ボーはおそれている2024/02/21



「ボーはおそれている」 TOHOシネマズ日比谷
神経質なボー(ホアキン・フェニックス)は、先ほどまで電話で話していた母が怪死したことを知る。なんとか母のもとへ向かおう、
とするのだが、次々と困難がふりかかる。現実か妄想か、悪夢の中を彷徨よっているような中で、ボーは無事に辿り着くのか。
病気なのか、不条理な世界。歪な親子関係で、何が起こっているのか、信じがたいです。想像を超えていく内容でした。でもボーの気持ちになって、辛かったです。ファンタジックな映像もあり、カラフルでした。

★★★★☆ 4-

カラーパープル2024/02/19



「カラーパープル」 TOHOシネマズ日本橋
1909年、14歳のセリー(ファンテイジア・バリーノ)は、出産するも、すぐに子どもはよそへ預けられる。その後、父はセリーをミスター(コールマン・ドミンゴ)と呼ばれる子持ちの中年男に嫁がせるが、奴隷のような生活が始まる。生き別れとなった仲良しの妹ネティ(リトルマーメイドのハリー・ベイリー)との再会を心の支えに耐え忍ぶ。ある日、ミスターと昔親しくしていて、有名歌手となったシャグ(タラジ・P・ヘンソン)が、やって来て交流を重ねる。男に屈しないソフィア(ダニエル・ブルックス)にも影響されて、セリーは人生を変えていこうとする……。
もとはスピルバーグ映画、ウーピー・ゴールドバーグを初めて観た映画です。それをミュージカル化しているのですが、歌もダンスも圧巻の素晴らしさです。特にジャグのステージが良かったです。ミスターの息子がお店を始めて、そこでジャグが歌うのです。
基本はスピルバーグ作品と原作の通りなのでしょうが、ミュージカルとした事で、エンタメ性が、上がっていると思います。スピルバーグのは、前に観たけど、もうあんまり覚えてないのですけどね。
ウーピー・ゴールドバーグもカメオ出演していました。人種差別や女性である事が、生きづらい時代、虐げらる者の不屈の精神、早く報われて欲しいと願いながら観ました。良い話でした。

★★★★☆ 4+

ゴールデンカムイ2024/02/11



「ゴールデンカムイ」 TOHOシネマズ上野
日露戦争の戦いぶりから「不死身の杉元」と呼ばれた杉元左一(山﨑賢人)は、戦後北海道で、アイヌ民族から強奪された金塊の存在を知り、ある目的のために、その金塊を追うことに。野生のヒグマに襲われた時にアイヌの少女アシリパ(山田杏奈)に救われる。金塊強奪で、父を殺されたアシリパは、仇討ちのため、杉元と行動をともにするようになる。軍隊や新選組の者たちが、それぞれの思惑を持って金塊を追う……。
日露戦争の悲惨な状況を、教科書では習ったけど、日本がロシアと戦争した歴史を思い出す。全体的にアクションたっぷりだけど、残虐なところもありました。笑いも入れているけど、そんなに笑えません。原作漫画は読んでいませんが、話としてはまだ障りの部分だと感じました。今度も制作していくのでしょう。「キングダム」もあるし、今度「陰陽師0」も公開するし、山﨑賢人さん、忙しいですね。「ゴールデンカムイ」の見どころは華麗なアクションもあるけど、アイヌ文化や、野生動物の料理なども、興味深いです。
面白かったけど「キングダム」の方が好きかな。今後の展開に期待します。

★★★☆☆ 3+

コット、はじまりの夏2024/02/06



「コット、はじまりの夏」 ヒューマントラストシネマ有楽町
1981年、アイルランドの田舎町。大家族の中で暮らす引っ込み思案なコット(キャサリン・クリンチ)は、夏休みに親戚夫婦にあずけられる事になった。優しく歓迎してくれるアイリン(キャリー・クロウリー)と、口下手な夫のショーン(アンドリュー・ベネット)。家事を手伝ったり、ショーンと一緒に子牛の世話をしたりする。2人の温かな愛情を受けて、コットは変わっていく……。
コット役の子、キレイ。無口な少女なんだけど、瞬きやまなざしで、心情を表していてすごい。全体的に静かでゆっくりした展開なんだけど、とっても良かったです。性格は全然違うけど「赤毛のアン」みたいな感じがした。家族みたいになっていくから。よくわからないのは、本当の家族が冷たい事。特に父親はクズ男だった。そして嫌なご近所さんも登場する。ショーンに言われて郵便受けに手紙を取りに行くコットですが、家から郵便受けの距離が驚くほど離れていたなぁ。

