消えた声が、その名を呼ぶ2015/12/04

消えた声が、その名を呼ぶ
「消えた声が、その名を呼ぶ」 ブロードメディア・スタジオ試写室(試写会)
1915年、オスマントルコ。鍛冶職人ナザレット(タハール・ラヒム)は、アルメニア人であるがゆえ、妻と双子の娘から引き離され、砂漠での強制労働を強いられる。仲間が次々と命を落とす中、喉にナイフを刺されたが奇跡的に生き残ったナザレット。声を失いながらも、生き別れた家族を捜す壮大な旅に出る…。
まさに娘を訪ねて三千里という言葉が浮かぶ映画でした。灼熱の砂漠を歩き、死にそうな目に何度もあいながら、海を越え、キューバ、アメリカと長い旅路です。目的のためなら、手段を選ばず、決して善良で正直ではないけれど、強い意志を感じました。ナザレットを演じるタハール・ラヒムはかっこよくて、汚い格好をしていても、ファッショナブルに見えました。「ある過去の行方」に出演していましたね。
監督はトルコ系ドイツ人のファティ・アキン。コメディ色の強い「ソウル・キッチン」が大好きなんですが、本来は社会派の映画を撮る監督なんですね。そういえば「ソウル・キッチン」の主人公のお兄ちゃんを演じていた人が出ていたなぁ。
ナチスのユダヤ人迫害のような、アルメニア人の虐殺。こういうことが起きていたとは聞いたことがあったけど、どんな状況だったのかと目の当たりに見ると、眉間にシワが寄りっぱなしです。今でも民族や宗教や難民の問題は治まることはないようです。平和で幸福な毎日がどうして脅かされてしまうのでしょう。ビターな内容ですが、感動しました。
共同脚本は「レイジング・ブル」や「ニューヨーク・ニューヨーク」のマルディク・マーティンが30年ぶりに復活だそうです。

★★★★☆ 4