糸車2020/06/04


糸車

「糸車」 宇江佐 真理・著 集英社文庫
江戸・深川の宇右衛門店で独り暮らしをするお絹36歳。3年前までは蝦夷松前藩の家老の妻だった。夫は藩内の不穏分子の手にかかり、息子の勇馬は行方不明となっている。小間物の行商で身を立てながら、息子を捜している。定廻り同心の持田、船宿の内儀おひろ、茶酌女お君など町の人々と親交を深める。それぞれの悩みに共感し、奔走するうちに、行方不明の息子と夫の死にまつわる噂を耳にする…。
お絹と周囲の人との関りが中心ですが、恋模様もあって、せつない大人のお話でした。自分の悩みもあるのに、江戸へ出て仲良くなった人たちの、問題に心を砕いていきます。行商は贔屓にしてくれる顧客も出てくるし、全ては主人公の人柄からくるものだと思います。若く純粋な娘ではなく、いろいろと苦難を知っている大人ならではの、複雑な心情が描かれていて、面白かったです。