その男(ニ)2023/09/22



「その男(ニ)」 池波 正太郎・著 文春文庫
京に上った虎之助は、師の池本が幕府の隠密であることを知る。師の助けをしたいと願うが、徳川幕府は風前の灯、国内の騒乱は激化の一途を辿る。ある日、虎之助のもとに、薩摩藩の剣士が訪ねてくる。
虎之助は、結婚し、親友と呼べる人もいて、幸せに過ごすのだが、身近な人の非業の死と向き合っていく。この時代は、簡単に連絡を取るのが難しく、師の池本は仕事であっちこっちに行っているので、信頼できる宿などに伝言や手紙を託します。そういう場所は親戚のように親身になってくれて、頼みも聞いてくれるし、逗留する事もできます。お金も払っているのだろうけど、お客さん以上の付き合いを感じます。虎之助の江戸の家の隣りにはお寺があって、危険が迫れば匿ってもらったり、長く家を離れたら、家の管理もしてくれます。虎之助の友人となる伊庭八郎という男は、身体は弱そうだけど、剣の腕は立ち、何かと助けてくれます。京にも来たり、江戸へ戻った時はまた親交を温めます。人間関係が面白いです。