永遠のとなり2011/04/21

永遠のとなり
「永遠のとなり」白石一文・著 文春文庫
東京の損害保険会社で働いていた精一郎は、部下の自殺をきっかけにうつ病を患う。会社を辞め、妻子と別れて、故郷の博多へ帰ってきた。だいぶ回復してきているが、仕事はせずに、今後のことを考えている。
9年前に肺がんを発病して博多へ戻っていた親友の敦は、精一郎のことを何かと気にかけてくれる。敦はとても優しい人で、孤独な老人や女性、難病に苦しむ人などに手をさしのべている。その性格ゆえか、病気の恐怖からか、結婚と離婚を何度かしている。日常の事や、悩みや相談を語りながら、お互い助け合っている。
この本の特徴はとてもリアルだということ。こんなことがあったら、うつ病になってしまうと思える。シビアな環境で生きることの大変さがヒシヒシと伝わってくる。生まれ故郷に戻って、休養して再生していく様子も、納得できる。幼なじみで親友の敦は、とても個性的。病気や不幸があって、とても苦労しているのだが、のんびりとした語り口で方言がとても気持ち良く響く。
小説の雰囲気はどうしても暗くなってしまうのだが、不条理に満ちた人生の中でどのように生きていったら良いのかを主人公と一緒に考え、応援してしまう。
この本からの一言
「まあ、いつも言うとることやけど、そげん焦る必要はなかけんね」