風の中のマリア2013/08/13

風の中のマリア
「風の中のマリア」 百田 尚樹・著 講談社文庫
オオスズメバチのマリアはワーカーとして、幼虫たちの食糧を集めてくるのが役目。他の虫たちと戦って捕まえてくるハンターだ。若いのに狩りが上手く“疾風のマリア”と呼ばれている。恋もせず子も産まないワーカーとしての約30日の一生を、帝国のために捧げていく…。
スズメバチが擬人化されて、崇高な精神を持って生きていることがわかります。皆に名前があって、世代交代していく様子がわかる驚くべき物語でした。女王蜂を中心に大きな帝国が形成されていて、ハチとアリって、改めて似ているところがあるなぁ。ハチも種類によってずいぶんと違っているみたいです。長い間、滅亡せずに生き残っているしくみがわかります。命がわずか30日というのは、初めて知りました。上下関係や友情があるのに、時には残虐な行為もして、それこそが種の保存のための本能なんだろうと思います。この本を通して、人間だって平和だけが続かないのは本能として、埋め込まれているゆえかもしれないと考えさせられます。
昆虫が本のように会話したり、考えを持っているとは思えないけど、近い感覚はあるのかもしれないと思います。大きな巣を人間が根こそぎ駆除してしまうのは、ハチの方からしたら、残虐な行為で、人間の勝手です。ハチは怖いから、駆除してほしいものの、ハチを見る目が変わってしまうような1冊でした。
百田尚樹の本を初めて読みました。面白いです。