切れない糸2013/04/02

切れない糸
「切れない糸」 坂木 司・著 創元推理文庫
東京の商店街育ちの新井和也は、大学卒業を間近にして、家業のクリーニング店を手伝うことになる。後を継ぐかどうかも定まらないまま、不慣れな集荷作業に苦労する日々。預かった衣類から謎が生まれ、喫茶ロッキーで働く友人の沢田や、アイロン職人のシゲさんの助言をもとに、問題を解決していく。
誰もが顔見知りだったり、おせっかいだったり、若い頃は商店街がうっとうしいと感じることもありますが、この本を読んでいると、地元密着の人間関係に惹かれます。
「和菓子のアン」が良かったので、解説に紹介されていたこの本を手に取ってみました。アライクリーニングはアンちゃんのお母さんがパートで働いています。「和菓子のアン」もそうなんですが、この本も推理小説です。刑事事件を解決するのではなく、商店街の中で起こる、小さな謎をひも解いていきます。卓越した推理力を発揮するのは、主人公ではなく、友人の沢田君なんだけど、大事件もないのに、こんな風に面白い小説になるのが、この作者の特徴なんでしょうね。短編連作形式だけど、全体を通した流れもあります。主人公がクリーニング店の仕事の奥深さを知っていって、成長していく物語です。

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