ロボット・ドリームズ2024/11/12



「ロボット・ドリームズ」 ヒューマントラストシネマ渋谷
ニューヨーク、マンハッタンで暮らす孤独なドッグは、通販番組を見て、友達ロボットを注文する。組み立てて、一緒に過ごすうちに、ロボットとの友情が深まってく。しかし、夏の終わり、海水浴を楽しんだ帰りにロボットは動けなくなり、ビーチも翌夏まで閉鎖されてしまう。離れ離れになったドッグとロボットは、再会を心待ちにしながら、それぞれの時を過ごす。やがてまた巡りくる夏。ふたりを待ち受ける結末とは。
スペイン、フランスの合作ですが、舞台はニューヨーク。擬人化された動物たちの世界。ドッグもロボットもゆるめの絵だけど、街並みはとてもきれいに描き込まれています。音楽はうるさいくらいに賑やかですが、セリフはありません。どちらかというと、大人向けのアニメでした。出会いと別れを繰り返し、人は幸せを探していきます。とても良い話だったのですが、ちょっと眠くなってしまって、前半はあまりわからなかったです。余裕があればもう一度観たいです。ニューヨークの名所をめぐり、この映画に一番近いのは「パストライブス」のような気がします。アースウインド&ファイアーの歌セプテンバーが、とても良いです。妄想というか幻覚が多くて、あれこれは現実ではないのかと、何度も思いました。だからロボットドリームズなのかな。ロボットがドッグを慕う心を持っていて、かけがえのない友情が芽生えているのが、伝わってきました。

★★★★☆ 4

動物界2024/11/10



「動物界」 ヒューマントラストシネマ有楽町
近未来。原因不明の突然変異により、人間の身体が徐々に動物化していく奇病が蔓延していた。さまざまな種類の“新生物”は凶暴性を持つため施設で隔離されており、フランソワ(ロマン・デュリス)の妻ラナもそのひとりだった。ある日、移送中の事故で、隔離していた彼らが野に放たれてしまう。行方不明のラナを捜すフランソワと16歳の息子エミール(ポール・キルシェ)だったが、エミールの身体き変化が起こり始める。
ロマン・デュリスが好きなので観に行ってみました。息子役の子も可愛かったです。 
感想は少しネタバレになります。あまり知りたくない方は観てから読んでくださいね。
分野でいうとSFスリラーでしょうか、フランスらしからぬ異色の映画でした。ハリウッド映画だったら、B級っぽくなりそうだけど、なんだかオシャレになっていました。新生物が1人1人違くて、かっこよかったからかな。どんな姿なのかと、興味深いです。少しずつ変化するようで、完全に変わってしまうと、人間の気持ちも忘れてしまいそう。伝染するわけではないけど、なんか吸血鬼やゾンビものに通じるところがあります。
妻が変わってしまっても、変わらずに愛し続ける事はできるのか、息子はどうなるのか、原因は?などあんまり突き詰めてないで、やり過ぎない感じがフランス映画らしくて良かったかも。

★★★★☆ 4

ゴンドラ2024/11/08



「ゴンドラ」 シネマカリテ
緑あふれる山の谷間をつなぐ、古い2つゴンドラ(ロープウェイ)。2人の女性乗務員が勤務し、行ったり来たり。1人はまだ新人のよう。すれ違う度に、何かを見せたり、音楽を演奏したり、はたまた停車地でチェスを順番に指したりする。次第に2人は親しくなっていく……。
ほとんどセリフがない映画でした。音楽は賑やかです。舞台はジョージア(旧グルジア)。セリフがないけど、表情で伝わる事が多いので、想像するのが楽しかったです。2人の女性が、工夫を凝らして、相手をびっくりさせたり、楽しませようとしていきます。クスッと笑ってしまう事も多かったです。映像がきれいですし、主役の2人が超美人。子どもたちも可愛かったです。ゴンドラとその近くだけで、こんなに豊かな話ができるのですね。とても気に入りました。