★★★★☆ 4+


ヒューマントラストシネマ有楽町では、コラボメニューで、じゃがいものスープが売っていたので、映画を観ながらいただきました。

哀れなるものたち2024/02/05



「哀れなるものたち」 TOHOシネマズ六本木
天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)によって、胎児の脳を移植された女性ベラ(エマ・ストーン)。体は大人でも赤ん坊の行動をする。それでも成長著しいベラは放蕩者のダンカン(マーク・ラファロ)に誘われて、駆け落ち同然で、旅に出る。
さすがはヨルゴス・ランティモス監督、ヘンテコこの上ない、不思議な世界でした。カラーとモノクロが自然に混ざり合っていて、幻想的な美しい映像でした。女性の生き方を問いかけます。解剖シーンなどがリアルで、苦手な人もいるかもしれません。R18+指定で、主役のエマ・ストーンは、惜しげもなく魅せてくれます。制作にも参加していてるそうです。
フランケンシュタインみたいなところもありました。「私が、生きる肌」と言う映画もちょっと思い出しました。いつもパフスリーブのファッションで、似合っていました。誰にとっても見た事がない世界です。テレビ放送はできないような内容なので、気になる人は見に行きましょう。

★★★★☆ 4+

燈火は消えず2024/01/23



「燈火(ネオン)は消えず」 シネマート新宿
腕ききのネオン職人だった夫ビル(サイモン・ヤム)が亡くなった。香港の夜景の象徴だったガラス製のネオンを愛した夫。妻メイヒョン(シルヴィア・チャン)は、彼がやり残した最後のネオンを完成させようとする。夫の工房へ行ってみると、そこには見知らぬ青年がいた。一人娘は、香港を離れ海外へ移住すると言う……。
仲が良かった夫婦、夫がいなくなった事から、立ち直れない妻。夫がしたかった事は何か、夫の弟子だと言う、知らない青年と共に、ネオンを作る事となる。
香港は、たくさんのネオン看板があった記憶の人が多いだろうが、2010年の建築法改正で、今ではほとんどがなくなっていると言う事に驚きました。では100万ドルの夜景は、今は寂しいものになっている事だろう。導入部分は、ゲームセンターで夫との思い出にふけり、亡くなった事がわかり、打ちひしがれている事が伝わってきました。そこは良かったけど、どうしたいのか、何をしたいのか、ちょっとわかりくかったし、テンポが遅かったです。香港は好きでしたが、中国返還後は行ってないです。内容と相まってしんみりとしました。ネオン看板はとてもきれいでした。娘が子どもの時に父からもらった瓶に入ったネオン、きれいです。妻が完成させたネオン看板も良かったです。過去と現在が交差し、夫との思い出が蘇ってきます。

★★★★☆ 4

サン・セバスチャンへ、ようこそ2024/01/20



「サン・セバスチャンへ、ようこそ」 TOHOシネマズ日比谷
ニューヨークで映画学を教えていて、売れない作家のモート(ウォーレス・リフキン)は、有名なフランス人映画監督フィリップ(ルイ・ガレル)の広報を担当している妻のスー(ジーナ・ガーション)に同行して、スペインのサン・セバスチャン映画祭にやってくる。モートは妻と監督との浮気を疑っている。体調に不安があって現地のクリニックを受診すると、美しい女医さん(エレナ・アヤナ)に夢中になってしまう。健康に問題なくても、なんとかまた診察してもらおうと頼み込む……。
サン・セバスチャンは太陽が輝き、海辺の近くで、素敵な所のようです。軽快な音楽で、不倫や夫婦のすれ違いなどあるけど、全然暗くなりません。妻の浮気を心配していたのに、自分も他の女性にときめいています。相手にされていないと思っていたら、親しげ日本出かけたりします。
ヨーロッパの昔の映画の事がたくさん出てきました。特に夢の中ではヌーベルヴァーグ作品を真似ています。映画祭のこともよく知っている監督ならではの作品でした。

