百物語 浪人左門あやかし指南2021/10/26


百物語

「百物語 浪人左門あやかし指南」 輪渡 颯介・著 講談社文庫
シリーズ第2弾。臆病なのが玉に瑕の甚十郎は、道場の兄弟子平松左門の薦めで商家和泉屋の怪談会(百物語)に出ることに。集まった男たちの話も怖いが、変化する瞬間を見た者は死ぬという掛け軸の女もまた怖い。案の定、百話目を語り終えた和泉屋は姿を眩まし、参加者の一人は怪死した。仕組まれた策謀なのか。
1作目は登場人物が多くて、混乱しましたが、それを乗り越えたので、誰が中心なのかがわかってきて、読みやすくなりました。剣は強いのに、怪談が大の苦手な甚十郎が、主人公の1人です。体格も良い立派な武士のようですが、怖い話に怯えているのが面白いです。怪談話を集めて、それを生活の糧にしている左門はその上をいく剣の達人で、甚十郎の師匠でもありますが、お酒を飲んでばかりです。でも、問題を解き明かすのは左門です。名探偵左門の話だと思うと、わかりやすくなってきます。怯える甚十郎を見て、楽しんでいるところもあります。
前作に続き、良い人だと思ったのに、実は違ったという人も出てきました。怪談話を聞きながら、おかしい点を左門が探ります。多くの人が順番に語る百物語の内容も面白いですし、それに関連づけて、他の事件も関わっているという構成でした。楽しく読めました。

掘割で笑う女 浪人左門あやかし指南2021/10/16


掘割で笑う女

「掘割で笑う女 浪人左門あやかし指南」 輪渡 颯介・著 講談社文庫
酒と怪談が好きな浪人の左門。剣の腕こそ強いが、怖い話が大の苦手な甚十郎。十年前、家老が闇討ちされた霧深い城下で「女の幽霊を見た者は死ぬ」という噂が。ふたたび家老闇討ちに巻き込まれた甚十郎は、城下の寺で女を見てしまう。怪談時代ミステリ。
登場人物は多いし、顔があまり想像できず、群像劇のように、どの人が中心なのか、初めはわからなかったです。タイトルについている左門は、本当にいつもお酒ばかり飲んでいました。どうやって酒代を手に入れているのか、だんだんわかってくるのですが、怪談を集めては、ちゃんと推理しているようでした。本当の幽霊か、誰かが仕組んだものか、左門は、剣の腕も立つようです。
作者の輪渡颯介はこの作品でメフィスト賞を受賞してデビューしたそうです。古道具屋皆塵堂シリーズが面白かったけど、それに比べるとちょっと読みづらかったです。でも、少しわかってきたので、このシリーズの続きは読みやすくなっていくのかもしれません。全4巻です。

駆ける百合 上絵師律の似面絵帖2021/10/08


駆ける百合 上絵師律の似面絵帖

「駆ける百合 上絵師律の似面絵帖」 知野 みさき・著 光文社文庫
シリーズ第6弾。涼太と祝言を挙げ、青陽堂の嫁としての新たな生活を迎えた律は、息抜きに出かけた先で、同じく嫁いだばかりの女たちと知り合う。悩みを打ち明け合える知己を得て心強く思う律だった。一方、池見屋で、律は義母の佐和もよく知る由里という女性に出会う。彼女は何やら心に憂いを抱えている様子……。
前作から、ずいぶん間があいてしまったので、思い出しながら読みました。
祝言を挙げようとした日に、事件が起き、先のばしとなっていたけど、やっと夫婦として暮らせるようになりました。まだ初々しい悩みなどがあります。駆ける百合というタイトルはどういうことかと思っていましたが、読んでみると納得できました。厳しめなお姑さんですが、理解しあって、ちょっと距離も縮まってきたように感じました。商家の嫁となっても、上絵師の仕事はさせてもらって、恵まれていると思います。

