っていく。
時代設定のせいもあり、映画も昔の雰囲気。立派な学校の建物と、雪景色が良かった。休暇に家に帰れない、傷付いているアンガスは、ちょっと問題児だけど、同情するところも多い。ストレスもたまっているだろうし、家族の問題も抱えている。母親が冷た過ぎるように感じた。まだ彼の人生はどうなっていくかも、わからない。いろいろな可能性がある。良い教師に出会って変わっていくかもしれない。どの役も、ピタリとハマっていた。そう簡単に話は進まないけど、ささやかだけど、忘れ難い冬の休暇になったと思う。クリスマスに観たら良さそうなのに、どうしてこの時期に公開したのかなと。クリスマスや新年を迎える時は、多くのアメリカ人は、家族や大切な人と過ごす大切なものと感じる。

★★★★☆ 4

関心領域2024/06/25



「関心領域」 TOHOシネマズ日本橋
1945年、アウシュビッツ収容所の所長ルドルフ・ヘス(クリスティアン・フリーデル)は、妻(サンドラ・ヒュラー)と5人の子ども達と、幸せに暮らしていた。ピクニックに行ったり、庭のプールで遊んだり、裕福な家庭の穏やかな生活。でもそこはアウシュビッツの隣り、建物からは煙が上がっていて、時おり叫び声も聞こえる。常に不穏な気配を感じる。恐ろしい話だった。多分、実話、モデルとなった人がいるから。幼い子ども達は、しょうがないけど、大人は状況はわかっているはず、自分だったら、どうなんだろうかと、突きつけられる。
奥さん役は「落下の解剖学」の人でしたが、他の人は知らない人ばかりでした。アウシュビッツの映画はいろいろあるけど、変わったアプローチで見せてくれた。この状況には驚いた。ずっと眉間にシワを寄せて観てしまったけど、観る事ができて良かった。音楽も怖かった。
アカデミー賞外国語映画賞や、カンヌ国際映画祭グランプリなど、たくさんの賞を受賞。

★★★★☆ 4

悪は存在しない2024/05/31



「悪は存在しない」 Bunkanuraル・シネマ渋谷宮下
自然豊かな高原、水を汲み、薪を割って、野生の鹿もいる。慎ましく暮らす村人たち。そんな彼らの住む近くにグランピング施設を作る計画が持ち上がる。コロナ禍に政府の補助金を受けて畑違いの芸能事務所が、始めようとする。森の環境や町の水源を汚しかねないずさんな計画に、住民たちは、反発する。
代々暮らしている巧は、小学生の娘と2人暮らし。巧の生活が中心に描かれる。無口で何を考えているのか、わからないところがありました。便利屋をやっているらしい。じっくりと長いシーンが多かったです。車に乗っている時の映像が、いつも後ろから見える道を撮っているのが、不思議でした。変わった映像でした。
話は、ラストに怒涛に展開していきます。それが、ちょっと難解でした。でも面白かったです。好みは分かれそうです。

★★★★☆ 4

青春18×2 君へと続く道2024/05/11



「青春18×2 君へと続く道」 TOHOシネマズ日本橋
始まりは18年前、カラオケ店のバイトするジミー(シュー・グァンハン)は、日本から来たバックパッカーのアミ(清原果耶)と出会う。一緒に働く事になった2人。アミに恋心を抱くジミー。2人乗りバイクで出かけたり、映画を観たり距離が縮まったように思えたが、アミは突然、帰国することに。意気消沈するジミーに対し、アミはある約束を提案する。
時は流れ36歳になったジミーは、人生に悩んでいた。初恋の記憶がよみがえり、日本へひとり旅に出る。
予告を観た段階で、想像つく内容だけど、それでも面白かったです。やっぱり高校生のジミーと落ち着いた大人になったジミーの演じ分けがすごいのです。シュー・グァンハンが良かったです。台湾のスター俳優らしいですが、18歳のシーンでは高校生にしか見えないです。淡い恋心を募らせていく様子が秀逸です。映画の宣伝で、来日したりインタビューを受けていたりしたけど、スーツ姿だと、また違って見えました。
旅とは何か、アミの旅と、ジミーが日本をめぐる旅と対比になっています。東京、鎌倉、長野、新潟、福島が出てきました。台湾での様子も、見どころが多いです。アミはイラストを描きながら旅をしているけど、絵も素敵。台湾でも人気のミスチルの音楽。昔、アジアでもヒットした岩井俊二監督の「ラブレター」。過去と現在が交錯する切ないラブストーリーでした。

