はじまりのみち2013/06/14

はじまりのみち
「はじまりのみち」を観てきました。
「二十四の瞳」など日本を代表する映画監督・木下惠介の若き日の話。将来を期待された映画監督だったが、戦争時に戦意高揚を求められて制作した映画「陸軍」のラストが女々しいと言われ、次回作の企画が流れてしまった木下監督(加瀬亮)は、自分の好きなものを撮れないないのなら監督を辞めることを決意する。
脳溢血で倒れた母(田中裕子)をできるだけ静かに疎開先に連れて行くために、木下と兄(ユウスケ・サンタマリア)、便利屋(濵田岳)の3人で、リヤカーで山越えに挑む。途中は暑さや雨に見舞われ、困難の連続で厳しい坂道を延々と登っていかなければならなかった…。
母をリヤカーで疎開先へ連れていくというシンプルな話ですが、96分という短い映画なのに短く感じませんでした。
田中裕子とユウスケ・サンタマリアが出演することは知っていたけど、濵田岳がそんなに重要な役で出ているとは知りませんでした。便利屋の濵田岳は気の良いところもあるのだけど、お調子者で不躾なことろがあって、繊細な木下監督とはソリが合わないのです。でもこの映画での重要な役を演じていて、監督の人生にも影響を与えている人となります。田中裕子が凛としていて美しく、慈愛に満ちています。もちろん加瀬亮もすごく良かったです。宮崎あおいもちょっとだけ出ていて、二十四の瞳を彷彿させるシーンが見れます。ナレーションもやっています。
映画「陸軍」は戦争よりも母子の情愛を描きたかったです。映画の中で木下作品が実際に長く流れます。最後にはたくさんの作品がダイジェストで綴られて、この映画の原恵一監督が木下監督に捧げるオマージュになっています。どんだけ好きなの?という感じもしました。木下監督を皆に広く知ってもらいたいという気持ちがヒシヒシと伝わってきて、興味を持つ人も多いと思うし、原監督の願いは成功していると思います。

★★★☆☆ 3