鹿鳴の声 隅田川御用帳122021/08/12



「鹿鳴の声 隅田川御用帳12」 藤原 緋沙子・著 光文社文庫
「見張られています。命の不安さえ感じております。たすけて」骨董商・伯耆堂の内儀のおみわが書いたと思われる文を見た、縁切り御用を務める橘屋のお登勢は、用心棒の塙十四郎と寺役人の近藤金五に、事の真相を探って欲しいと頼んだ。すると、おみわは十日ほど前に柳橋の茶屋で起きた押し込み強盗事件の直後から、軟禁されていることが判明した。お登勢と十四郎は策を練り、おみわを助け出したが……。
橘屋の番頭・藤七の昔のことがわかる話が出てきました。藤七は優秀な男で、十四郎の手足となって、調べや張り込み等をしてくれます。でも、本人の事があまり語られず、どういう人なのかと思っていました。過去の恋愛があり、橘屋へきた経緯がわかりました。年齢はおそらく十四郎よりも年上で、それほど年寄りでもなさそうという印象です。30代くらいだと思います。元は商家の手代だった藤七ですが、結婚していないのには理由があったようです。

雪見船 隅田川御用帳112021/08/07



「雪見船 隅田川御用帳11」 藤原 緋沙子・著 光文社文庫
駆け込み寺「慶光寺」に突然、侵入者が現れた。御用宿「橘屋」の用心棒・塙十四郎がすぐに捕まえ、事情を聞いたところ、新助という桧物師で、幼馴染みのおひさを救ってほしいと訴えた。おひさは献残屋「赤松屋」へ嫁いでいたが、十四郎が探ると、夫の治兵衛には怪しい過去が……。
幼馴染みが困っているので、離縁させて欲しいと言ってきたケース、時々本人以外が言ってくる事があります。事情により、本人は言い出せない場合は、状況を調べたりします。たくさんの人が駆け込むので、本人が言ってこない場合は難しいですが、人情派のお登勢たちは、いつも忙しいです。
余韻の残る終わり方が多いので、もっとその先はどうなったのか、知りたい時もあります。問題が解決して、きっとその後は幸せになったのだろうなと思わせます。
この本の中では、地震にあって、記憶を失っている女性が、駆け込むのがありました。記憶がないので、元は夫がいたかもしれないけど、調べてもわからなかったので、助けていただいて商家の主と縁づきました。しかし、もしかして子どもがいたかもしれないとなると、なんとか思い出したいです。そして何者かに命を狙われている可能性も出てきました。この事件の解決後、お登勢の心情が吐露されているところがあるけど、十四郎との仲は、ゆっくりと近づいているようです。

風蘭 隅田川御用帳102021/08/03



「風蘭 隅田川御用帳10」 藤原 緋沙子・著 光文社文庫
駆け込み寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」に、寺を出て普通の暮らしに戻ったはずのお妙が火付けの罪で捕縛されたという報せが入る。お妙を救えなかったことに傷付き悩む橘屋の女主人お登勢は……。お登勢をはじめ橘屋の用心棒・塙十四郎や慶光寺の主、寺役人にまで未曾有の危機が次々に訪れる。
今回も、濡れ衣を着せられそうになる話がありました。慶光寺で修行中の女性が一時的に外に出た時に巻き込まれます。犬のごん太は、人の言葉もわかっているようで、どっちに行ったか聞いたら、人を探すのを手伝っていました。警察犬よりもすごいかも。最後の一遍は、今度はお登勢が、焼きもちを焼いてしまいそうな話で、思い悩んでいました。美しい未亡人を、十四郎が助けていて、その子どもをまるで父親のように面倒をみているのです。早いところ、ハッキリしてほしいというのが、お登勢の気持ちでしょうね。

紅椿 隅田川御用帳92021/07/30



「紅椿 隅田川御用帳9」 藤原 緋沙子・著 光文社文庫
ならず者の弥蔵が遺体で見つかった。「慶光寺」御用宿「橘屋」の十四郎は、遺体の傍らに落ちていた鈴が以前、駆け込みをした女の付き添いで来たお春の物ではないかと危惧する。そして、お春は町方の手に落ち、岡っ引は罪を認めないお春に迫る。そこには我が子への母の想いが。
岡っ引きでも、ずいぶん強引な人もいるなぁと思った一遍。親子愛を感じる話で、良かったです。殺しを疑われて、真犯人を探し出すというテーマは多いです。今回は、お登勢の亡くなった旦那さんの事がわかる話がありました。結婚前や結婚してからのお登勢が、どんな感じだったのか。旦那さんを思う姿に、十四郎は、嫉妬ではないですが、複雑な気持ちになるようです。

夏の霧 隅田川御用帳82021/07/26



「夏の霧 隅田川御用帳8」 藤原 緋沙子・著 光文社文庫
縁切り寺「慶光寺」御用宿「橘屋」に、小料理屋「鶴亀屋」の仲居お勝が駆け込んで来た。亭主の段七は牡丹作りの名人なのだが、売れた牡丹の苗木のお金をどこかに持って行ってしまっているのだという。橘屋の用心棒・塙十四郎はその亭主のことを調べ出すのだが……。
まず問題が提示されて、橘屋の番頭と一緒に調べるといろいろわかってきて、最後に真剣勝負があるという流れになっています。剣での戦いは、小説ならば文章を読んで想像するしかないのだけど、相手の剣をはらったり、躱したり、スピード感があります。相手のどこを切ったか、殺したのか、怪我させたのか。だいたいは御用の者が来て召し捕られていきます。そして、一件落着。わかっていても面白いです。