蟻の菜園 アントガーデン2021/10/03


蟻の菜園 アントガーデン

「蟻の菜園 アントガーデン」 柚月 裕子・著 角川文庫
車中練炭死亡事件、結婚詐欺容疑で43歳女逮捕、複数の男性殺害に関与の疑いがある。フリーライターの今林由美は、美貌に恵まれている容疑者が何故?興味を持ち、ツテを頼って調べ始める。容疑者・冬香には、アリバイがある。冬香の過去を追いかけて、北陸へ向かうと、30年前の事件にたどり着くが、証拠がなく暗礁に乗り上げてしまう……。
とても面白かったです。ずっと読みたくなります。事件を調べるフリーライター由美の設定が良いです。離婚歴がありライターになったが、仲の良い同期は、編集長になっています。格差が出てきているけど、それぞれに長所と短所があります。由美は持ち前の粘り強さで、新聞社の人に情報をもらい、協力しあっていきます。この新聞社の人も良いです。昔のバリバリの記者と言う感じで、ガッツがある由美だから、良い関係ができます。キャラクターがみんな立っているので、映画のようになっています。誰が演じたら良いかなと想像します。過去と現代が交錯し、構成も良かったです。何があったのかが、明らかになっていく過程は、読んでいるスピードもアップします。

看取り医 独庵2021/09/30


看取り医 独庵

「看取り医 独庵」 根津 潤太郎・著 小学館文庫
浅草諏訪町で開業する独庵こと壬生玄宗は江戸で評判の名医。診療所を切り盛りする女中のすず、代診の弟子・市蔵ともども忙しい。そんな独庵に妙な往診依頼が舞い込む。材木問屋の主・徳右衛門が、なにかに憑りつかれたように薪割りを始めたという。早速、探索役の絵師・久米吉に調べさせたところ、思いもよらぬ仇討ち話が浮かび上がってくる。
作者が医師なので、医学について説得力があります。
江戸で“はやり風邪”が流行して、死者が多く出ている話がありました。コレラやスペイン風邪、コロナウィルスのように、繰り返されていることがわかります。人と会わないようにして、流行を抑えることや、鼻や口を覆って対応するなど、今に通じる話でした。
医師の独庵は、医学に精通しているだけじゃなくて、武闘派でした。馬庭念流の遣い手となっていました。奥さんとは、うまくいっていないのはわかりましたが、中途半端な気もしました。他の商家の娘からも迫られていました。
独庵の手足となって働く、絵師の久米吉も良いキャラクターですが、どうして協力してくれるのかと思いました。お礼も払っている様子がないけど、勝手知ったる良いコンビになっているのも、これまでの経緯があるのか、あまり説明がなかったです。
独庵は、人を見る目が確かで、弟子や女中への指導や褒めているところもありました。良い上司という感じがしました。
とても面白かったです。

拝啓 彼方からあなたへ2021/09/24



「拝啓 彼方からあなたへ」 谷 瑞恵・著 集英社オレンジ文庫
「おたより庵」と言う手紙に関する雑貨屋を経営している詩穂。中学時代に親友から、自分が死んだらこの手紙を投函して欲しいと依頼されていた。やがて、親友の死を知った詩穂は、約束を守ろうとするが、手紙にまつわる事件に巻き込まれていく……。
学校帰りの女子高生が大半のお客さんだけど、ちょっと怖そうな男性の常連客もいます。古い町屋を改装したお店で、レターセットやペン等、手紙のための雑貨を売っている店、和風な雰囲気そうで良さそうです。手紙がたくさん出てきますし、詩穂の手紙愛が強いです。面と向かっては、話しづらい事も、手紙に書くと素直になれます。
手紙をめぐる事件や、詩穂の元カレ(威圧的な人です)、親友の死の真相など、いろいろ出てきて、ミステリーっぽくなっていました。結構、面白かったです。

猫の傀儡2021/09/22


猫の傀儡

「猫の傀儡(くぐつ)」 西條 奈加・著 光文社文庫
人を遣い、人を操り、猫のために働かせる。それが傀儡師だ。傀儡師となった野良猫・ミスジは、売れない狂言作者の阿次郎を操って、寄せられる悶着に対処していく。やがて一匹とひとりの前に、先代傀儡師失踪の真相が……。
始まりから、変わっていて、面白かったです。まず、二歳のオス猫のミスジが、傀儡師として、選ばれます。町に1匹の傀儡師がいて、先代の傀儡師猫が、姿を消して1ヶ月たったから、猫の頭領がミスジを選び、傀儡となる人間も指定します。その人には気が付かれないように、猫の為に、働かせるのです。時間に余裕があって、気の良い人じゃないと、動かすのも難しいです。猫に疑いがかかった事件の、疑いを晴らします。ミスジの腕前もすごいです。ミステリーを人間の阿次郎と猫で解決していく、連作短編小説です。一見、難しい漢字が入っていてとっつきにくいように見えるかもしれませんが、マンガみたいで楽しかったです。気に入りました。