★★★★☆ 4+

無名2024/05/09



「無名」 ヒューマントラスト有楽町
1941年上海。諜報員フー(トニー・レオン)、部下のイエ(ワン・イーボー)は相棒のワンと共に諜報活動に明け暮れていた。
第二次世界大戦下、上海で暗躍する中国共産党、中国国民党、日本軍スパイたちの攻防か描かれる。
カットバックというか、いろいろなシーンがモザイクの様に、映し出され、時系列が飛んでいるし、ミステリアスに話が進みます。一つ一つの映像の構図が凝っていて、オシャレな写真家の写真の様に見えました。芸術的な映画でした。バラバラに見えるシーンの謎や真実が明らかになると、俄然納得できました。複雑な構造で初めはわかりにくい気もしますが、とても面白かったです。主役の2人がカッコいいです。当時の上海の街や、ファッションも良かったです。日本人兵は、非道でした。
日本人もたくさん出てきて、知らない俳優さんばかりでしたけど、言葉からは中国の人が慣れない日本語を話している風ではなかったので、日本の方が多いと思います。日本語と中国語で会話して通じているのはちょっと不思議でした。
スパイ映画なので、終始スリリングでハラハラします。銃撃や身体を使ったアクションなど、緊張感がありました。出てくる女性たちも美しかったです。

★★★★☆ 4+

ソウルメイト2024/05/02



「ソウルメイト」 Stranger
公募展で大賞に選ばれた作品、ハウンによる高校生のミソがモチーフの写実的な絵画。ハウン(チョン・ソニ)とミソ(キム・ダミ)は、小学生からの大親友。対象的な性格、育った環境も違うが、大切な存在。しかし、ジヌ(ピョン・ウソク)との出会いが2人の運命を大きく変えていく。想い合いながらも、すれ違い、疎遠になってしまう。しかし、再会した2人。ハウンはミソにある秘密を残して姿を消してしまう。
無二の親友だった2人が、それぞれの道に進むが、激しくぶつかりながらも想い合っています。中国、香港の「ソウルメイト/七月と安生」を韓国でリメイクしたそうですが、オリジナルは観ていません。ミソは苦労人で明るく振る舞っているけど、繊細な心を持っています。テンションの高い青春時代から、大人の女性になっていく2人は違和感なく演じています。子役は別ですが、雰囲気が似ていました。それほどドロドロとはしてないけど、複雑な関係で、あんまり楽しくはないのです。でも魅入って観てしまいました。出てくる絵画もすごい上手でした。絡まり合ってどうしようもなく辛い状況に陥っていきます。それでも完全に離れることはなく、一番の理解者でもあるのでしょう。良かったです。ミソ役のキム・ダミが魅力的でした。

★★★★☆ 4+

瞳をとじて2024/04/29



「瞳をとじて」 Stranger
映画「別れのまなざし」の撮影中に主演俳優フリオ・アレナス(ホセ・コロナド)が失踪した。それから22年、当時の映画監督でありフリオの親友でもあったミゲル(マノロ・ソロ)は人気俳優の失踪事件の謎を追うTV番組からの出演依頼を受ける。取材に協力するうちに、フリオと過ごした青春時代や、自らの半生を追想する。そして番組終了後に、思わぬ情報が寄せられた。
作品が少ないビクトル・エリセ監督の31年ぶりの長編新作。「ミツバチのささやき」のアナ・トレントもフリオの娘役で出演しています。
映画の中の映画が、またシブいです。果たしてフリオはなぜ失踪したのか、ちょっと重苦しい雰囲気が続くのですが、ミステリアスな内容に引き込まれて行きます。海がきれいでした。ミゲルの犬も、そんなに出てこないけど、かわいい。もっと見たかったなぁ。映画通な人は映画を上映するシーンが映画の中にあるのが、良いですね。昔ながらの古い映画館で、フィルムの映写機が出てくると嬉しいです。

★★★★☆ 4

ソウルフルワールド2024/04/22



「ソウルフルワールド」 TOHOシネマズ日本橋 吹替版
ニューヨークでジャズミュージシャンを夢見ながら音楽教師をしているジョーは、ついに憧れのジャズクラブで演奏するチャンスを手にする。しかし、その直後にマンホールに落下してしまい、ソウル(魂)たちの世界に迷いこむ。そこには現世に生まれる前のソウルたちがいた。人間として生まれるのを拒み続けている22番と呼ばれるソウルの担当になったジョー。生きる目的を見つけられない22番と、夢をかなえるために元の世界に戻りたいジョー。正反対の2人の冒険が始まる。
死後の世界と言うか、まだその直前の所で、アレコレ足掻いていた結果、22番と出会って協力を頼む。今までは誰が担当しても、22番は頑なにソウルの世界にい続けたのに、思いがけないトラブルが起きます。ちょっと笑ってしまう事が次々と出てきました。笑えるけど、テーマは生きることの喜びとは何かと言うこと。心揺さぶられるというほどではないけど、ささやかな瞬間にも人生のきらめきがあるのではと思わせてくれました。22番のその後ももっと知りたかったです。ジャズの演奏はかっこ良かったです。

★★★★☆ 4