初霜 橋廻り同心・平七郎控132022/06/29



「初霜 橋廻り同心・平七郎控13」 藤原 緋紗子・著 祥伝社文庫
幼い頃、父母の喧嘩が元で顔に火傷を負ったお花。奉公先でも揉め事に巻き込まれて、今は御茶問屋「山城屋」の女中をしていた。絶品の御茶を淹れるお花だが、店の我儘な娘に振り回されている。娘が逢い引き相手に祝言の事実を告げるや、逆上され、もめごとになる。男は旗本家次男の札付きだった。立花平七郎は忠告するも、お花は主夫婦に恩を感じている……。
シリーズを続けて読んでいると、主人公の説明が何度も出てきます。もうわかっているのにと思ってしまいます。平七郎が、花形の仕事から、橋廻りになったいきさつや、相棒の秀太のことも説明されています。話は短編で完結するから、どの本を読んでも、それだけ読めばわかるようになっているのでしょう。確かにシリーズを全部読まなくても楽しめます。
今回の話は、奉公先の主人夫婦に恩を感じて、一生懸命に仕えている女中なのに、そちらでは、そんなに思っていないようでした。わがまま娘を身を挺して守っても、感謝もしてくれてないように思いました。実の母とも行き違いがあるけど、最後は幸せになってくれると良いと思いました。

蜜蜂と遠雷 上2022/06/23



「蜜蜂と遠雷 上」 恩田 陸・著 幻冬舎文庫
近年その覇者が音楽界の寵児となる芳ヶ江国際ピアノコンクール。自宅に楽器を持たない少年・風間塵16歳。かつて天才少女としてデビューしながら突然の母の死以来、弾けなくなった栄伝亜夜20歳。楽器店勤務のサラリーマン・高島明石28歳。完璧な技術と音楽性の優勝候補マサル19歳。天才たちによる、競争という名の自らとの闘い。その火蓋が切られた。
映画にもなっていましたが、映画は観ていません。配役は知っているから、読んでいても、想像してしまいます。ピアノコンクールの話なので、ピアノ曲を文章で表現しているのが素晴らしいです。知らない音楽も、文章から生き生きと浮かび上がってきます。私は、クラシックには詳しくないので、作曲家の名前は知っていても、曲はどういうものかわかりません。それでも楽しめました。まだ、上巻ですが、これからどうなるのか楽しみです。主要な人物以外でも、たくさんの人が関わりあって、深みのある話になっています。

錦繍2022/06/16


錦繍

「錦繍(きんしゅう)」 宮本 輝・著 新潮文庫
「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」と始まり、運命的な事件ゆえ愛し合いながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る……。
離婚した男女の往復書簡で語られる小説です。私はあまり本を何度も読み返したりしないのですが、この本は読むのは2回目です。ずいぶん前に読んで、感動したのは覚えているのですが、内容がどういうものだったかは、霧の中でした。再度読んでみても、あまり思い出さず、新鮮な気持ちで読めました。
お互いが、孤独や後悔の中で生きてきたのだけど、手紙を往復することによって、過去が埋められたり、書くことで自分の本当の気持ちが整理できたことで、次の一歩を踏み出していくような、再生の物語でした。何と言っても印象的だったのは、冒頭の文のリズムの良いことです。映像も思い浮かんできます。そこだけはなんとなく覚えていました。冒頭だけではなく、全体的にリズムの良い文章でした。読み手にとっては、離婚した男女に、何があったのか、気持ちがどうだったのかと明らかになっていき、面白かったです。老夫婦がオーナーの素敵な喫茶店も出てきました。