春雷 隅田川御用帳72021/07/22



「春雷 隅田川御用帳7」 藤原 緋沙子・著 光文社文庫
縁切り寺「慶光寺」御用宿「橘屋」の雇われ人、塙十四郎は、捨てられていた赤子を拾い、慣れぬ子育てに悪戦苦闘していた。赤子の母親は、慶光寺に駆け込んできたお初とわかりひと安心。だが、お初が駆け込みに及んだ夫婦不和の背後に不審な座頭金の組織がちらつく。
ハッピーエンドとそうでないものがあります。なんでもハッピーに終わらせてほしいものですが、人生のままならなさというのもテーマでもあるのでしょう。
特に武士というのは、堅苦しいところもあり、誇りを守らないとならないことが絶対です。この本の中には、奥さんの不義を疑われて、実際は何もなかったにも関わらず、敵を討たなければならないという状況になってしまいます。そうしないと、お家の継続が難しいというのです。武士の矜持というのは、カッコ良い部分もあるけれど、なんとも融通の利かないものです。

冬桜 隅田川御用帳62021/07/17



「冬桜 隅田川御用帳6」 藤原 緋沙子・著 光文社文庫
縁切り寺「慶光寺」に来て半月のおきよの亭主竹次郎が亡くなった。亭主の死で離縁が叶ったおきよだが、寺を出た彼女に悪い噂が立つ。慶光寺御用宿「橘屋」の塙十四郎は、おきよの周辺を調べ出したが、おきよの知られざる過去を知る。そして、待っていたのはやるせない結末だった……。
1冊の中に4つの短編で連作になっています。1話づつ終わるものの、哀しい内容も多いです。離縁がしたくて駆け込む話だけではなく、偶然知り合った人が困っているのを助けたりします。今回の本では、駆け込みに来たのが男の人というのもありました。駆け込みは、女性しか対応しないのですが、背景には事情があるし、無実の罪をきせられたりしました。この時代は、恐ろしくて、拷問で自白させられて、死罪になることが度々あります。今よりも無実を立証するのが難しいです。

今日のハチミツ、あしたの私2021/07/14



「今日のハチミツ、あしたの私」 寺地 はるな・著 ハルキ文庫
蜂蜜をもうひと匙足せば、あなたの明日は今日より良くなる。 「明日なんて来なければいい」と思っていた中学生のころ、 碧は見知らぬ女の人からその言葉と小さな蜂蜜の瓶をもらった。それから16年、30歳になった碧は恋人の故郷で蜂蜜園の手伝いを始めることに。 頼りない恋人の安西、養蜂家の黒江とその娘の朝花、スナックのママをしているあざみさん。さまざまな人と出会い、自分の居場所を探していく。
主人公・碧の恋人の安西がどうしても好きになれず、それに我慢している碧にもイライラするのですが、全体の話としては、とっても良かったです。碧が来たことで、広がる人の輪。お互いに助けあっています。養蜂のことも細かく書かれています。あれこれとアイディアを出して、少しずつ向上していく様子、良い友達がいる事、碧も変わっていきます。もっと続きが知りたくなります。

おぼろ舟 隅田川御用帳52021/07/10



「おぼろ舟 隅田川御用帳5」 藤原 緋沙子・著 光文社文庫
小伝馬町から囚人たちが切放しになった。囚人たちに恐れをなし、町から人気は消えた。そんななか、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の雇われ人である塙十四郎は、殴られていた男を救い出す。その男の口から出てきた話は、にわかには信じられない話だった。
江戸の町は火事が多く、その時に囚人が一時的に外に出されて、三日後にまた戻ってくるようにいいつけるらしいです。戻って来ない場合は死罪になるそうです。数日、家族と過ごしてくるという人もいるようです。
今回の話は、長い間、船で遭難していて、奇跡的に帰ってきた男の人が中心です。なんと10年ぶり、なぜかそういう人が、すぐに戻れず、囚人の扱いなのです。この話は良かったです。
他に十四郎の幼なじみ、金吾もやっと祝言をあげることができました。

宵しぐれ 隅田川御用帳42021/07/07



「宵しぐれ 隅田川御用帳4」 藤原 緋沙子・著 光文社文庫
縁切り寺の慶光寺に、白粉屋「紅屋」のおかみ、お新がやってきた。夫の先妻の幽霊が出ることに悩んでの駆け込みだったが、不審を抱いた慶光寺御用宿「橘屋」の雇われ人・塙十四郎が紅屋を調べると、浮き上がってきた真相とは……。
慶光寺の寺役人で十四郎の幼馴染みでもある近藤金五には、ついに恋の予感がありました。この巻に出てきた頭が良い犬がいます。名をごん太と言います。捕物に一躍かったけど、今後も出てきそうです。