銀河鉄道の父2020/06/29


銀河鉄道の父

「銀河鉄道の父」 門井 慶喜・著 講談社文庫
明治29年(1896年)、岩手県花巻に生まれた宮沢賢治は、昭和8年(1933年)に亡くなるまで、主に東京と花巻を行き来しながら多数の詩や童話を創作した。
賢治の生家は祖父の代から富裕な質屋であり、長男である彼は本来なら家を継ぐ立場だが、賢治は学問の道を進み、後には教師や技師として地元に貢献しながら、創作に情熱を注ぎ続けた。
地元の名士であり、熱心な浄土真宗信者でもあった賢治の父・政次郎は、いかに息子を育て上げたのか。
父の信念とは異なる信仰への目覚めや最愛の妹トシとの死別など、決して長くはないが紆余曲折に満ちた宮沢賢治の生涯を、父・政次郎の視点から描く。
「銀河鉄道の夜」や「雨ニモマケズ」など、誰もが知る詩や童話を描いた宮沢賢治ですが、どのような生涯だったのかがわかる本でした。
「永訣の詩」で妹との別れを描いていますけど、勝手にもっと小さな女の子だと思っていました。24歳で亡くなってしまう愛する妹、この2人の間には特別な絆があって、理解しあっていたのだと感じます。童話を書くようにすすめるのも妹のトシでした。
父親は思い通りにならない息子だけど、愛情があふれているのがわかります。賢治の側からも期待に応えられない葛藤があったでしょう。
生きているうちは、それほど世間に知られた人でもなかったようで、ちょっとゴッホを思い出しました。とても興味深い内容でした。
直木賞受賞作です。