七十歳死亡法案、可決2022/06/12


七十歳死亡法案、可決

七十歳死亡法案、可決」 垣谷 美雨・著 幻冬文庫
高齢者が国民の三割を超え、破綻寸前の日本政府は「七十歳死亡法案」を強行採決。施行まで二年、宝田東洋子は喜びを噛み締めていた。義母の介護に追われた十五年間。能天気な夫、引きこもりの息子、無関心な娘とみな勝手ばかり。やっとお義母さんが死んでくれる。東洋子の心に黒いさざ波が立ち始めて…。
衝撃的な法案です。なんだか怖い話なのかと思ったらそうでもなく、終始おかしさもありました。でも、考えさせられます。もちろんこんな法案は反対ですけど、昔は姥捨て山なんてこともありました。
中心となるのは50代主婦、嫁姑問題や、引きこもりというかニートの息子、いろいろと問題を抱えています。主人公の気持ちになると、大変なのに、誰も味方がいない状態です。身勝手な夫の考え方や、夫の姉妹たちもなんでしょう。ムカつきます。娘も冷たい気もするけど、気持ちは一番理解できるかもしれません。
義母は、我儘すぎでした。八方ふさがりになって、やっと行動を起こすのです。法案のせいで、いろいろな考えが噴出してきます。面白くて、どんどん読めました。

冬の野 橋廻り同心・平七郎控122022/06/10



「冬の野 橋廻り同心・平七郎控12」 藤原 緋紗子・著 祥伝社文庫
竜閑橋袂で、美人女将の愛嬌と絶品茶漬で繁盛する『紅葉屋』の娘が攫われた。橋の管理を頼みに来ていた橋廻り立花平七郎は探索に乗り出す。凄腕の定町廻りだった平七郎は、閑職と揶揄されつつも数々の難事件を解決、町人の信頼を得ていたのだ。やがて拐かし犯が房次郎という浪人を捜していたと発覚すると、女将は狼狽する。房次郎は大和の国で別れた夫だった……。
このシリーズは、橋にちなんだ話なので、よく袂(たもと)と言う言葉が出てきます。なかなか自分で書いたりする事がないと思いました。この本は2編の話が入っていて、ちょっと長いせいか、登場人物が多かったです。通勤電車で読む事が多いのですが、乗り換えもあるし、途切れ途切れに読んでいると、誰が誰だっけ?と混乱します。もちろん中心人物はわかるけど、悪役たちも多いのです。内容が複雑に絡んでいるから、最終的に決着がつくと、すっきりと良い話でした。

象の旅2022/06/03


象の旅

「象の旅」 ジョゼ・サラマーゴ・著 書肆侃侃房
1551年、ポルトガル国王はオーストリア大公の婚儀への祝いとして象を贈ることを決める。象遣いのスブッロは、任務を受け象のソロモンの肩に乗ってリスボンを出発する。嵐の地中海を渡り、冬のアルプスを越え、行く先々で出会う人々に驚きを与えながら、彼らはウィーンまでひたすら歩く。
時おり作家自身も顔をのぞかせて語られる、波乱万丈で壮大な旅。
実際にあったことをベースに肉付けされて小説になっています。ちょっと読みにくくて、読むのに時間がかかってしましました。中心となるのは象遣いのスッブロですが、いろいろな人の観点からも描かれていますし、作者の気持ちや、特注的な説明も入っていました。
ジョゼ・サラマーゴは初めて読みましたが、ノーベル文学賞を受賞している人なんですね。
この時代に、象をポルトガルから、オーストリアへ運ぶって、今とは違って大変でしょうね。船に乗ることもあるけど、ほとんどが徒歩でした。途中は雪が降る山も越えているようです。象は寒いところは平気なんでしょうか。
そもそもは、インドからポルトガルへ行ったのだと思いますが、それもすごい距離です。当時は象を見たこともない人々ばかり。象のソロモンは語りませんが、割りとおだやかで、素直に従ってくれているところもあります。スッブロも、ただ従うしかないのですが、それほど従順という感じではなく、意見を持っていました。
訳者のあとがきに、作者のドキュメンタリー映画が面白いとあったので、観てみたいと思いました。「ジェゼとピラール」という映画です。そして、私が面白いと思った映画「複製された男」は、原作がこのジョゼ・サラマーゴだったのかと知りました。不思議な話でした。

風草の道 橋廻り同心・平七郎控112022/05/24



「風草の道 橋廻り同心・平七郎控11」 藤原 緋紗子・著 祥伝社文庫
久里浜沖で流人船が難破した。助かったのは、流人の鹿之助ひとり。しかし3日後、彼は姿をくらます。北町奉行の榊原は鹿之助が親友の倅でないかと危惧し、立花平七郎に極秘の探索を依頼する。探索の中で、徐々に明らかになる鹿之助の閉ざされた過去。養子としての葛藤、凄絶な恋、そして流人になった理由、数奇な運命に翻弄されたいた……。
シリーズ第11弾。今回は2つの話だったので、じっくり長めの話でした。気持ちを確かめ合った平七郎たち、それを知らない捕物を手伝っている辰吉が、平七郎にそっけない態度を取るのがおかしかったです。しかし、恋愛はあまり進展はなかったですが、事件は無事に解決しました。でも、2つの話とも、もっと早く対処する方法があったら良かったのにと思いました。全てがハッピーとはいかないものです。

