江戸の茶碗 まっくら長屋騒動記2015/12/05

江戸の茶碗 まっくら長屋騒動記
「江戸の茶碗 まっくら長屋騒動記」 中島 要・著 祥伝社文庫
貧乏長屋に住むお初と兄の太吉。両親は、騙されて浅草の小間物屋を失い、失意のうちに亡くなった。店を買い戻そうと真面目に働く兄妹だった。しかし兄の太吉が価値ある名品と聞いて“井戸の茶碗”を買い、転売して利益を得ようするのだが、実は贋物だったことがわかる。困り果てているところに、長屋に住む謎の浪人の赤目勘兵衛が、高値で売ってやると言ってくる…。
連作短編で、1作目を読むと主人公と思っていたお初は、そうではなく、この長屋に住む様々な人の困りごとを、解決してくれる浪人の方が、作品を通じて中心になっていることがわかります。仕事もせずにお酒ばかり飲んでいる男で、周囲からは恐れられているのだけど、世話になった人々が増えていくと、慕われていくようになります。
長屋の人みんなが助かるような、素敵な話でした。時代物を読んだことない人でも、この本を読んだら好きになるのではないかな。
笑いあり、推理あり、人情噺のように、心に染み入る話もありました。どれも短い話ですが、まとまりとつながりがあって、良かったです。