花競べ 向嶋なずな屋繁盛記2012/10/19

花競べ
「花競べ(はなくらべ) 向嶋なずな屋繁盛記」 朝井 まかて・著 講談社文庫
向嶋にある小さな苗物屋・なずな屋。主人は木や草花を栽培し、品種改良なども行う花師の新次。イケメンだが無愛想なので、お客さんの対応は、もっぱら妻の役目。おりんは元は手習いの師匠をしていた頭のいい女性。この若夫婦を中心に周囲の人たちとのふれあいや、助け合いがあります。
「すかたん」が良かったので、この作者に興味を持ちましたが、こちらがデビュー作です。「すかたん」とは雰囲気が違うのですが、この本も私の好みです。
なんといってもキャラクターが魅力的です。新次を気に入って目をかけてくれる粋なご隠居の六兵衛、その孫の若旦那。近所に住む留吉、お袖夫婦。なずな屋にあずけられている子供のしゅん吉こと雀。新次と共に修行をした美貌のお嬢さん理世。他にも素敵な人がいっぱい出てきます。
植物のことも面白くて、小説なのに色を感じます。
1つの話が終わると、読み手が想像しているよりは、時の経過が早いので、あれっと思うこともあるけど、短い話の中にそれぞれにドラマがあります。
離縁のことを、三行半(みくだりはん)って言うのは、こういうことなのかとわかりました。知ってましたか?
当時は、妻の再婚許可を3行半にまとめて書いていたみたいです。