残り鷺 橋廻り同心・平七郎控102022/05/21



「残り鷺 橋廻り同心・平七郎控10」 藤原 緋紗子・著 祥伝社文庫
シリーズ第10弾。江戸市中に現れた、宮家のご落胤を名乗る一行。大奥とつなぎを取ってやると称して商家から金を巻き上げ、奉行所を悩ませていた。平七郎が探索に乗り出した直後、真福寺橋に二人の女の亡骸が流れ着き、一人はご落胤一行と共にいた女と判明する。女が持っていた伊勢神宮のお守りに込められた哀しき想いとは……。
読んだ後に本の表紙を見ると、あのシーンなのかとわかります。この本には黒い犬が出てきました。そういえば、同じ作者の隅田川御用帳シリーズにも、頭の良い犬が出てきました。
平七郎の恋路も、やっと進展がありました。お互いに想いあっているのは読者にも、おそらく周囲の人にも、わかっているのに、身分の違いや仕事の事なので、気持ちを確かめることができないのです。奥ゆかし過ぎます。確かに、彼女の仕事のことをどうするのか、気になりますので、続きを読み進めたいです。
すべてがうまくおさまる結果が最終的には待っているのだと思います。

国芳猫草紙 おひなとおこま2022/05/18


国芳猫草紙 おひなとおこま

「国芳猫草紙 おひなとおこま」 森川 楓子・著 宝塚文庫
人気浮世絵師・歌川国芳の一人娘とりが誘拐された。子守兼弟子のおひなはとり探しに奔走する最中、謎の薬師に薦められた薬を飲み、猫の言葉がわかるようになってしまう。国芳の愛猫おこまの活躍で、とりがある武家屋敷にさらわれたことを突き止めるが、その屋敷の奥方の首無し死体が見つかり、江戸中を騒がす大事件に…。“猫の網”からの情報を頼りに、一人と一匹が事件の真相に迫る。
実在の人物、歌川国芳、その家族、弟子たちの話を交えつつ、猫と話せるようになるというファンタジックな内容でした。国芳の子どもとりはまだ赤ちゃんで、とても大きな声で泣いてしまうそうです。それをあやすのが上手い主人公のおひなは、弟子ながら、女中のような働きをしています。絵は上達しないけど、どうしても国芳のもとで学びたいので、子守りでもおさんどんでもなんでもやります。おひなは鰹節屋のお嬢さんです。兄からは国芳のもとに行くのを反対されています。猫の情報網はすごくて、頼めばあっちこっちの情報が集まってきます。考え方は人間よりもドライなところがありました。拾って可愛がってもらった国芳のもとから、お金持ちの姫のところに行ってしまったり、そうは言っても元の飼い主も気になってはいました。ファンタジックな内容かと思えば、首を斬られて殺される事件が起きたり、ちょっと殺伐としたところもありました。マンガのような小説でした。国芳の人柄や、奥さんの感じなど、こういう人だったのだろうなと思いました。

ほいきた、トシヨリ生活2022/05/13


ほいきた、トシヨリ生活

「ほいきた、トシヨリ生活」 中野 翠・著 文春文庫
サンデー毎日でコラムを連載、週刊文春では映画評を連載する、粋なおひとりさまコラムストの中野翠さんが書く、老後を愉しく過ごすヒントがつまったエッセイです。
映画やファッション、長年の楽しみなど。イラストも入っていて、わかりやすかったです。興味を持った事に挑戦してみたりしています。
不思議なタコの人形、編みぐるみ?の表紙が何か、読んで知りました。力を抜いて楽しめる1冊です。
機械の事をメカと書いてるのが、何度か出てきて、そう言えば、私の先輩もよく言っていたなぁと思い出しました。メカに弱いとか、メカ音痴などと使います。新しいツールが苦手な女性が使うようなイメージです。