★★★★☆ 4+

八犬伝2024/11/05



「八犬伝」 TOHOシネマズ上野
人気戯作者の滝沢馬琴(役所広司)は、友人である絵師・葛飾北斎(内野聖陽)に、構想中の新作に着いて語り始める。8つの珠を持つ「八犬士」が運命に導かれるように集結し、里見家にかけられた呪いと戦う物語だった。その内容に引き込まれた北斎は続きを聴くために、たびたび馬琴のもとを訪れる。即席で描く絵が、馬琴にもイマジネーションを与える。28年かけて、クライマックスを迎えようとしたとき、馬琴の視力が失われつつあり、絶望的な状況に陥る。その時、息子の妻・お路(黒木華)から、意外な申し出を受ける。
「八犬伝」は、滝沢馬琴作だけど、この映画は山田風太郎が原作。滝沢馬琴の事と彼の作った話が、交互に語られていきます。
「八犬伝」は日本の古いファンタジーの世界です。まさにヒーローもので、当時の読者が楽しみに待っていたのだろうなと思います。28年もかかっているとは知らなかったです。壮大な物語なんでしょうが、ダイジェスト版のようにまとめてありました。出演者は豪華でした。水上恒司は、ヒゲやカツラで、わかりませんでした。板垣李光人は、女性より美しかったです。馬琴の妻は寺島しのぶ、息子は磯村勇斗などなど。多くのキャストが、織りなす壮大な物語でした。当時としては、滝沢馬琴は長寿だったと思うので、白内障かなと思いました。この時代は治す方法はなかった事でしょう。同じく長寿の葛飾北斎は大丈夫だったのだろうか。

★★★★☆ 4

花嫁はどこへ?2024/11/03



「花嫁はどこへ?」 新宿ピカデリー
2001年、とあるインドの村。プールとジャヤ、結婚式を終えた2人の花嫁は、同じ満員電車で花婿の家に向かっていた。同じ赤いベールで顔が隠れていたことから、プールの夫ディーパクが、勘違いしてジャヤを連れ帰ってしまう。置き去りとなってしまったプールは内気で従順、ディーパクに頼りきりだったので、彼の住所もわからない。駅にいた人に助けられ、売店の女主人を手伝うことに。ジャヤの方はディーパクの家で泊めてもらい、謎の行動をしている。
インドは広いから、住所がわからないと、一生そのままになってしまうのではと、心配しました。手を差し伸べてくれる人がいなければ、浮浪者になってしまうかも。駅員さんに相談しても、実家に連絡するのは、拒否。インドならではの価値観がうかがえます。勉強したり、社会進出する女性は、インドでは、少ないし、女性の大変さが伝わってきます。プールも、新しい価値観を手に入れたのではないでしょうか。ジャヤの真意はなかなか明かされず、どうしてディーパクに付いてきたのか、何をしようとしているのか、ミステリアスでした。知的で美しい女性でした。プールは可愛らしいタイプ、とくに声が可憐でした。駅の売店の女主人は、厳しくあたられるけど、本当は情に熱くて、数日一緒にいただけなのに、家族のようでした。ディーパクの友達たちも、一生懸命協力し、多くの人に助けられて、良い結末に向かって行ったと思います。インド映画に多いミュージカル調なところはなくて、約2時間でした。面白かったです。

★★★★☆ 4+

最後の乗客2024/10/30



「最後の乗客」 ユーロスペース
タクシードライバーの間で、深夜、人気のない歩道に立ちずさむ若い女性の噂話が囁かれていた。いつも通りタクシーのハンドルを握る遠藤(冨家ノリマサ)は、閑散とした通りで、1人の女性を乗せる。走り出すや、路上に飛び出して来たのは小さな女の子と母親。どうしても乗せて欲しいと言い、同乗させると、行き先は両者とも「浜町」。奇妙な客と秘密を乗せたタクシーは、目的地へ向かうが……。
上映時間55分の短い映画です。でも、そんなに短くも感じなかったです。あの日に、どうなったのか、詳しい事は語られないけど、多くの人の平穏な日常が断ち切られてしまったのだと思います。特にエンドロールは、それを感じさせます。どの様な仕掛けがあるのか、ミスリードしやすい作りで、そういう事だったのかと、驚きがありました。タクシードライバー役は「侍タイムスリッパー」にも出ていた冨家ノリマサさん、ご活躍ですね。

★★★★☆ 4

2度目のはなればなれ2024/10/22



「2度目のはなればなれ」 TOHOシネマズシャンテ
2014年夏。イギリス・ブライトンの老人ホームで、寄り添って暮らす老夫婦バーナード(マイケル・ケイン)とレネ(グレンダ・ジャクソン)。バーナードは、ある目的のため、ひとりで老人ホームを抜け出し、フランスのノルマンディーへ旅立つ。ホームのスタッフは、警察にも連絡し、大騒ぎになるが。妻のレネは、彼を信じて待っている。
名優マイケル・ケインの引退作と言うので、観に行ってきました。仲の良い夫婦で微笑ましいです。奥さんはきっぷが良いです。心配するスタッフを横目に、マイペースです。でも身体の調子は思わしくない様子です。バーナードは、Dデイの70年式典に行こうとしています。ノルマンディー上陸作戦の場にいたのです。戦争や奥さんと出会った頃の若い時代と、現代が交錯して、進んでいきました。もっとほのぼのした映画かと思ったら、意外と反戦を訴える映画かも。70年たっても、去来する想い、忘れられない戦争体験を描いています。そして実話がベースになっていました。海の風景がきれいでした。でも主人公が思うのは、70年前のあの日のことなんですね。フランスへ向かうロードムービーになっていました。暗いわけではなく、ウィットに富んだご夫婦で、楽しさもありました。

