白鳥とコウモリ 下2026/05/04



「白鳥とコウモリ 下」 東野 圭吾 幻冬舎文庫
父の死に疑問を持つ美令と父の自供に納得できない和真。事件の蚊帳の外の2人は、捜査一課の五代の知恵を借り、調べ始める。過去と現在、東京と愛知、被害者と加害者を繋ぐまのは何か。ふたりは愛知に向かうが、たどり着いた真実とは……。
上巻では美令と和真は顔を合わせるくらいだったが、下巻では連絡を取り合うようになって、協力していきます。
果たして、真実を明かすことが良いことなのかどうかと、躊躇もあるのですが、やはり知りたいのです。もちろん読者もなぜ和真の父は自供したのか、それも時効を迎えた事件を告白するにいたった理由は何か。
結果は面白かったです。映像が思い浮かんでいきそうな小説でした。映画にしても楽しめるのではないかな。公開が楽しみです。

白鳥とコウモリ 上2026/04/29



「白鳥とコウモリ 上」 東野 圭吾  幻冬舎文庫
東京竹芝で善良な弁護士、白石健介の遺体が発見された。捜査上に浮かんだ倉木達郎は、30年以上前に愛知で起きた金融業者殺人事件と繋がりがある人物だった。そんな中、突然倉木が二つの事件の犯人と自供。事件は解決したと思えたが、加害者の息子・和真は、その内容に違和感を覚える。一方被害者の娘の美令も、加害者の語る事件のあらましに父らしくないと感じていた……。
1984年の事件は時効を迎えていたが、誠実な父親が2人の人を殺めたりするだろうか。和真は父の行動を調べ始める。
和真と同じように、読者にとっても、わからない事だらけです。父がもし嘘をついていたとしても、その目的が思いつきません。そこは東野圭吾の小説だから、最後には納得できる事情があるのだろうなぁと、勝手に期待が高まりつつ下巻に進みます。映画化するそうで、観に行きたくなります。事件を追う刑事、被害者の娘と加害者の息子の視点から描かれていきます。

本所おけら長屋四・五2026/04/27





「本所おけら長屋 四・五」 畠山 健二 PHP文芸文庫
本所七不思議のひとつ、おいてけ堀で河童の捜索を始めた万造と松吉が、巻き込まれた事件。左官の娘、お糸と文七の恋の行方は?
おけら長屋とライバル関係にあるだるま長屋が、度胸勝負をすることになり、本物の幽霊が現れる。
人の優しさとおせっかいが話をややこしくすることもあるけど、最後は何とか丸くおさまる連作時代小説。全話読切だけど、前の話と繋がりがあるので、その後どうなったのかもわかることがあります。お糸は文七のことが好きなのだが、お互いにハッキリしないで、モジモジとしています。恋敵がグイグイと文七に迫っているので、読んでいる方はヤキモキしました。
良かった話は、島田鉄斎と因縁のある女スリが、数年後に訪ねて来て相談を持ちかけるのだが、大きな捕物に繋がっていく話。ちょっと本格時代小説な感じがしました。あとは何かとお騒がせな住民たちの軽い話が中心です。幽霊までも和ませてしまう人たちでした。

ドゥリトル先生のブックカフェ2026/04/21



「ドゥリトル先生のブックカフェ」 賀十 つばさ 幻冬舎文庫
妻の様子がなんだかおかしい。毎週金曜日に仕事と偽って、近所のカフェに通っていることがわかる。常連客は不登校の小学生や、定年退職した男性など。カフェを探るうちに、自分もいつの間にか常連客に。ハーフのイケメン店主は美味しいコーヒーと焼きたてのスコーンと共に、本を処方してくれるのだが……。
ブックカフェにあるのは洋書ばかり、店内に入るとまるで外国に行ったような雰囲気。公園のわきにあって、めちゃくちゃリーズナブルなのに、それほど混んでいない。本で悩みを解決する話でした。
物書きの主人公は、妻の浮気を疑っているのだが、妻に直接問いただすことができず、ちょっとウジウジしてました。ここで紹介される本は、大人も楽しめるけど、子ども向けの本が中心です。スコーンが美味しそうでした。近所にあったら行ってみたい、ゆっくりくつろげそうなカフェでした。果たして妻の行動の真意は何か?と気になりながら、最後まで読みました。

本所おけら長屋三2026/04/13



「本所おけら長屋三」畠山 健二 PHP文芸文庫
魚屋の辰次が柄にもなく端唄を習っていると知った万造と松吉は……。晴れて父親になった久蔵が陥った窮地。大家・徳兵衛の知られざる過去に発し、父娘の複雑な情愛など。シリーズ第三弾。
これまでの話から、その後の事がわかる話もあるし、長屋の中で今までスポットが当たってなかった人の話などもあります。おけら長屋は大家を除くと12部屋あるので、まだまだこれから話が膨らんできそうです。よく見ると若い独り者の男性が多いです。恋をしたり失恋したりありそうです。

