絡繰り心中 ― 2025/07/14

「絡繰り心中」 永井 紗耶子 小学館文庫
旗本の息子だが、ゆえあって町に暮らし、歌舞伎森田座の笛方見習いをしている遠山金四郎は、早朝の吉原近くの田んぼで花魁の骸を見つけた。前夜に狂歌師大田南畝のお供をした折り、隣にいた雛菊だ。南畝のごり押しで、花魁殺しの下手人探しをする羽目に。雛菊にも縁のあった歌川国貞とともに真相を探り始めると、雛菊は座敷に上がるたび、男へ心中を持ちかけていたと知る。果たして、そんな雛菊がなぜひとりで殺されていたのか……。
遠山金四郎といえば、あの遠山の金さん?その若い頃の話になっています。歌川国貞も、まだ駆け出しの頃で、師匠の豊国のもとで修行中でした。金四郎が武士とは知らない周囲の人は、遠慮なく声をかけたり、叱り飛ばしたりしています。町の生活を知っているのが、後に強みになるのかもしれません。大田南畝も武士でありながら、狂歌師として有名で、戯作や随筆など多くの作品を残した人でしたね。大河ドラマ「べらぼう」では桐谷健太さんが演じています。話は下手人探しの江戸のミステリーでした。目撃した人物を説明する人がいると浮世絵師の国貞がささっと絵を描いてくれて、似顔絵を仕上げてくれます。それを他の人に見せても、人物がわかるという、ちょうど良い相棒でした。でも浮世絵を見てると、そんなに人が限定されるほど、わかるかなぁと思ってしまいますが。金四郎はちょっと複雑な家庭環境なので、一時的に庶民の生活を体験しているのでしょう。後に奉行として活躍する時に、役立つことでしょう。当時の吉原や歌舞伎を楽しむ人々など、江戸の暮らしがのぞけて面白かったです。
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