★★★★☆ 4

鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎2024/01/16



「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎TOHOシネマズ上野
昭和31年、妻の行方を探している男・ゲゲ郎が哭倉村にやって来る。その村は、日本の財政界を牛耳っている龍賀一族が支配していた。血液銀行に勤める水木は、一族の当主の弔いを建前に密命を背負って村を訪れ、ゲゲ郎と出会う。当主の後継をめぐって醜い争いがおこる中、神社で一族の者が惨殺される。それは恐ろしい怪奇野始まりだった。
「ゲゲゲの鬼太郎」の前日譚。鬼太郎の父は目玉おやじだけど、まだ鬼太郎が生まれる前です。会社で出世しようという野望がある水木ですが、龍賀一族の忌まわしさを知り、ゲゲ郎と共に協力していきます。
まだ目玉の姿ではない鬼太郎の父、不思議な人ですが、強いしかっこいいです。内容は犬神家の一族のような雰囲気だけど、友情の話でもありました。鬼太郎がどのように生まれ、お父さんがどんな人だったかが、わかる映画でした。面白かったです。

★★★★☆ 4

バベットの晩餐会2024/01/08



「バベットの晩餐会」 TOHOシネマズ錦糸町
19世紀後半のデンマーク。小さな漁村で、牧師であった父の意志を継いでつつましく暮らす老姉妹(ビルギッテ・ファダースピール、ボディル・キュア)。2人のもとで、フランス女性バベット(ステファーヌ・オードラン)が、働くようになった。牧師の生誕祭でバベットは、姉妹と信者に、フランス料理を作らせてほしいと言う。
1989年の映画です。午前十時の映画祭で観ました。前から観たかったのです。
前半には、姉妹の若い頃の話があり、バベットがやってくる事情へと繋がっている。更に14年位が過ぎて、村人たちには、小さな諍いが起こるようになる。そしてバベットが用意する料理がクライマックス。手の込んだ素晴らしい料理が振る舞われます。村人たちは何を食べさせられるのか疑心暗鬼ですが、一緒に食事をする事になった将軍だけが、その価値がわかっているのです。姉妹は若い頃、美しく将軍や他の男性から言い寄られています。2人とも結婚しないまま、品の良いお婆さんになっています。バベットも素晴らしいし、名もなき村人たちも素朴で良かったです。バベットの心意気と優しい老姉妹の関わりが、寂れた田舎の村を舞台に語られます。好きなタイプの映画でした。

★★★★☆ 4+

VORTEX ヴォルテックス2024/01/04



「VORTEX ヴォルテックス」 ヒューマントラストシネマ有楽町
心臓に疾患を抱える映画評論家の夫(ダリオ・アルジェント)と認知症の症状が進みつつある元精神科医の妻(フランソワーズ・ルブラン)。離れて暮らす息子(フランソワーズ・ルッツ)は、あまりあてにならない。日ごとに悪化していく妻に悩まされる夫。日常生活に支障をきたすようになってくる。やがて、夫婦に人生最期の時が近づいてくる。
フランスの鬼才ギャスパー・ノエ監督の新作。キレキレな映画が多い監督の作品としては意外です。夫役がまた俳優ではなく、映画監督として名高いイタリアのダリル・アルジェント。「サスペリア」「フェノミナ」の監督です。画面を真ん中で2つに分割して、夫側と妻側が同時進行で語られます。どっちも困ったお年寄りで、鈍い動きで生活が進みます。奥さんは勝手に家を出て行ってしまい、夫が探しにでます。普通は子どもが施設に入れるなりなんとかするのでしょうが、なかなか話が噛み合いません。息子も問題を抱えているし、夫も妻を愛する誠実な男ではないようです。2分割の画面も、ちょっと見にくいのです。楽しさはなく、辛い映画でした。でも否応なく老いや死について考えさせられます。他の映画ですと「ファーザー」や「愛、アムール」を思い出しました。
冒頭の広めのベランダで、ワインを飲んでいるところは良かったです。ギャスパー・ノエ監督の作品が観たいと思っていたので、私は満足しましたが、若い人が観たらあまりピンとこないかなと思います。

★★★☆☆ 3+