古本食堂2026/04/10



「古本食堂」 原田ひ香 ハルキ文庫
鷹島珊瑚は、両親を看取り北海道でのんびりと暮らしていた。そんな折り、東京の神保町で小さな古書店を営んでいた兄・滋郎が急逝し、店とビルを相続することになる。単身上京し、店をとりあえず再開することにした。珊瑚の親戚で国文科の大学院生の美希喜は、生前滋郎の元に通っていたことから、素人の珊瑚を手伝うことに。
神保町の美味しい食と、古書店をめぐる人々とのふれあい。本の魅力も伝える小説。
神保町によく行っているので、風景が目に浮かんで楽しかったです。本を紹介しつつ、珊瑚と美希喜の立場から順番に語られます。ちょっと変わった名前の2人だけど、名付けには滋郎が関わっていました。美希喜から見ると珊瑚は大叔母。珊瑚の甥っ子の娘が美希喜。年齢差があるけど、2人とも読書家で、良いコンビでした。引っ越してきて、初めて出会う人々が多いけど、お客さん、古書店の近所の人たちとの話だけでなく、珊瑚や滋郎の事もわかりました。更に本の紹介や神保町グルメが入れ込んであって、そんなに厚い本じゃないのに、充実した内容でした。食べ物屋さんや喫茶店は全部知っているかも。入った事ないお店もあるけど、行ってみたいと思っているお店が出てきました。続編もあるようなので、読んでみたいです。神保町を知らない人でも、神保町を知るには良い本だと思います。

本所おけら長屋ニ2026/04/06



「本所おけら長屋ニ」畠山 健二 PHP文芸文庫
お騒がせコンビ、万造と松吉に振り回される大家の徳兵衛。わけあり浪人、左官やおかみさん連中。貧乏長屋ながら、人情とお節介が炸裂する江戸っ子たち。今回の話は万造が連れてきた迷い子をめぐる話や、浪人の島田鉄斎が、辻斬りの犯人と疑われて捕まってしまい、鉄斎を信じる長屋の面々がそれぞれに、動いて無実の罪を晴そうとする。大きな家族のようにみんなで協力します。迷い子を連れて来ても、おかみさんたちがご飯や着替えなどを用意して、すぐに引き受けてくれるし、現代よりも親切だと思います。例えば捨て子があったら、捨てられた場所の人が育てる慣習があって、みんなで面倒をみるという時代だったそうです。今回は5、6歳の子どもの話だったけど、単なる迷子ではなく、わけありでした。
シリーズ2巻目となり、長屋の人々のキャラクターが1巻の時よりわかってきました。

エミリの小さな包丁2026/03/28



「エミリの小さな包丁」 森沢 明夫 角川文庫
恋人に騙され、仕事もお金も居場所さえ失った25歳のエミリ。15年ぶりに再会した祖父の家に逃げ込んだものの、田舎の海辺の暮らしに馴染めない。そんなエミリを救ったのは、無口な祖父の美味しい手料理。町の人たちの中にも知り合いができて、エミリの中に小さな変化が起こり始める。
とても良かったです。傷ついた主人公に、無駄な事は言わずに優しく寄り添ってくれる祖父、そして新鮮な魚を使った料理の数々。一緒に調理をしながら、距離が近づいていきます。文章も読みやすいし、良い言葉がいっぱいありました。癒しと再生の物語です。

笑辞苑2026/03/26



「笑辞苑」 ナイツ 塙 宣之 双葉社
お笑いに対し真摯に向き合うナイツの塙さんが、辞書形式で、芸人と切り離せないワードを語る。養成所、営業、同期、ネタ番組、解散など。
多くの芸人を解説しつつ、現代のお笑い事情が見えてくる。
とにかく、塙さんはお笑いが大好きなのだと言う事が伝わってきます。ネタをたくさん作り続けています。そんな中、野球や相撲も大好きで、ドラマもいろいろ見て、劇団まで作っています。ラジオパーソナリティや、漫才協会の会長もこなしています。なんといっても、漫才が面白いです。次々と新しいネタが出てきます。友達に借りた本ですが、私がお笑いに詳しいから、語られている芸人を知っているのではと言われましたが、知らない芸人もいっぱい出てきました。読みやすくて面白かったです。

一次元の挿し木2026/03/15



「一次元の挿し木」 松下 龍之介 宝島社文庫
ヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨。大学院で遺伝人類学を学ぶ悠がDNA鑑定にかけると、四年前に失踪した妹のものと一致する。不可解な鑑定結果を担当教授の石見崎に相談しようとした矢先、石見崎は何者かに殺害された。古人骨を発掘した調査員も襲われ、研究室から古人骨も盗まれた。
悠は、妹の生死と古人骨のDNAの真相を突き止めようとするのだが……。
二百年前の骨と、四年前から行方知れずになっている人とDNAが一致?と何やらわけがわからない始まりでした。妹がいなくなったのは何故か、疑問だらけでしたが、読み進めるといろいろわかってきました。ミステリーだけど、ハラハラするホラーっぽいところもあります。読みやすくて、すぐに読めましたが歪な話でした。「このミステリーがすごい!」の文庫グランプリで、この作者のデビュー作だそうです。
中心となる青年・悠は顔が整っているという事で、映像化したら、誰が演じたら良いかなぁと考えながら読みました。ちょうど良い人が思い浮かびませんでした。