満月珈琲店の星詠み2021/09/16


満月珈琲店の星詠み

「満月珈琲店の星詠み」 望月 麻衣・著(桜田 千尋・絵) 文春文庫
満月の夜にだけ現れる満月珈琲店では、猫のマスターと店員が、極上のスイーツやフードとドリンクで客をもてなす。スランプ中のシナリオ・ライター、不倫未遂のディレクター、恋するIT起業家…マスターは訪問客の星の動きを詠んで、悩める人々を導く……。
表紙の絵や本の中にも絵がきれいで、珈琲が好きだから、期待しました。
話はつまらないわけでもないけど、占星術の説明が長いので、ちょっと飽きました。占いにあまり興味がないです。登場人物の星の導きといっても、自分にあてはまるものでもないし、その説明が長い気がしました。出てくるスイーツは美味しそうでした。そのイラストもカラーで楽しめます。

うき世櫛2021/09/12


うき世櫛

「うき世櫛」 中島 要・著 双葉文庫
十五にして両親を失った結は、長屋で首を括ろうとしたところを元芸者の女髪結い・お夕に救われた。ほかに生きる道のない結は、自らの不器用さを恨みながら、お夕のもとで修業に励む。だが、贅沢を戒めるお上は、女髪結いの取り締まりを厳しくするばかり。
お夕を師匠として、髪結修行に励むが、一向に上達しない主人公のお結。見ず知らずだった結を引き受け、弟子にして一緒に暮らすお夕は、太っ腹だと思います。貧乏長屋で暮らし、生活も大変です。お結は感謝しているけど、割とずけずけと師匠に意見したり、言い返したりしているように感じました。お結なりに、師匠のお夕の事を思って言うのですが、まだ子どもっぽいところがあります。
時は天保の改革の時代、贅沢を禁じられ、質素に暮らさないとならず、娯楽も制限され、国民はお上を恨めしく思っています。あれ、そういえば、コロナウィルスの蔓延で、今私たちも、いろいろな事を我慢していますね。逮捕されたりはしないけど、国の政策が悪いんじゃないかとか、経済が回っていかないから、景気も良くならないとか考えながら、多くのストレスを抱えています。時代は違うけど、現在に通じるところがあるなぁと思いながら、読みました。その後のお結は、どんな女性に成長したのかなと知りたかったです。

ひょうたん2021/09/07


ひょうたん

「ひょうたん」 宇江佐 真理・著 光文社文庫
本書五間堀にある古道具屋・鳳来堂。借金をこさえ店を潰しそうになった音松と、将来を誓った手代に捨てられたお鈴の二人が、縁あって所帯をもち、立て直した古道具屋だった。ある日、橋から身を投げようとした男を音松が拾ってきた。親方に盾突いて、男は店を飛び出してきたようなのだが…(表題作)。
江戸人情もの。鳳来堂に何かと持ち込まれる物が、話のモチーフになっています。主人公は、ごく普通のご夫婦、むしろ頼りない旦那さん。しっかり者の奥さんと言う感じかな。儲け度外しで、気前が良すぎるところもあります。音松は、幼なじみの仲間とずっと仲が良くて、しょっちゅう音松の家に集まっては、お鈴の心づくしの料理を肴にお酒を楽しみます。古道具屋の店の前で、七輪を出して、煮たり焼いたり、道ゆく人の胃袋をくすぐっています。仲間の1人は料理茶屋を営んでいて、旬の食べ物を持って来てくれたりします。その友人さえも、お鈴の料理を楽しみにやって来ます。何と言う事もない家庭料理ですが、とっても美味しそうです。稲荷寿司、味噌田楽、昆布だしで煮た大根、味噌おにぎりなどなど、さりげなく出てくるけど、料理を振る舞う事で、お鈴の人柄が現れています。話も良かったけど、料理が印象に残る本でした。