永遠の02013/09/26

永遠の0
「永遠の0(ゼロ)」 百田 尚樹・著 講談社文庫
ライターの姉に頼まれて、特攻で戦死した祖父について調べ始める健太郎。想像と違う人物像に戸惑いながらも、祖父を知る人を訪ね歩くと、宮部久蔵という人物の人間性が浮かびあがってくる。生きること、妻子のもとへ帰ることを願い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗って命を落としたのか…。
涙なくては読めない本でした。電車の中で読んでいるのに、何度も泣けてしまいました。
飛行士としては天才だけど臆病者と言われた祖父ですが、同じ部隊にいた人たちから、いろいろな角度から話を聞くにつれて、素晴らしい人だったことがわかります。話を聞いた人々にも、戦後を通じてそれぞれのドラマがあるのです。初めに驚いたのが零戦の優秀さです。融通が利いて高性能、耐空時間が長い、世界屈指の飛行機だったことがわかります。それにどうして零戦というのかも初めて知りました。零戦が正式採用されたのが皇紀2600年(昭和15年にあたります)、その末尾のゼロからきています。九九式や九七式艦上爆撃機というのも、その前にあったのです。皇紀というは、神武天皇即位の年を元年とするものです。今は一般的では使わなくなった紀元です。
「風立ちぬ」では設計者の堀越二郎を主人公にしていたけど、零戦がそれほどすごいものだとは思っていませんでした。
特攻を拒否することが叶わずに、亡くなった大勢の若者たち、回天(人間魚雷)など、どうして考えついてしまったのでしょう。もっと早く降伏したら、たくさんの命が救えたのにと思ってしまいます。
文章は読みやすく、内容もわかりやすい、戦争を知らない世代の人に、その頃のことを考えさせます。それに意外な結末も待っています。
この本がデビュー作なんですね。「風の中のマリア」も良かったけど、「永遠の0」はおすすめしたいです。岡田淮一主演で映画も公開されます。