Spice -映画・本・美術の日記-

「殺人鬼フジコの衝動」　真梨幸子・著　徳間文庫
親に疎まれていた少女フジコは、11歳の時に家族が殺される事件で生き残り、叔母に引き取られて新しい人生を歩みだす。後に殺人犯となったフジコの成長の過程が語られていく。グループにうまく溶け込んで、イジメの標的にされないよう努力しながらの少女時代や、思春期に彼氏ができるものの…。
正直、あまり楽しいことがある人生ではないです。醜悪なことが次々とあって、どんどん悪い方に転がっていってしまう。こういう人生だったのかと思ったところで、あとがきを読んで「あれれ」となってしまいます。今まで見えていたものとは、違ったものが見えてくるのです。帯にも書いてあるのですが、「あとがきまでが物語です。」となっています。巧妙に仕掛けられた小説だとは、思うのですが、読んでいる過程があまり楽しくありません。ことにフジコの子どものこととか。それでも、帯に書いてあるように「読まないと後悔！」たしかに、このどんでん返しを知って、読んでおいて良かったと思えました。乾くるみの「イニシエーション・ラブ」という小説を思い出しました。