国芳猫草紙 おひなとおこま2022/05/18


国芳猫草紙 おひなとおこま

「国芳猫草紙 おひなとおこま」 森川 楓子・著 宝塚文庫
人気浮世絵師・歌川国芳の一人娘とりが誘拐された。子守兼弟子のおひなはとり探しに奔走する最中、謎の薬師に薦められた薬を飲み、猫の言葉がわかるようになってしまう。国芳の愛猫おこまの活躍で、とりがある武家屋敷にさらわれたことを突き止めるが、その屋敷の奥方の首無し死体が見つかり、江戸中を騒がす大事件に…。“猫の網”からの情報を頼りに、一人と一匹が事件の真相に迫る。
実在の人物、歌川国芳、その家族、弟子たちの話を交えつつ、猫と話せるようになるというファンタジックな内容でした。国芳の子どもとりはまだ赤ちゃんで、とても大きな声で泣いてしまうそうです。それをあやすのが上手い主人公のおひなは、弟子ながら、女中のような働きをしています。絵は上達しないけど、どうしても国芳のもとで学びたいので、子守りでもおさんどんでもなんでもやります。おひなは鰹節屋のお嬢さんです。兄からは国芳のもとに行くのを反対されています。猫の情報網はすごくて、頼めばあっちこっちの情報が集まってきます。考え方は人間よりもドライなところがありました。拾って可愛がってもらった国芳のもとから、お金持ちの姫のところに行ってしまったり、そうは言っても元の飼い主も気になってはいました。ファンタジックな内容かと思えば、首を斬られて殺される事件が起きたり、ちょっと殺伐としたところもありました。マンガのような小説でした。国芳の人柄や、奥さんの感じなど、こういう人だったのだろうなと思いました。

ほいきた、トシヨリ生活2022/05/13


ほいきた、トシヨリ生活

「ほいきた、トシヨリ生活」 中野 翠・著 文春文庫
サンデー毎日でコラムを連載、週刊文春では映画評を連載する、粋なおひとりさまコラムストの中野翠さんが書く、老後を愉しく過ごすヒントがつまったエッセイです。
映画やファッション、長年の楽しみなど。イラストも入っていて、わかりやすかったです。興味を持った事に挑戦してみたりしています。
不思議なタコの人形、編みぐるみ?の表紙が何か、読んで知りました。力を抜いて楽しめる1冊です。
機械の事をメカと書いてるのが、何度か出てきて、そう言えば、私の先輩もよく言っていたなぁと思い出しました。メカに弱いとか、メカ音痴などと使います。新しいツールが苦手な女性が使うようなイメージです。

滔々と紅2022/05/11


滔々と紅

「滔々と紅(とうとうとべに)」 志坂 圭・著 ディスカヴァー文庫
天保8年、飢饉の村から9歳の少女、駒乃が人買いによって江戸吉原の大遊郭、扇屋へと口入れされる。駒乃は、吉原のしきたりに抗いながらも、人気花魁、艶粧(たおやぎ)へと成長する。忘れられぬ客との出会い、突如訪れる悲劇。苦界、吉原を生き抜いた女性の人生。
読みやすくて、面白かったです。吉原の話だと、苦しい事ばかりかと思いきや、語り口が明るいのです。もちろん辛い事も起きます。主人公が気概があるので、逆境にもめげないのです。嫌なことは嫌というから、いろいろ問題も起こします。主人公になつく利発な禿(かむろ)なつめとの話は、映像が浮かんできます。吉原のしくみもわかりやすく解説されていました。

麦湯の女の子 橋廻り同心・平七郎控92022/04/29



「麦湯の女 橋廻り同心・平七郎控9」 藤原 緋紗子・著 祥伝社文庫
本所で麦湯屋をやっている器量よしの娘は、奉行所が追っている浪人と関わりがある。見張っていた平七郎は、娘と楽しげに語らう吟味方与力の一色弥一郎を目撃する。情報の漏洩があったかもしれない。娘は自らを犠牲にしてまで浪人を救おうとするが……。
危険な人でも、好きになってしまったら、何もかも捨ててもかまわないと言う感じでした。
最後の話は、家族への反発から、道を踏み外した若者を正しい道を行くように、平七郎が骨を折るという話で良かったです。平七郎は単に事件を解決するだけでなく、人の事を思い、将来の事を考えてあげています。若いのにできた人だと思います。

きたきた捕物帖2022/04/27


きたきた捕物帖

「きたきた捕物帖」 宮部 みゆき・著 PHP文芸文庫
16歳の北一は、亡くなった岡っ引き・千吉親分の本業だった文庫(本や小間物を入れる箱)売りで生計を立てている。やがて自前の文庫を作り、売ることができる日を夢見て。ちょっと気弱で、岡っ引きとしてはまだ見習いの北一が、相棒となる喜多次と出逢い、親分のおかみさんなど、周りの人に助けられながら、事件や不思議なできごとを解き明かしていく物語。宮部みゆきの新シリーズ。
文庫売りと言うのは知らなかったです。天秤棒に文庫と言う紙の箱を載せて、売り歩きます。箱には季節の絵があしらわれていて、戯作本などを入れたりするものだそうです。亡くなった親分は、いい男で、仲裁上手、皆に慕われ頼りにされた人物だったらしいのですが、あっけなく亡くなってしまうのです。北一は頼りない感じだけど、これから成長していきそうです。相棒となりそうな喜多次は、まだ謎の人物、これからが楽しみです。