★★★★☆ 4

BISHU 世界でいちばん優しい服2024/10/18



「BISHU 世界でいちばん優しい服」TOHOシネマズ日比谷
高校生の史織(服部樹咲)は目覚まし時計代わりの軽快な機織りの音で目を覚ます。配膳の配置や、歩き出しの順番など、こだわりが強く、苦手な事が多い。ある日、史織の描いたデザイン画を、親友の真理子が校内のデザインコンクールにエントリーする。更に、真理子の提案で、一宮市のファッションショーに出品することに。ファッションの仕事で、挫折して帰郷してきた姉は、複雑な思いを抱きながら、協力をするようになる。父(吉田栄作)は史織が傷つくのを心配して、大反対するが、史織は服作りや、ファッションショーへの挑戦を願うようになる。
タイトルは織物の生産地である尾州からきているようです。発達障害と思える主人公は、毎日のルーチンが大切で、急な変更に対応するのが、難しいです。それでも、家業である機織りや、地元の名産を守りたいと強い思いがあります。周囲の人に助けられながらも、挑戦する事で成長していきます。良い話で、ちょっと泣けたりもしたのですが、なんか少女マンガみたいなストーリーでした。期待を裏切らないように話は進みました。細やかさは、物足りないような気もしました。有名デザイナーの行動が唐突だったり、親友との諍いの後の仲直りが、おざなりで無理やり話が進んで行ったように思えました。

★★★☆☆ 3+

画家ボナール ピエールとマルト2024/10/15



「画家ボナール ピエールとマルト」 シネスイッチ銀座
20世紀絵画の巨匠のひとり、ナビ派の代表格であるピエール・ボナール(ヴァンサン・マケーニュ)。生涯の伴侶となるマルト(セシル・ドゥ・フランス)が絵のモデルとなった事で出会う。ピエールはマルトの事を愛しているのにもかかわらず、他の女性にも、心惹かれてしまう。破天荒な愛を営みながら、創作活動を続けていく。
女性から見たら、身勝手なピエール・ボナールです。心のままに正直なんでしょうけど、愛憎劇という感じがしました。明るくて優しい色合いの絵を描くボナールが、こういう人だったのかと、驚きました。マルトも、愛人も嫉妬に苦しむし、もうちょっと上手くやったら良いのにとも、思ってしまう。それでもセーヌ川が流れている田舎の家に住み、そこでの生活が楽しそうです。まさに絵画のように美しい風景です。モネやエドゥアール・ヴィヤールなども出てきて関係性が伺えます。ピエール・ボナールは日本美術に影響を受けていた事は有名で、ジャポナールと呼ばれていたというし、描かれている女性の多くはマルトなのかと思うと改めて絵を見てみたいと思いました。
後でボナールの写真を調べたら、ヴァンサン・マケーニュかなり似させています。もっと情けない風采の役が多いから、いつもと違う感じでした。

★★★★☆ 4

憐れみの3章2024/10/14



「憐れみの3章」 TOHOシネマズ錦糸町オリナス
愛と支配をめぐる3つの物語。選択肢を奪われながらも、自分の人生を取り戻そうと粉糖する男。海難事故から生還した妻が、姿は妻だが、別人になっていると疑う警察官。特別な人間を探すため、夫や娘とも離れて生活する女性。
どの話も、奇想天外で、不穏な話でした。どれもゾワゾワ、ザワザワするような話。特に2つ目の話が怖かったです。2時間44分と長めなんだけど、不可思議な世界に引き込まれていって、あまり長く感じませんでした。説明はないから、いったいどういう事だろうと考えながら、見終わっても、わからないままが多いです。3つの話には、繰り返し同じ人が出てきます。でも役柄は違っているので、ヘンな感じがします。なんだか劇団の公演の様に、今回は別の役を演じているんだと、違う公演を続けて見ている気分です。職業も違うし、性格も違います。私には難解ではありましたが、面白かったです。でも思い返して見ると、ヨルゴス・ランティモス監督作品は、「ロブスター」が好きだったかも。

★★★★☆ 4