スモールワールズ2023/01/13


スモールワールズ

「スモールワールズ」 一穂 ミチ・著 講談社
ままならない現実を抱えて生きる人たちの6つの物語。夫婦円満を装う主婦と、家庭に恵まれない少年。「秘密」を抱えて出戻ってきた姉とふたたび暮らす高校生の弟。初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族。人知れず手紙を交わしつづける男と女。向き合うことができなかった父と子。大切なことを言えないまま別れてしまった先輩と後輩。誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集。
辛く厳しい話が多かったですが、並々ならぬ才能を感じました。いかにも大きな文学賞をとるのではないかと、思えます。すでに受賞しているものもあります。
主人公は若く美しい女性、男子高校生、中年男性などと様々で、他の人との関係がそれぞれに独特でした。始まりはどれもミステリアスで、この人はどういう人なのだろうと思いながらも、気がつけば、なんとも深い世界に連れていかれています。単純に楽しい話はないので、生きることの難しさを感じます。とても面白かったです。
手紙が好きなので、手紙文だけで語られる話「花うた」が、印象的でした。普通なら文通しないだろう関係の男女が、手紙を通じて心通わせていきます。