魔力の胎動2022/04/18



「魔力の胎動」 東野 圭吾・著 角川文庫
成績不振に苦しむスポーツ選手、息子が水難事故で植物状態になって苦しむ教師、同性愛への周囲の偏見で、恋人を失ってしまったと悩む音楽家。鍼灸師として、悩める人の相談を受ける工藤ナユタの前に物理現象を予測する不思議な少女円華(まどか)が現れる。話を聞いた円華の行動と助言により、彼らは光を取り戻していく。
「ラプラスの魔女」につながるストーリー。「ラプラスの魔女」より後に出版されていますが、過去の話でした。どちらから読むか自由ですが、「ラプラスの魔女」を読んでいるからわかると言う事もありました。特に最後の話は、登場人物が急に変わるように感じると思います。
短編形式で、円華が悩みを解決するのに一役買ってくれます。不思議な能力だけでなく、現象を調べに行って検証する事が多く、ナユタが毎度手伝わされます。いろいろな繋がりが明らかになって、面白かったです。

梅灯り 橋廻り同心・平七郎控82022/04/15



「梅灯り 橋廻り同心・平七郎控8」 藤原 緋沙子・著 祥伝社文庫
シリーズ第8弾。やっと半分くらいです。
「夢の中でおっかさんに会ったんだ」幼い頃、母親に捨てられた少年僧・珍念が橋廻り同心立花平七郎に嬉しそうに話した。夢で再現された母との最後の場所。梅の香が漂う橋の上だったと言う。二百数十ある橋を一つ一つ、梅の香をたよりに巡り歩く珍念。だが、折しも殺しが発生、珍念が行方知れずに……。
珍念は、前に他の話に出てきたみなしご少年。家に来ないかという話もあったのだけど、母との再会を夢見て、1人で托鉢などの施しを受けて、古寺で暮らしています。性格が良いのか、人に助けられることもあるけど、幼い少年が1人で生きていくのは、難しいです。いつもお腹を空かせているのだと思います。成長した姿でまた出てきたら良いなと思います。
他に喧嘩が原因で、お店の陶器を割ってしまった男が、平七郎たちも手伝って逃げた相手を探すと、思わぬ事件が明らかになると言う話など3編。橋回りの仕事の合間に、ボランティアで事件を追っている主人公たちです。

ラプラスの魔女2022/04/10



「ラプラスの魔女」 東野 圭吾・著 角川文庫
ある地方の温泉地で硫化水素中毒による死亡事故が発生した。地球化学の研究者・青江が警察の依頼で事故現場に赴くと若い女の姿があった。彼女はひとりの青年の行方を追っているようだった。2か月後、遠く離れた別の温泉地でも同じような中毒事故が起こる。ふたりの被害者に共通点はあるのか。調査のため青江が現地を訪れると、またも例の彼女がそこにいた。困惑する青江の前で、彼女は次々と不思議な“力”を発揮し始める。
映画にもなっているが、映画は観ていないのです。映像が思い浮かんでくるから、映画も面白いのだろうなと思いました。特に円華と言う若い女性が見せる不思議な現象に、興味ひかれます。天候が予測できるのは、良いように思えるのだが、これを読むと良い事ばかりではないのだろうと感じます。どんどん疑問が浮かんでくるけど、後半になるとミステリーが紐解かれていき、楽しく読めました。

蚊遣り火 橋廻り同心・平七郎控72022/04/05



「蚊遣り火 橋廻り同心・平七郎控7」 藤原 緋沙子・著  祥伝社文庫
シリーズ第7弾。
江戸の夏の風物詩―杉の青葉などをいぶして蚊を追い払う蚊遣り火。それを庭で焚く女の姿を、松幡橋の袂からじっと見つめる若い男がいた。前夜、橋向こうの小間物屋の主が殺された。若い男の不審な佇まいに平七郎は素性を洗う。やがてその男清吉と、蚊遣り火の女おちかの悲恋が明らかになると同時に、新たな疑惑が…。
想い合っていたのに、事情により別の男のもとへ嫁いだ娘、仕事を辞めてしまった男、思い通りにならない人生でも、修復できる場合もある。橋廻り同心の平七郎が協力しようと思うが、間に合わないかもしれないとヒヤヒヤとしました。その後はどうなったかをもっと詳しく知りたくなるような、余韻のある終わり方です。
蚊遣り火というのは、よもぎの葉、カヤの木、杉や松の青葉などを火にくべて、燻した煙で蚊を追い払うそうです。この時代は蚊取り線香がまだないですから、家を燻していたのです。
惹かれあっていても、別れを選ぶと言う話もありますが、一応事件は解決する話なので、読んでいても面白いです。

夢の浮き橋 橋廻り同心・平七郎控62022/03/27



「夢の浮き橋 橋廻り同心・平七郎控6」 藤原 緋沙子・著  祥伝社文庫
シリーズ第6弾。
「この世の中の、すべての人があの人をどう言おうと、私だけは信じてあげたいのです」組紐屋のお幸は盗賊の疑いをかけられた与七をそう言ってかばった。16年前、永代橋の崩落で両親を失い、心に深い傷を負ったお幸を癒したのが愛する与七だった。だが深まる疑惑に、橋廻り同心立花平七郎が心を鬼にする……。
短編ですが、今回は3作なせいか、ちょっと長いので、じっくりした深い内容でした。他の巻は4作が多かったです。1つ1つ良い話でした。この表紙の絵も素敵です。1作目の話で、故郷で見た螢の光景だと思います。一緒に江戸へ出て、結婚を誓ったはずだったのに、別の方向へ行ってしまった恋人たちの話でした。男も女も苦難の連続だったようで、なかなか人生はままならないです。